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子育てが変わる親の心得

2015.06.19 更新 ツイート

第1回

子育てから子育ちへ。人材育成のプロが教える親の心得菅原裕子

長年の人材育成の経験から多くの親子をサポートしてきた著者が、37のメッセージを通して子どもと関わるすべての人へ子育てに対する心の持ち方・向き合い方を伝える書籍『子育てが変わる親の心得37』。

本連載ではこの書籍の一部を全3回のダイジェストでお届けします。第1回は第1章「子育てとは」から、親に必要な子どもとの向き合い方について。


*  *  *
 

子どもは自然に育っていくものですから、あまりムキになって育てないほうがいいように思います。私たちにできることは、子どもが育つ環境を整えることです。

環境とは、まず一番に親自身です。親自身が日々を幸せに生きること。大切なことは、「私が子どもを育てる」という意識ではなく、親である自分自身を整えようとする姿勢です。

親という環境が豊かであれば、子どもはそのなかですくすくと育ちます。「子育ち」です。「私が育てる!」とあまり勢い込まずに、「私たち親という環境が、子どもが育つのをサポートしている」と考えてみましょう。

たとえばトマトを育てるとしましょう。目指すのは、美味しいトマトをたくさん収穫することです。私たちは、何かしらの養分を含んだ土を用意し、苗を植え、水を与えます。でも、私たちは本当にトマトを「育てている」のでしょうか? トマトは自ら育つプログラムを内蔵しています。ですから、私たちが間違った環境をつくらないかぎり、トマトは自然に育ちます。

ところが、環境が悪かったらどうでしょう。水を与えなかったらトマトは枯れてしまいます。与えすぎてもいけません。栄養を与えすぎるとトマトに負担をかけることになります。太陽の光が届くところで育てないと、そもそもトマトは育ちません。支柱は必要ですが、その立てる位置を間違えると、トマトそのものの根を傷めてしまいます。

つまりトマトを育てるということは、トマトが持つ成長のプログラムがうまく働くように、周りからサポートするということです。それを、変に「育ててやろう」と力を加えてしまうと、トマトの自然に伸びようとする力を妨げてしまいます。

細かく手出しをせずに、最適な環境をつくれたら、あとはトマトの成長を眺め実りを楽しむことができるのです。

子どもも同じです。「この子は私が育てた」と言いたいところですが、子どもは自分で育ちました。

「私が育てる」という意識が危ないのは、一歩間違えると子どもに過剰な負荷をかけてしまうことです。さらに、もし子どもに負荷をかけていても、親の望む成果を手に入れることができれば、「親としてやるべきことをやっている」と錯覚し、いい親として自分の価値を高めることができてしまうのです。

養成講座に通うある保育士が話してくれたことが印象的です。彼女は転職をして、新しい保育園で働き始めました。新しく担任したクラスには3歳の男の子がいます。彼には発達障害があり、まだ紙おむつをはいていました。ほかの保育士は、なんとか彼のトイレトレーニングを成功させたいと懸命です。でも、うまくいきません。きっと、家でもお母さんが頑張っていたに違いありません。

彼女は男の子に言います。「あわてなくていいよ。いつかは布パンツに変わるから。いつでもいい、布パンツがはきたくなったら先生に言ってね」。そして彼女は、男の子がトイレから出てきたときに、彼が自分の意思でいつでも自分のはきたいパンツを選べるようにしたのです。紙おむつと布パンツ。ある日、彼は布パンツを選びました。

そのときから、彼は一度もお漏らしをしていません。彼女は言います。「信じて、任せて、待てば、子どもはいつか布パンツを選びます。そしていったん選んだら、子どもは漏らさず自分でトイレに行けるのです」と。

子どもが自然に育つことを知っていれば、私たちはもっとゆったりと子どもと接することができます。周りの目や標準を気にして、「もっともっと」「早く早く」と焦る必要がなくなります。ほかの子の出来と比較して、子どもに辛い思いをさせる必要もありません。もし本当に信じて、任せて、待つことができれば、子どもはきっと今以上に、その才能を発揮するのではないでしょうか。

学業不振に悩む中学生、高校生が多いと聞きます。彼らは、自分とは異なるペースを求められ、「早く早く」「もっともっと」と求められているうちに、興味もやる気も奪われているのではないでしょうか。もし彼らに自分の意思とペースで学ぶ余裕が与えられれば、私たちは彼らのやる気をそぐことなく、学ぶ喜びを教えることができるのです。必要なことは、子どもを育てることではなく、子どもが育つ環境と教育について考えることなのです。

以前、「子どもを産まないと決めた」という若い女性と話したことがあります。「子どもを育てるという重い責任をとりたくない」と彼女は言いました。

「子どもを育てる」という言葉の響きには、とても大きな責任が含まれています。もちろん子どもを育てるのは一大事業です。でも、そのことを怖れることはありません。子どもは生まれてくるもの、そして育つものです。

 

子どもは自然に育っていく。
力んで芽をつぶしてしまわぬように、
信じて、任せて、待つ「子育ち」へ。

 

※子育てを変えるために整えるべき環境について、詳しく知りたい方は書籍『子育てが変わる親の心得37』をお求めください。

※“ステキなママのハッピーな毎日を応援する”ウェブサイト「It Mama」でも、書籍『子育てが変わる親の心得37』から、子どもの能力を伸ばすための、より具体的な方法についてご紹介いただいています!

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関連書籍

菅原裕子『子育てが変わる親の心得37』

「親は子どもの才能を引き出すコーチ」大ベストセラー『子どもの心のコーチング』の著者による、厳しくも温かい子育てメッセージ。 子育てで大切なことは、子どもが自然に育つようにその子に合った環境をつくること。そのためには、子どもを変える子育てではなく、環境である親自身が変わる子育てが必要です。本書では、長年の人材育成の経験から多くの親子をサポートしてきた著者が、37のメッセージを通して、子どもと関わるすべての人へ子育てに対する心の持ち方・向き合い方を伝えます。完璧な親などいません。だからこそ、親が学んで知恵をつけることで、子育ては変わるのです。親の自己肯定感を高めることが、子どもを幸せな自立へ導きます。

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子育てが変わる親の心得

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菅原裕子

NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事。有限会社ワイズコミュニケーション代表取締役。1977年より人材開発コンサルタントとして、企業の人材育成の仕事に携わる。従来の「教え込む」研修とは違ったインタラクティブな研修を実施して、社員と企業双方の成長に貢献。その後、企業の人育てと自分自身の子育てという2つの「能力開発」の現場体験をもとに、子どもが自分らしく生きることを援助したい大人のためのプログラム「ハートフルコミュニケーション」を開発。2006年、NPO法人ハートフルコミュニケーション設立。各地の学校やPTA、地方自治体で講演やワークショップ、セミナーを行い、多くの親や教育者から支持を得ている。
主な著書に『子どもの心のコーチング』『10代の子どもの心のコーチング』『お父さんだからできる子どもの心のコーチング』(以上、すべてPHP文庫)など多数。
NPO法人ハートフルコミュニケーション http://www.heartful-com.org/

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