相手の価値観を予想し、1位から3位までの順位を当てるボードゲーム『サンレンタン』。2024年の発売以来、シリーズ累計12万部を突破した人気作の第3弾『サンレンタンもしも』(幻冬舎刊)が登場する。
ゲームを生み出したのは、放送作家の白武ときおさんとライプさんをはじめとする4人組のクリエイターレーベル「白星」だ。ふだんはテレビやYouTubeで人を楽しませる企画を考えている2人が、ボードゲームの制作で目指したものとは? 誕生の経緯から、ヒットにつながった工夫までを聞いた。
構成・文:飯田ネオ 撮影:植一浩

放送作家の「脳みそ」を生かしたゲームを作りたい
―――『サンレンタン』は、どのように生まれたのでしょうか?
白武 2010年ぐらいに友達と『カタン』をやり始めたんです。しばらく遊んで、そのあとあまりやらなくなっていたんですけど、コロナ禍が明けた頃にまたボードゲームをやりたいなと思って。だったら自分でも作りたいな、と。
その頃にライプと一緒に仕事をしていて、彼はボードゲームを作ったことがあると聞いていたので声をかけたんです。ライプが一緒に作っていたチームと合流して、制作が始まりました。
ライプ 僕は大学のお笑いサークルの先輩2人と趣味でゲームを作ったことがあるぐらいだったんですけど、白武さんが声をかけてくれて。
白武 ゲームを作るなら、僕たちがお笑いを好きだったり、放送作家として仕事で考えていることを活かしたいなと。
例えば番組やライブのトークテーマを考えたりするときに、どうやったらしゃべりやすいか、その場が盛り上がるのか。どういうルールがあると山場が生まれるのか。そういう脳みそ、発想で考えたゲームができたらいいなと。
ライプ 確かに、みんなで企画を考え始めて案を出し始めた時は、戦略が問われるゲームより、笑いが生まれてコミュニケーションが活発になるものを作ろう、という方針でしたね。
―――制作はどのように進めていったんですか?
白武 それぞれが企画を持ち寄って、パワーポイントで1ゲーム1枚の資料を作って説明してってみんなで話してました。
ライプ 「良さそうだね」というものがあれば、紙とペンで簡易的に作って、テストで遊んでみる。実際に盛り上がったら製品になっていく流れです。
白武 ゲームを作るとなると「見たことのない仕組みを作りたい」と思いたくなるんですけど、僕はマニア向けにどんどん専門化していくよりも、広く多くの人に遊ばれるものを作りたくて。
「ゴチになります」や「食わず嫌い王」みたいに、みんなが知っているゲームを生み出せたらいいなという思いは、作家を始めた頃からずっとありました。そういう考えでボードゲームも作り始めました。
―――何が「サンレンタン」の種になったんでしょう?
ライプ メンバーの1人が「お題の選択肢からトップ3を選んで、ほかの人がその順位を当てる」という骨子を出してくれたんです。
実際にテストプレイをしてみたら、これがいちばん感触が良くて。絶対にヒットする確信があったというよりはやってみて盛り上がったし、自分たちの中で自信があったという感じでしたね。
白武 ボードゲームをするときに、初対面だったり、ゲームに慣れてない人、気が合わない人、いろんな人が混ざっていても面白いと思える強度を作るにはどうしたらいいだろうとずっと考えていて。
なるべくシャイとか照れとか恥ずかしさのハードルを下げたかったし、その発想の中で生まれたのが「サンレンタン」でしたね。
―――このネーミングも最初からあったんですか?
白武 そうですね、「価値観三連単」とか「センスダービー」みたいなネーミング案もありましたけど、シンプルに「サンレンタン」でいいなって。
―――響きがキャッチーですもんね。競馬の「三連単」で1位2位3位を当てるゲームなんだなとわかるし。
白武 競馬をやる人はいいけど「サンレンタン」でゲーム内容が分かるかなとはちょっと思いました。あと、競馬のゲームだと思われすぎないちょうどいい塩梅かなと。
―――『サンレンタン』は、お題に対して出題者が選んだ3つの答えと、その順位を予想するゲームです。この仕組みの面白さを、お2人はどう考えていますか?
ライプ みんな、自分がどういう人なのかを誰かに言ってほしい、みたいな欲がある気がするんですよね。
4人で遊ぶと、出題者の自分に対して、ほかの3人が口々に「あなたはこういう人だよね」と言ってくれる。それが合っていても間違っていても、なんか嬉しいというか。何かの欲が満たされている感じがするんですよ。

白武 このメンバーが自分のことをどう思っているのかがわかるし、当ててもらってもうれしい。外れたら外れたでより盛り上がりますね。
ライプ 地元の友達とその友達の奥さんと一緒に遊んだことがあるんです。僕は奥さんとはほぼ初対面なんですけど、ゲームを通して友達が「奥さんはこういうのが好きだから」と紹介してくれる。で、それが外れてたりして(笑)。
「この人はこういう人だよ」って言ったり言われたりが盛り上がりますよね。
―――わかります。テレビバラエティと違って、一般の我々は「お題を出される」ことがないじゃないですか。だからカードがあるだけでちょっと場が番組的になるというか、ショーみたいになる気がします。
白武 そうですね。あと、今の時代だと友達でも気を使って踏み込めないことが多くあるなと。「これを言っていいのか」というラインの線引きが人によって違う。
でも、「サンレンタン」を入り口にするとテーマやお題があるので話しやすくなる。これについて話していいという合意というか安全性というか。ゲームが仲良くなるためのコミュニケーションのハードルを下げているのかなと思います。
ライプ ゲームが終わったあとも、お題のカードを見ながら、普通にしゃべっている時間があったりしますよね。
「もしも今日、帰りに100万円をもらえるなら?」みたいなお題を読んで、選択肢を見ながらみんなで話してる。
白武 選択肢がすでにあるから、ゼロから話題を立ち上げなくてもいいんですよね。
お題から派生して、「えっ、それ好きだったの?」「前に好きって言ってたじゃん」と話が広がっていく。会話の発生装置として機能しているんじゃないかなと思います。
新作は「もしも」の世界を楽しむ
―――最新作の『サンレンタンもしも』はどのような点が新しくなったのでしょうか?
ライプ ルールは変わらず、お題のテーマを「もしも」で統一しています。
最初の『サンレンタン』はいろんなジャンルのお題が入っていて、第2弾の『サンレンタンDEEP』は、より相手のことを深く知れるような話題。
そして今回は、普通に会話していたら、絶対にしゃべらないだろうというようなお題です。
シリーズごとに、遊び終わったあとの空気がなるべく被らないようにしたいという思いがあります。なので普段しゃべらないことをぜひしゃべってもらいたいですね。

白武 『DEEP』は、何に腹を立てるかとか、何を優先するかとか、本当に仲良くなるときに大事な価値観の芯に触れるものを多く入れています。
今回は「もしも」という空想の世界に入ることで、「そういうシチュエーションに置かれたらそうするんだ」と話がより膨らむ。仲のいい人でも、これがなかったら聞けなかったこと、考えたことがなかった自分の価値観を知ることができると思います。
―――パッケージもかわいいです。
白武 今回、パッケージのイラストを長場雄さんにお願いしました。僕が知ったのは10年前くらいで、その当時からカルチャーシーンのトップランナーとして活躍を見ていました。
ライプ 広告、ファッションの分野で活躍されているイメージがあったので、ボードゲームのパッケージを描いてくれるんだって驚きました。
白武 ボードゲームっぽさがなく、今までとは違うアプローチになったかなとは思いました。このイラストをきっかけに手に取ってくれる人が増えたらいいなと思っています。
ライプ デザインのディレクションは白武さんが中心で色々動いてくれていて。
実際にハンズやロフト、ドン・キホーテの売り場の写真を撮って、グループに共有してくれるんですよ。その写真を見ながら「目立つカラーを1色入れた方が手に取ってもらいやすい」「ただ、長場雄さんのイラストの雰囲気は崩さないようにしたい」と話し合いました。
白武 僕自身は無印良品やAppleのようなシンプルなデザインが好きなんです。でもゲームをテーブルにパッと出したときの可愛さや、売り場での目立ち方も意識すると、シンプルなだけでは戦えない。
テレビや動画に映ったときに認識されるか。たくさんの商品が並んでいる中で目に留まるか。タイトルを覚えてもらえるか。そういうことを踏まえて総合的にディレクションしていってますね。
『サンレンタン』ヒットの理由
―――『サンレンタン』が、これだけヒットした理由はどこにあると思いますか?
白武 その要因は、ボードゲーム全体に言えることと、『サンレンタン』に言えること、ふたつがあると思うんです。
まずコロナ禍で家族で遊べるボードゲームが注目されて、『ito』『ナンジャモンジャ』『はぁって言うゲーム』などがよく遊ばれるようになった。
番組を作る側も、大人数で収録できず、制作費が下がっているなかでどう企画を盛り上げるか考えたときに、自然とボードゲームが選ばれたりしたんですよね。そこで一回ブームがあった。
そのあとブーストがかからなくなったとはいえ、みんなが『ito』をうっすら知っている状態にはなった。以前よりもボードゲームで遊ぶこと自体が身近になって、ゲームに詳しくない人でも新しい作品を手に取りやすくなった。そういう土台ができたことは大きかったと思います。
ライプ テレビやYouTubeの力はやっぱり大きいですよね。『サンレンタン』も、『ラヴィット!』のようなバラエティ番組で取り上げてくれたことで広く知られたところがあります。
僕が作家を担当している『ララチューン』(ラランドの公式YouTubeチャンネル)でも、製品になる前のベータ版を遊んでくれたんですけど、『サンレンタン』って結構動画映えするんですよ。
実際、YouTuberの方やインフルエンサーさんが配信で遊んでくれることも多くて。
白武 VTuberの場合、手を使ってカードを出すアクションが重要なゲームは遊びにくいんですよね。でも『サンレンタン』なら画面上にお題と選択肢を出しておけば、会話だけでも成立する。そこも良かったですね。
ライプ カードゲームと言いつつ、カードがなくてもお題さえあればできてしまうゲームではあるので、そのあたりが使いやすいのかもしれません。
ただ、このお題と7つの選択肢を、プレイヤーみんなが盛り上がるように考えるのは意外と難しい。そこに、白星というチームが『サンレンタン』を作っている価値があると思います。
作家がしっかり考えて「これをやっておけば盛り上がるよ」というお題になっているので、企画として選んでもらいやすいのかなと思います。

―――ボードゲームでもありつつ、作家陣が考えたひとつの企画でもありますしね。
白武 ただ面白そうな単語を並べるだけじゃなくて、選択肢のバランスまで考える必要がある。簡単に予想できても面白くないし、難しすぎても盛り上がらない。そこに作り手のセンスが問われるゲームだと思います。だからこそ『サンレンタン』は、新しいお題を求められている感覚がありますね。
現状、第1弾が8万部、第2弾が4万部で、シリーズ累計12万部。第2弾も発売からの期間で比較すると、第1弾と同じようなペースで売れている。新しいシリーズが出たらまた買いたいと思ってもらえているのかなと感じています。
―――一度遊んで終わりじゃないですもんね。同じお題でも集まった人によっても変わりますから。
ライプ そうなんですよ。こういうゲームって、一回遊んだらもう一度やる気が起こらない、みたいなこともありがちなんですけど、『サンレンタン』はメンバーが変われば、当然トップ3も変わる。
同じお題でも別の人と遊べばまた面白い。リプレイ性が高いのも魅力だと思います。
白武 同じメンバーで遊んでも、1か月後にやったら答えが変わるかもしれない。その変化も面白い。
ルールやお題だけじゃなくて、ゲームの主役があくまでプレイヤーの価値観だというところが、このゲームの良さだと思います。
―――誰が遊んでも面白いゲームにするために、大切にしていることは何ですか?
白武 YouTubeでタレントがゲームを遊んでいるのを見ていると、「この人たちが面白くて、キャラが立っているから、ゲームも楽しそうに見えるんだろうな」と感じることがあります。
でも、実際に友達と遊んでみると、同じようには盛り上がらなかったりする。そういうときって、かなりがっかりしますよね。
だから『サンレンタン』は、誰もが自然と盛り上がれるゲームでありたいなと。遊んだあとに、相手との距離が少し縮まっている。そんなゲームになれたらうれしいですね。
※中編に続く


『サンレンタンもしも 価値観を3位まで当てるゲーム』
ゲームデザイン/白星(白武ときお・ライプ・千菅一真・楠本拓也)
価格/本体2,100円+税
「もしも、100万円がもらえたら?」「もしも、超能力が手に入るなら?」
いろいろな「もしも」のお題で、自分なりの1~3位を決めよう!
他の人は「この人なら何を選ぶ?」と順位を予想します。意外な答えに驚いたり、予想が当たって盛り上がったり。遊ぶほど、その人らしい好みや考え方が見えてくるゲームです。
パッケージ&カードアイコンイラストは、人気イラストレーターの長場 雄が担当!
【プレイ人数】2~6人 【プレイ時間】約15分 【対象年齢】8歳以上
【入っているもの】お題カード40枚、順位カード42枚、得点シート1枚、得点コマ6個、説明書
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