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『わたしの神様』『歪んだ蝸牛』が描く女の欲望・男の本音

2015.08.06 公開 ポスト

第1回

「働かない」という選択肢がない男たち小島慶子/田中経一

「料理の鉄人」は空港でも家の中でも「鉄人」だった(田中)
 

田中 僕はモニターを見て仕事している側、小島さんはモニターの向こうでカメラに映って仕事をしている側ですが、自分がやったことをすぐそのまま再生して見られる仕事として共通してますよね。こういう仕事って、そうはありません。小島さんは「コスプレ」という書き方をされていましたが、僕なりに言うと、それって、「放送しました、自分でも録画して見ましたし、周りからの反響も聞きました、そのうえで即、反省して次はこうやって乗り越えていきます」という仕事のしかたになるんです。そういう意味で、テレビの仕事は特殊だという気はします。


小島 そうですね。

田中 面白かったのは、『料理の鉄人』(フジテレビ)という番組をやっていたとき、番組で鉄人になった道場六三郎さんとか坂井宏行さんとか陳建一さんとか、最初は当然、素人だったわけですが、番組に毎週毎週登場していくと、キャラクターが変わってくるんですよね。まさしく鉄人になっていくんです。そして、スタジオから出てもずっと鉄人でい続けるんです。空港でも鉄人だし、恐らく家の中に入るまで鉄人。棺桶に入っても鉄人なんだろう。そう思うと、テレビっていうのはやっぱりすごい。

小島 そうですね。それは、ある意味、親切心なんでしょうね。視聴者に対して、「あれはテレビ用の……」と説明するより、「鉄人です」と言ったほうがわかりやすい。

田中 あははは。そうそう。

小島 「女子アナって大変なんでしょう?」と聞かれたときに、そうでもないけど、とりあえず「大変ですぅ」って言ったら喜ぶみたいな。相手の見たい自分に相手を寄せていくことで説明を省くのは、宿命です。そうじゃないとわかりづらい。

田中 出るたびに、「このあいだは鉄人だったけど、今日は違う」では、「ブレてる」って言われますからね。

小島 そうなんです。変わらないものでいてほしい。本当は人なんて変わっちゃうし、自分だって変わっちゃう。でも、せめてテレビの中ぐらい、こうだと思った人はずっとこうでいてほしい。テレビは、「せめてここだけは安定していてくれ」という願望が集中する場所なんじゃないかと思うんです。
                       (構成:小峰敦子 写真:隼田大輔)

 

※第2回 『「見て見られる」関係から誰も自由になれない』は8月13日掲載予定です。

 

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小島慶子

1972年オーストラリア生まれ。エッセイスト、タレント。学習院大学を卒業後、1995年TBSに入社。アナウンサーとしてテレビ・ラジオに出演。1999年第36回ギャラクシーDJパーソナリティ賞を受賞。2010年退社。テレビ・ラジオ出演、連載多数。著書に『女たちの武装解除』『解縛(げばく)〜しんどい親から自由になる』などがある。

田中経一

1962年東京都生まれ。立教大学法学部卒業後、テレビ業界へ。その後、フリーの演出家として独立。フジテレビ「カノッサの屈辱」「料理の鉄人」「ハンマープライス」「クイズ$ミリオネア」「有吉弘行のダレトク!?」やテレビ朝日「愛のエプロン」など数々のテレビ番組の演出を手がけ、多くの受賞歴を持つ。現在はテレビ番組制作会社㈱ホームラン製作所を経営し、テレビ番組や食に関するイベント等を演出している。2014年、『麒麟の舌を持つ男』で小説家デビュー。

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