「知識は十分にあるはずなのに、相手が思うように動いてくれない」。
多くのリーダーや指導者が抱えるこの悩み。その根本的な原因は、知識の量ではなく「伝える技術」の不足にあります。難解な用語を並べ、相手の理解度を無視した独りよがりな説明になってはいませんか?
今回は、本日発売の清水忍さんによる最新刊『一流を支えるトレーナーの最強の教え方』(リンク先はAmazonに遷移します)より、「伝達力」を高める極意を解き明かします。
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「知識はあるのに相手に伝わらない」──現役指導者が陥る共通の罠
私は、指導歴3~5年以上のスポーツトレーナーを対象に、指導力のさらなる向上を目指す「清水塾」を主宰しています。「自分はトレーナーではないから関係ない」と思われた方も、どうか読み進めてください。ここからお伝えすることは、あらゆる職種に通じる「伝える力」の本質だからです。
清水塾ではトレーニングの知識も学びますが、最も時間を割くのは「上手に教えるテクニック」です。ウエイトトレーニングはあくまで題材の一つ。真の目的は、あらゆる事象をいかに嚙み砕き、相手の脳へ正確にデリバリーするか、その「理解のさせ方」を徹底的に鍛えることにあります。
塾を立ち上げる10年以上も前のことです。ベテラントレーナーに「指導の現場で苦労していることは?」と尋ねた際、返ってきたのは「言う通りに動いてくれない」「相手のモチベーションが上がらない」といった悩みばかりでした。ここで私は確信したのです。彼らが苦しんでいるのは「知識不足」という問題ではなく、「伝える技術の不足」という問題なのだと。
一方、若手トレーナーの指導を観察していると、難解な用語の羅列や、相手の理解度を無視した独りよがりな進行が目立つことがあります。しかし当の本人は「もっと高度な知識があれば」「バリエーションを増やせれば」と、「自分の知識不足」の問題ばかりに意識が向いています。
多くの指導者養成機関では「正しい知識」を教え、「指導練習」は行いますが、「上手に伝える方法」まではカリキュラムに入っていません。だからこそ、私はこの「教える力」を体系的なメソッドとして確立し、世に広めたいと考えたのです。
地獄の初回講義「7分間の自己紹介」で己の無力さを知る

清水塾の講義は、少人数制で濃密に行われます。最初の課題は、唐突な「説明トレーニング」です。
たとえば「衆議院と参議院の違いを中学生に説明してください」といったお題を出します。ですが、これでは上手に説明できなくても「知識がないからできませんでした」という言い訳が通用してしまいます。そこで、全員が世界一の知識を持っているテーマ、すなわち「自分自身」についての7分間の自己紹介を課します。これなら知識不足という言い訳は通用しません。純粋な「話の構成力」と「伝達力」だけの真剣勝負です。
実際にやってみると、7分間話し続けるのは至難の業です。このワークの目的は「自分がいかにわかりやすく喋れていないか」を痛感してもらうことにあります。
中には、この時点で非常に話が上手で、かなり優秀な指導者であることが一発でわかるような人もいますが、以下のような残念なケースも多く見受けられます。
《残念な「伝え方」の典型例》
①声が小さい、または語尾を飲み込んでしまうため聞き取れない
②相手の目を見ない、または特定の人にばかり目を合わせる
③一本調子でメリハリがなく、話の印象が薄い
④テンポが速すぎ、遅すぎ、間が長いなどで、心地よく聞けない
①~④は「話し方」という基本的な問題で、ここはできている人も多いのですが、それ以外にも、
⑤相手がこの話に興味を示しているかどうかを感じ取らないで話し続ける
⑥話が方々に飛び、ポイントがぼやけてしまい、印象に残らない
⑦せっかく面白い内容なのに話の組み立てが悪くて普通の話になってしまう
⑧色々と盛り込みすぎて、まとまりがない
⑨熱くなりすぎて、自分がどんな話をしていたのかわからなくなってしまう
などが挙げられます。
⑤~⑨は「話し方」というより、「話の構成力」と「伝え方」になります。
この「構成力」と「伝え方」が悪いために、「話し方」がうまくても残念な形になってしまう人も大勢います。
一方、これらができている人の話は7分があっという間に感じ、内容が鮮明に記憶に残ります。つまり、うまく話せない人は「話すことがない」のではなく、「上手に伝える」という「テクニック」が足りないのです。
その場で公開処刑? 劇的なビフォーアフターを見せるフィードバック

自己紹介が終わると、即座にフィードバックを行います。せっかく発言したのに意見を言われるのは誰しも嫌なものですが、ここはその能力を伸ばす場なので成長のためにあえて踏み込みます。私が「今の話をこう変えてみたら?」とその場で実演すると、受講生からは「おおっ!」と驚きの声が上がります。たとえば、こんな自己紹介はどうでしょうか。
《本人の自己紹介》
こんにちは、私の名前は清水忍です。
群馬県生まれの58歳です。
7分も持ち時間があるのに、この部分を簡単にしか話さない人が多いものです。ですがこれでは情報が素通りしてしまいます。自分のことを知ってほしいという気持ちがあれば、こんなにあっさりと話してしまっては物足りないのではないでしょうか。私が修正するとこうなります。
《修正後の自己紹介》
こんにちは、私の名前は「し・み・ず・し・の・ぶ」です。「しのぶ」は忍者の「にん」です。今から私の生い立ちなどを少しお話しいたしますね。
子どもの頃は「しのぶ」という名前が嫌いでしたが、坂上忍さんのおかげでこの名前が有名になり、今では逆に大好きな名前になりました。ただ、子どもの頃から友達からは「しのぶ」と呼ばれたことがなく、坂上忍さんが「しのぶさん」と呼ばれているのが羨ましいです。みなさん、ぜひ私のことを「しのぶ」と呼んでください。
私は今58歳で野球が大好きなのですが、自分が憧れているプロ野球選手が全員年下になり、さらに監督さんたちよりも年上になっていました。不思議な感覚ですが、最近は年下の人たちを尊敬することが本当に増えてきました。みなさん、私がここに立ったときに何歳くらいに見えましたでしょうか。本当は58歳ですが、私はできれば40歳くらいには見えるように毎日頑張っているつもりです。
こんな私が生まれたのは群馬県で、高校卒業と同時に東京に出てきました。群馬県といえば、「田舎」という印象が強い代表的な県らしいですね。今思えば、確かにそうではあるのですが、そこまで言われるほどでもないと思っています。今後みなさんとお話をしていく中で、群馬県がどれだけ楽しくて素晴らしいところかを、たくさんお伝えしていきたいと思っています。
いかがでしょうか。「名前・年齢・出身」という無機質なデータではなく、「その人がどんな人間か」という血の通った印象が残るはずです。
「伝えるべきはデータではなく、あなた自身である」
この初回講義を終えた受講生たちは、これまでの自分の独りよがりな指導にショックを受け、帰り道は全員無言でうなだれて帰るといいます。しかし、その後の反省会では「もっと良くなれる」という希望に火がつくのです。
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清水忍さんによる最新刊『一流を支えるトレーナーの 最強の教え方』(リンク先はAmazonに遷移します)は、好評発売中です! ぜひお手に取ってご覧ください。
一流を支えるトレーナーの 最強の教え方

清水トレーナーから学んだ「相手に伝わる」伝え方という技術は、
私にとって一生ものの武器―—菊池雄星投手
「何度言っても伝わらない」「教えても育たない」
これらは多くの指導者が抱える悩みだ。その原因は、教える側の能力・熱意不足ではない。では一体何が問題なのか? それは指導者側の「3つの認識のズレ」にある。
①「覚えさせること=教えること」という勘違い
②「教えるのが苦手」という思い込み
③「ちゃんと教えることができている」という過信。
これらを手放せば、あなたの言葉は確実に相手に伝わる。一流アスリートからビジネスパーソンまで、総勢2千人以上を見てきた名トレーナーによる新時代の指導バイブル!










