現役医師で作家の南杏子さん。デビュー作『サイレント・ブレス』(2016年9月)から10年目の同じ9月に『沈黙の患者』が発売になりました。デビュー10周年記念作品! というわけで、この10年苦楽を共にした(?)担当編集Kと南杏子さんで、ざっくばらんに色々振り返ったおしゃべりをお届けします。
第2弾は、吉永小百合さん主演で映画化された『いのちの停車場』のお話など。

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映画化で、勲章をいっぱいもらったみたいな感じ
デビューから4年目に降ってわいた、『いのちの停車場』の映画化! 金沢へのロケハンにご一緒したり、エキストラで出演したり、舞台挨拶したり、「あさイチ」や「徹子の部屋」に出演したり! 南さんにとっても編集にとっても、特別な思い出です。
編集 東京の大学病院で、救命救急センターのナンバー2としてバリバリ働いていた医師・咲和子が、故郷の金沢で訪問診療所の医師となるんですが、大きなテーマが「積極的安楽死」についてでした。
南 咲和子が積極的安楽死を切望する父に、娘として医師としてどう対峙するのか。終わり方を最後の最後まで悩みましたね。
編集 あと、小児がんの萌ちゃんのお話も、今思い出しても涙が……。
南「がんの子に生まれてごめんね」って、萌ちゃんが両親に言うシーンですね。書いていても泣けて泣けて、パソコン画面が見えなくなるというか。お茶飲んでおやつ食べて、気を落ち着けてまた書いて、でした。
編集 それが、吉永小百合さん主演で映画になって!
南 そんなことがあるのか、と驚くばかりでした。
編集 担当作品を映像化していただくことはこれまでもありましたが、南さんは原作者として映画に色々関わらせていただきました。エキストラ出演もしましたよね。
南 はい、大学病院のナースの役で、吉永さん演じる咲和子医師に医療器具を渡す役割をしたんですが、緊張のあまり、金属のワゴンにガチャンと落としちゃって、撮り直しになりました。でも、吉永さんとてもお優しくて……。
編集 初めての映画の現場、どうでしたか。
南 1シーン撮るのも半日とかかけて、映ってるのは数人なのに、スタッフは100人からいるわけじゃないです。とにかくすごいことで、なのにNGを出してしまって……。
編集 映画の冒頭に南さん登場しますので、ぜひ探していただきたいです。吉永さんとは、パブリシティで対談もしましたし、キャンペーンで札幌もご一緒しました。
南 いつもお気遣いくださり、優しく声をかけてくださって。一生の思い出です。
編集 そして、NHK「あさイチ」の「プレミアムトーク」にも出演しました。
南 人前で話すことは得意じゃないので、生放送でとても緊張したんですけど。
編集 南さん、面白かったですよ。「医師で作家で、夫が主夫」というキャラクターが視聴者の皆さんに受けたみたいで、南さんの本のAmazonの順位がどんどん上がって嬉しかったです。まさかの「徹子の部屋」にも出させていただきました。
南 いまだに言われますね。「徹子の部屋」に出たんだよ、って友達が人に紹介してくれるみたいな。日本アカデミー賞の授賞式にも参加させていただいて、華やかな会場に感激しました。なんだか、勲章をいっぱいもらったみたいな感じです。
編集 それで南さん、これがピークでもう辞めてもいいとか言ったんですよ。ダメです、絶対。
編集『いのちの停車場』に前後して、『ブラックウェルに憧れて』や『アルツ村』が刊行になりました。
南「ブラックウェル」は、いつも感じていた医療現場での「ガラスの天井」、女性ならではの悩み、苦労について書きました。私自身、大学病院に勤務していた頃、「結婚して、妊娠して残ってる医局員はいない」なんて実際言われたりもしましたし。怒りの気持ちがありました。
編集『アルツ村』はホラーっぽいです。
南 これは、ずーっと前から考えていたんです。小説教室に通っていた頃から。住んでいる人の全員が認知症だけど、その人たちを支えるスタッフがみんな親切で、幸せな村。だけどそれはもちろんある代償があって……という物語です。
編集 結構大仕掛けで、南さんこういうのも書けるんだ、と思いました。
南 これ書いてた頃にちょうど、ホラー映画をたくさん見ていて、その影響もあったと思います。
その3へ続く。
沈黙の患者

「あのまま、一人で焼け死んだくれたら……」高齢化社会に潜む“犯罪未満”の出来事に心揺れる人々を綴る、傑作心理サスペンス。デビュー10周年を迎えた現役医師で作家の新境地!
決して他人ごとではない、日常を蝕む5篇の物語
知人に唆されて「認知症の母」をレンタルして、介護保険を騙し取ってしまった独身中年の娘。――「沈黙の患者」
子ども食堂に“他人の孫”を連れてきて、甲斐甲斐しく世話を焼く老爺に疑問を持つ女性スタッフ。――「夕方の善意」
年老いた父親が若い女性と付き合っていると知って、無理やり別れさせようとする中年姉妹。――「シル専の女」










