一生懸命教えているのに、なぜか相手に響かない、再現性が低い……。
その原因は、教える内容の良し悪しではなく、相手の「現在地」を見誤っているからかもしれません。
初心者に高度な理論を語り、上級者に基礎を説く。そんなミスマッチが、指導者の評価を落とし、教え子の意欲を削いでしまうのです。
総勢2千人以上を見てきた名トレーナー・清水忍さんの新刊『一流を支えるトレーナーの最強の教え方』(リンク先はAmazonに遷移します)より、「自分がいなくてもできる人」を育てる指導者になるための秘訣をご紹介します。
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指導者の最終ゴールは「自分がいなくてもできる人」を育てること
原理原則や理屈を理解していれば、指導者がいなくても自分一人で正しい練習を再現し、応用できるようになります。
そもそも、教えることの目的は何でしょうか。知識や技術を「伝えること」そのものがゴールではないはずです。
その先にあるのは、伝えた内容を相手が深く理解し、血肉として、自力でより良い仕事なりトレーニングなりをできるようになっていくことです。
指導者がいる間はできるけれど、いなくなった途端にできなくなる……これでは「身についた」とは言えません。一人でできるようになって初めて、本当の意味で「理解した」と言えるのです。
「教える力」のある人は例外なく、教え子の自立を望んでいます。自分以上に大きな存在になってくれることを願っているのです。
「青は藍より出でて藍より青し」
「出藍の誉れ」
という言葉があるように、弟子が師匠を超えることこそ、指導者にとって最大の喜びです。教える力がある人ほど、その願いは強いものだと私は確信しています。
相手の「現在地」を見誤る指導者は、知らずに信頼を失っている

どれほど素晴らしい内容を丁寧に教えたとしても、相手が満足できなければ、その教え方は「誤り」です。教える側と教えられる側の間にミスマッチが起きているからです。
この不一致の多くは、教える側が「相手のレベルや状態」を見誤ることで起こります。
極端な例ですが、まだ経験の浅い初心者に、ベテラン向けの高度な内容を教えたらどうなるでしょうか。小学校1年生が6年生の授業を受けるようなもので、結果はチンプンカンプンです。
逆に、上級者に対して初級レベルの内容を延々と教えれば、相手は物足りなさを感じます。「そんなことは知っている。期待して来たのにお金と時間の無駄だった」と落胆させてしまうでしょう。
こうなれば、教わる側はがっかりし、教える側も評判を落とすという、双方にとって残念な結果しか残りません。
「教える力」のある人は、決してこうはなりません。
相手のレベルや関心を敏感に察知するセンサーが常に作動しており、瞬時に状況を判断して、その場に最適な対応ができる適応力を持っているからです。この詳細については、第5章であらためてくわしく解説します。
「どこまで教えるか」の引き算ができると、相手に伝わることは倍増する

相手に合わせて内容を変えるということは、「どこまで深く教えるか」を判断することでもあります。相手がどこまで教えてほしがっているのか、今の段階でどこまで理解できるのかを把握することが大切です。
たとえば「運動経験がまったくない初心者」と「筋力をさらに強化したい中級者」、そして「上級アスリート」とでは、教えるレベルが違って当然です。腹筋トレーニングを例に考えてみましょう。
まずは初心者へのアプローチです。これまで運動習慣がなかった50代の方が「健康のために」と来られた場合、私はこう説明します。
「腹筋が弱いと、歩いているときも腰が反りやすくなります。それが腰痛の原因になるので、今のうちに腹筋を鍛えて予防しておきましょう!」
腰痛になりたい人はいませんから、これを聞けば「なるほど、やった方が良さそうだ」と納得してもらえます。目的によっては、「カッコいい体のポイントは腹筋です。ここを鍛えれば胸の筋肉も引き立ちますよ!」といった伝え方も有効でしょう。
その上で、「腹筋は背中を丸める動作をすると鍛えられます。では、やってみましょう」とつなげます。初心者であれば、これくらいのシンプルな説明の方が理解しやすく、やる気も持続します。これ以上の専門的な話は、かえって面倒に感じさせてしまう恐れがあります。
一方、上級アスリートにはまったく別の話をします。腹筋強化がパフォーマンスにどう貢献するかを論理的に理解させることが不可欠だからです。
たとえば野球の投手ならこうです。
「投球動作では、軸足の蹴りによるキャッチャー方向への高速体重移動エネルギーを、手先までロスなく伝える必要があります。このとき、下半身がキャッチャー方向に動いているのに、上半身がそれに着いてこられずに後方に取り残されてしまうと力の伝達にロスが生じてしまいます。
腹筋は、この下半身で生じさせたパワーを上半身に伝達する『架け橋(ブリッジ)』の役目を果たすのです。だから腹筋には強さだけでなく、力を発揮するタイミングが重要になります。単に腹筋を鍛えるだけではなく、脚で踏ん張ったり、手で押したりする動作とタイミングを合わせ、連動させて鍛えないと、せっかくの下半身の強さが活かせません」
この専門的な話は上級者には必須ですが、初心者には不要な、いわば「邪魔な説明」になります。「相手に合わせる」とは、こういう使い分けのことです。
私は雑誌の企画などで、レベル別の腹筋エクササイズを紹介することもあります。
初心者にはオーソドックスな起き上がり運動。中級者には「手で地面を押す動作」を加えた腕立て伏せとの連動。そして上級者には、ジャンプして両膝を引き上げるようなアクロバティックな動きを提案します。
上級者向けのメニューを初心者に説明すれば尻込みしてしまいますし、その逆もしかりです。相手に合わせて説明のレベルとボリュームを最適化することの重要性が、おわかりいただけるかと思います。
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一流を支えるトレーナーの 最強の教え方

清水トレーナーから学んだ「相手に伝わる」伝え方という技術は、
私にとって一生ものの武器―—菊池雄星投手
「何度言っても伝わらない」「教えても育たない」
これらは多くの指導者が抱える悩みだ。その原因は、教える側の能力・熱意不足ではない。では一体何が問題なのか? それは指導者側の「3つの認識のズレ」にある。
①「覚えさせること=教えること」という勘違い
②「教えるのが苦手」という思い込み
③「ちゃんと教えることができている」という過信。
これらを手放せば、あなたの言葉は確実に相手に伝わる。一流アスリートからビジネスパーソンまで、総勢2千人以上を見てきた名トレーナーによる新時代の指導バイブル!
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