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「美学」さえあれば、人は強くなれる

2015.09.18 公開 ツイート

刊行記念特別インタビュー 前篇

漢(おとこ)の憧れとは―― ケンドーコバヤシ

漫画好きで知られるケンドーコバヤシさん。これまで読んで来た漫画から学んだ“美学”を紹介する著書『「美学」さえあれば、人は強くなれる』を、9月24日に発売することになりました。同著では『ドラえもん』『キン肉マン』『スラムダンク』『ジョジョの奇妙な冒険』などの漫画のコマと一緒に、それぞれのストーリーや登場人物からケンドーコバヤシさん自身がインスピレーションを受けた言葉や行動をピックアップ。愛と尊敬に溢れ、勇気を得られる1冊となっています。 構想7年にしてようやく完成した著書についてほか、幼少期から触れてきた大好きな漫画への意中を語ってもらいました。そのインタビューを前編、後編でお届けします。
(構成:高本亜紀)

 

売れない時期に漫画から得たものは多かった

——構想から完成までに7年の歳月がかかったそうで。完成した本を手に取ってみての感想を、まず訊かせてくださいますか。

コバ “隠し子がいたのが発覚した”みたいな感覚ですよね。7年経ってようやく出会った訳ですけど、重要なのはデレデレするのか突き放すのかというところで。まぁ、僕としては今後も見守っていこうとは思っていますよ。できる限りの援助をしてね(笑)

——では、援助という名のインタビューにも答えていただきたいなと思うのですが(笑)。小さい頃から漫画はお好きだったそうで。

コバ 最初にハマったのは『ドラえもん』。幼稚園の年長組くらいに読み始めたような気がします。最初に集めた単行本も『ドラえもん』で、親にお年玉を取り上げられる前に買えるだけ買った記憶がありますね。母親が“お年玉、預かってあげる”としたり顔で言うてきた時に、“もうこれに変わったよ”とドーーンと(単行本を)差し出すっていう(笑)。こういう処世術も漫画から学んだというか。『北斗の拳』のケンシロウやったら今どう行動するんだろう?とか考えたりだとか、社会で負けない方法を漫画にたくさん教えてもらいましたね。

——いちばん読んでいた時期は?

コバ 食えなかった芸人時代がいちばん読んでいたかもしれないですね。漫画を読んで時間を潰すしかなかったみたいなところがあったというか。

——食えなかったということは、本を買うお金もなかったんじゃないんですか?

コバ これもさっきのお年玉の使い道と同じで、(お金があったら)まず漫画を買ってたんですよ。先に物へ変えてしまうっていうね。あと……今は許されないことでしたけど、当時は立ち読みも割とフリーでしたから、本屋とか漫画雑誌を立ち読みして。そこから、気に入った漫画があれば単行本を買ってました。当時は『ジョジョ(の奇妙な冒険)』が好きだったんですけど、集めている本を最後まで読んだら、また1巻から読んで。今は100巻を超えてますけど、あの頃もかなりの巻数が出てましたから、『ジョジョ〜』を読み返すのはかなりの荒行。“俺、なんでこんなことしてるんや”と思いながらも、2周目に入ったからこそ気付くことも多いんですよね。例えば……これは嫌な見方かもしれないですけど、突然かわいい子が出て来たら“編集者からテコ入れがあったんかな”と思ったり(笑)

——(笑)その頃に読み込んだ漫画から、さらにいろんなものを得られたと。

コバ そうですね。きれいごとのように聞こえるかもしれないですけど、数ある職業の中で“売れない芸人”ってかなり大変やと思うんです。フランスの傭兵の次くらい大変だと思うので、自分の息子にはやれとは言いませんし、人がやりたいと思ったら止めます。それくらい苦しいものでしたけど、あの時期に漫画から得たものは多かったなと思います。

 

器用だからこそ、不器用なヒーローに憧れる

——ケンドーコバヤシさんの惹かれる主人公って、どちらかと言えば“強いけれど不器用”な人たちですよね。

コバ あっ、そうですね。僕自身が器用だからこそ憧れがあるというか。自分の器用なところがあんまり好きじゃないんですよ。例えば、サッカーとか野球とか、まぁ工作もそうなんですけど、小学校に上がってから初めて触れるものって多いじゃないですか。そこで最初にパッとできてしまうのが、俺なんです。ただねぇ、大きな慢心があるせいで、気が付いたら俺なんかより遥かに上手くなってる奴がいる(笑)。“俺もこいつと同じくらい練習してたら、もっと上手くなってたやろうな”と思うことが多々あったんです。ほんまに恐ろしいほどの慢心持ちなんですよ。


——(笑)お笑いはどうだったんですか。NSC(吉本総合芸能学院)に入った頃からできていた?

コバ どうやったらオモロくなるかっていうシステムは、本能的に理解していましたね。けど、みんなはわかってない。授業みたいなんで考えてきたネタをやったときに(クラスメイトがネタをやっているのを観て)“あぁ、こんなもんか。こいつらはわかってないんやな。じゃあ、(笑いのシステムわかってる)俺はこのままでいいや”と思ってしまった。これぞ超慢心です!(笑)こんな感じやから俺、あがいたことが一度もないんです。っていうと、嫌な奴に聞こえますよね。俺、嫌な奴やと思われる要素は持ってるんです。

——でも、嫌な奴感は一切ないですよね。

コバ それは、慢心して追い抜かれまくってるからです!(笑)……こんな本を出しといて言うことじゃないんですけど、売れてない時期も腐ってなかったというよりは慢心していただけです。

——たとえ慢心があったとしても、他人を出し抜こうとかずるくないところがあるからこそ、嫌な奴感がないんでしょうね。

コバ 他人にあんまり目がいってないっていう……。そこですよね、僕が未だに独身なのは。言われてみれば、確かにあんまり他人には関心がないのかもしれないです(笑)。ポジティブなところで言えば、常に“死ぬことはないから大丈夫やろう”という考え方なんです。僕のように幼少期、クロアチアみたいな内戦地域で育っていたら、死は身近に感じるもので。やからこそ、そういう考え方に行き着いたんですけど。
——クロアチアで育ったのは、嘘……ですよね?(笑)

コバ ふははは! 嘘です!

 

9月24日(木)にはサイン&握手会を開催予定。マンガ好きな君も、ヒーローになりたい君も、福家書店新宿サブナード店でケンコバさんと握手!!
この企画の次回公開は9月25日予定、インタビュー後編です!

 

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「美学」さえあれば、人は強くなれる

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ケンドーコバヤシ

1972年生まれ、大阪府大阪市東住吉区育ち。1992年、第十一期生として吉本総合芸能学院(NSC)大阪校に入校。現在はピン芸人として、よしもとクリエイティブ・エージェンシー東京本社に所属。テレビ・ラジオ・映画・舞台・新聞連載など幅広い分野で活躍中。

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