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『わたしの神様』『歪んだ蝸牛』が描く女の欲望・男の本音

2015.08.13 公開 ツイート

第2回 

「見て見られる」関係から誰も自由になれない 小島慶子/田中経一

 

「何々らしさ」をちゃんと背負っている人は輝いて見える(小島)

田中 小島さんがいたTBSとほかの局とでは女子アナに違いがありますか。

小島 いや、私、局のカラーってよくわかんないです。私自身、アナウンサーをやっていたときも、TBSらしくあろうという気持ちなんか1秒も持ったことがなかったので。

田中 1秒も!?

小島 不良会社員でした。

田中 ほかの方は持っているのかな。

小島 そうですね。TBSのブランドを背負っているんだから、という思いで生真面目にやるというのが、あるべき女子アナの仕事の仕方ですけど、私はそもそも、人生のどの時点においても、所属集団を背負ってやろうみたいな気の利いたことができなかったんですね。そういう生活習慣でしたから。

田中 そんなことないですよ。大丈夫ですよ。いやいやいや、本当に立派な女性です。

小島 そうやって私を追いつめるのはやめてくださ~い。いまだにTBSらしさとは何だったのかわからないままですが、ただ、局アナというのはこんなに輝いて見えるんだということは、辞めてから感じたことですね。なんか、同じスタジオの中にいても、輝いて見えます。

田中 小島さん、今も輝いていますから。

小島 だから、やめてくださいってば。自分が局アナをやっていたときは、自分はあくまでも会社員だから出させてもらっているだけで、はい、どうせおミソですよ、みたいな屈折があったんです。

田中 しかも、出演料も要らないしってことですよね。

小島 そうなんです。ちゃんとその企業を背負って、制作者と信頼関係を結び、責任もって番組進行の役割を果たしている。そこにいるべき人としてちゃんと存在している。ものすごく眩しいんですよね。

田中 局の中にいる方にしてみれば、小島さんみたいにフリーになって、ちゃんと活躍されている人が憧れになっていると思いますよ。

小島 どうでしょう。違う立場にならないと、自分が恵まれていたことに気づけないなんて、自分は本当に物わかりの悪い人間だと思います。今、本当に局アナが眩しいから、女子アナが何か発言して、周りから一斉に突っ込まれるのを見ると、頑張れ!と思います。

田中 え~っ、そんな優しいことを思っているんですか。

小島 思いますよ。私、『わたしの神様』のアリサみたいな新人研修の仕事を入社3年目ぐらいからやっていたので後輩育成には熱心なんですよ。

田中 アリサは後輩のルイを自分の味方にしようと、いろいろ画策していたじゃないですか。

小島 それは小説の世界です。私はフェアでした(笑)。そこが、制作者目線を持っていてよかったと思うところです。売れっ子後輩アナはうらやましいけれど、その人のやっていることがテレビ的に必要とされていることだと冷静に判断する目があったのは、われながら偉かったなと思います。

田中 僕は『時事放談』(TBS)のスタジオにお邪魔したことあるんですよ。

小島 そうでしたか。あのときは呼吸する置き物であるというのが私の仕事でしたけどね。政治家の皆さんの滅多に聞けないお話を毎週聞けたので、楽しかったですよ。ただ、女子アナの仕事としては自由度ゼロで、言われたことだけ淡々とやる。最終的に私、爪しか映ってなかったですからね。ネイルさえしてれば裸でいいのではと思えるぐらいでした。

田中 いやいや。十分存在感ありましたって。

小島 あの番組は6年担当して後半3年ぐらいでようやく仕事とはこういうものなんだと割り切れるようになりました。給料が何の対価なのかを考えたら、これも仕事なんだと。そういうことが入社してすぐにわかる人と、私のようにわからないでジタバタする人がいるわけですね。

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『わたしの神様』『歪んだ蝸牛』が描く女の欲望・男の本音

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小島慶子

1972年オーストラリア生まれ。エッセイスト、タレント。学習院大学を卒業後、1995年TBSに入社。アナウンサーとしてテレビ・ラジオに出演。1999年第36回ギャラクシーDJパーソナリティ賞を受賞。2010年退社。テレビ・ラジオ出演、連載多数。著書に『女たちの武装解除』『解縛(げばく)〜しんどい親から自由になる』などがある。

田中経一

1962年東京都生まれ。立教大学法学部卒業後、テレビ業界へ。その後、フリーの演出家として独立。フジテレビ「カノッサの屈辱」「料理の鉄人」「ハンマープライス」「クイズ$ミリオネア」「有吉弘行のダレトク!?」やテレビ朝日「愛のエプロン」など数々のテレビ番組の演出を手がけ、多くの受賞歴を持つ。現在はテレビ番組制作会社㈱ホームラン製作所を経営し、テレビ番組や食に関するイベント等を演出している。2014年、『麒麟の舌を持つ男』で小説家デビュー。

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