今月から、声優の斉藤壮馬さんによる新連載がスタートします! 本業の声優業にとどまらず、歌手やエッセイ本『健康で文化的な最低限度の生活』(KADOKAWA)でも知られる斉藤さん。
エッセイのテーマは、「口」。声優は、声とことばを扱うお仕事。他方で、斉藤さんは幼少期から美味しいものが大好きだったそうです。本連載では、口からアウトプットされるもの、口からインプットされるもの……さらには、そこに乗る記憶や記録について、ざっくばらんに書き綴っていきます。
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皆さま、はじめまして。このたび『日々是口福』というエッセイの連載を始めることになりました、斉藤壮馬と申します。
ぼくはふだん、声優という仕事をしていて、読んで字のごとく声を使って芝居をする俳優業を中心として、文筆業や音楽業、あるいはラジオやイベントへの出演など、様々なかたちでエンタテインメントに関わらせていただいております。お世話になっている皆さま、いつもありがとうございます。
声優というのは、声とことばを扱う仕事。言い換えれば、「口」にまつわる仕事ともいえるでしょう。ぼくたちはたくさんの思考や感情を日々ことばにし、口から発しています。そして発せられたことばは言霊になり、多くの方へ思いを届けてくれます。今回連載のお話を頂戴したのも、そんな言霊のおかげだと思っています。
また他方で、ぼくは子供のころから美味しいものが大好きでした。学校からの帰り道、今日の晩ごはんはなんだろうと妄想を膨らませながら歩いたことは数知れず。大学入学と同時に上京し、一人暮らしを始めてからは、毎食なにを食べようか、あるいは、なにを我慢してどんなプチ贅沢をしようかと考えを巡らせたものです。それは今でも変わっておらず、たとえばこの原稿を書いている昼下がりも、どの程度の空腹感を維持したまま夕食に臨むか悩んでいるところです。書き終えたらさんまを食べたい。塩焼きで、日本酒と一緒に。
別段グルメというわけでも舌が肥えているわけでもありませんが、なにをいつどうやって食べるか、つまり「口」にするものについてもまた、自分なりのこだわりがたくさんあるようです。
そんなわけで、担当編集O氏と打ち合わせを重ねていくなかで「口」をテーマにすることが決まったのは必然だったような気もします。口からアウトプットされるもの。口からインプットされるもの。そこに乗る記憶や記録について、ざっくばらんに書いていってみようというわけです。
そんな連載が次回から始まりますが、今回はまず第0回ということで、学生時代の思い出のお店にご協力いただき、撮影をしてきました。

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取材当日、朝から叫びの仕事が続き、ひどく空腹だったが、一日の終わりに取材で美味しいものをいただくとわかっていたので、あえてなにも食べなかった。香盤表によると、ラーメン、オムライス、チャーハンを食べることになっていて、かなりのボリュームになることが明らかだったからだ。
そのお店は通っていた大学のすぐ近くにあって、もう何十年も営業されている老舗である。数多くの著名人が通ったことでも有名で、同窓生の多くが一度は足を踏み入れたことがあるのではないだろうか。
ぼくも御多分にもれず、授業の合間などにひとりで行ってはさっとかっこんで店をあとにしたものだ。よく頼むのはチャーシューメン。そのチャーシューメンの味が、かつて実家の近くにあった食堂のチャーシューメンにそっくりだからだ。初めて食べたとき、思わず「ただいま」と呟きたくなってしまったくらい、懐かしくて滋味深い味わいである。ちなみにその地元の食堂にも多大な思い入れがあるので、今後連載のどこかで改めて書くかもしれない。
さて、営業終了後にお時間をいただき、撮影の準備を終えた我々のもとへ、まずは瓶ビールが到着した。あまりこのお店で酒を飲んだことはないが、なにせ今回は「日々是口福」。気持ち泡が多めになるようにグラスに注ぎ、乾杯。ひと息。たまりません。

次いでラーメンが到着。チャーシュー、メンマ、もやし、コーン、ナルト、ネギといった王道の具材と麺に、煮干しと醤油の旨味が効いたスープが絶妙にマッチしている。とにかくこのスープがぼくのノスタルジーをこれでもかと掻き立てるのだ。

まだスープが熱いうちにオムライスもやってきた。オムライスはこの店の人気メニューのひとつで、これを目当てに通っている方も多い。薄焼き卵がライスを柔らかく包み、ど真ん中に潔くケチャップが鎮座している。贅沢にもひと口めからケチャップごとスプーンですくっていただく。はい優勝。


そしてチャーハンも登場。ここのチャーハンはとても優しい味つけで、錦糸卵がたっぷり載っているのが特徴だ。実は初めて食べるかもしれない。彩り豊かな具材たちに目も満足しながら、ぱくり。とてもバランスがよく、ビールにも、なんならオムライスにも合うのがすごい。

三者三様の味わいを堪能しているうちに撮影が終わり、みんなでしっかり食べる時間に。ひとりではさすがに食べきれないと思っていたが、チームだとぺろりと完食。こんなふうに分け合って食べるだけで、なんだか気分が上向きになるから不思議だ。

お礼を言って店を出て、晩夏の夜風を感じながら駅へと歩く。駅周辺はかつての面影を残しつつも新しい店もだいぶ増えていて、ああそうだ、自分が学生だったのはもうだいぶ昔のことなのだな、としみじみ思った。
というわけで、なんとも口福、そして満腹な第0回となった。冒頭でも書いたが、この連載では、変わってしまったものや変わらないもの、いつか口にしたことばや食べたものなどについて、あちこち寄り道しながら書いていくつもりだ。
ひとまず、今日もごちそうさまでした。

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日々是口福

声優の斉藤壮馬さんが「口」をテーマに書き下ろす連載エッセイです。声優は、声とことばを扱うお仕事。他方で、斉藤さんは幼少期から美味しいものが大好きだったそうです。本連載では、口からアウトプットされるもの、口からインプットされるもの……さらには、そこに乗る記憶や記録について、ざっくばらんに書き綴っていきます。
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