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まわり道の愛し方

2026.07.13 公開 ポスト

自分の人生をうまく愛せない文筆家、ポッドキャストを始める【新連載】ひらりさ(文筆家)

自分の人生を愛せていますか?

そんなふうに聞かれて、心から「はい」と断言できる人っているんだろうか。

こんにちは。
断言できないほうの文筆家・ひらりさです。
この7月で37歳を迎える平成元年生まれ、独身のわたくし。
幻冬舎plusでは2025年に、「恋愛と未熟」という往復書簡連載をやらせていただいていました。

ロンドン在住で同世代の文筆家・鈴木綾と、独身二人のリアルな恋愛模様をお届けしていた同連載がこのたび『いつか終わる恋愛の、人生への影響について』として、単行本になることになりました。7月8日に発売したところです! 連載からブラッシュアップし、書き下ろしを加えた内容となっておりますので、良かったらお手に取ってみてください。

さて、1年間の往復書簡を通して、恋愛における失敗や後悔、今後のキャリアへの迷い、人間関係での癖や人生の指針を率直に自己開示しあい、理解を深めた我々ふたり。
この交流をもっと続けたい!と考え、ポッドキャストを始めることとしました。

それが「まわり道の愛し方」。
綾から「人生をまっすぐ生きるのが苦手な人たち、よりみちしちゃう人たちに向けておしゃべりしたい!」という思いと、私の「自分をうまく愛せない人たちへのエールにしたい」という思いを合わせてこのタイトルになりました。

 

個人的にはこっそり、映画化した韓国文学の傑作『大都会の愛し方』(パク・サンヨン)へのオマージュもこめています。ゲイであることを隠して生きる語り手・フンスと、彼が出会う人々との関わりを描いた連作短編集なのですが、まさに、遠回りしながら、失敗しながら、他人の愛し方、自分の愛し方を知っていく過程が描かれており、本当に良い小説です。彼の女友達ジェヒとの関わりにフォーカスした映画版「ラブ・イン・ザ・ビッグシティ」もおすすめ。

というわけで、ポッドキャスト同名の本連載では、私ひらりさが、ポッドキャストの副音声(?)となるような、テキストコメンタリーをお届けしていきます。

ポッドキャスト。みなさんは日常的にお聞きになっているでしょうか?
物書きや出版界隈にいる知人友人の話を聞いていると、子供の頃からラジオ文化に親しみ、今もラジオとポッドキャストを幅広く聴くという人が多い。

私は……実は全然聞かないんです。10代の頃声優オタクだったので、声優ラジオだけは狂ったように聞いていました。神谷浩史さんが大好きだったので、「さよなら絶望放送」と、「神谷浩史・小野大輔のDear Girl~Stories~」だけはフルコンプリートしていた。受験勉強の合間の、心からの癒しでした。会社で働くようになってから全然聞かなくなっちゃいましたね。

そもそも、あまり耳から情報を取り入れるというのが得意ではなくて。小学生の頃は通信簿の「人の話を聞く」だけが万年Bでした。数年前に知能検査(いわゆるWAISというやつです)を受けてみたときも、聴覚記憶の数値と視覚記憶の数値に驚くほど差がありました。この凹凸が強いと発達障害と診断されやすいんですよね。そこまでの差ではないということだったのですが、なるほど、私の注意欠陥は、耳と目の凹凸から来ていたのか、と深く納得しました。インタビュー取材などで「今は相手に聞く仕事!」と念じている時は大丈夫なのですが、集中していないと、つい自分が喋りたくなってしまう……。

そんな私が文筆家となり、ラジオに呼ばれたりポッドキャストに呼ばれたり、自分でもこうして番組を配信するようになったのは、因果なもの。今回の番組を始める前に、友人との二人語りポッドキャストをやっていたのですが、そこでもかなり「聞き下手」を露呈していました。1年ほど配信したのですが、最後まで「うまく聞けたぞ!」という手応えがなかったかもしれない。相手がしゃべっているところに被せてしまったり、相手がそこまで乗り気ではない話題をだらだら続けて「聞いてもらって」しまったり。そう、聴覚記憶が悪いだけでなく、「聞いて聞いて」欲が強すぎるのも、聞き下手の一因なんですよねえ……。

そんな女がまたポッドキャストを始めてしまって大丈夫なのか。
怯えた私がとった手段は……とりあえず「聞き上手」の本を読みあさること! 
座学!(笑) 

調べると「聞くのが上手になりたい」というのは広くニーズがある課題のよう。「聴く」「聞く」の含まれる自己啓発本がかなりたくさん見つかりました。

その中でも私が有用だなと思った一冊はこちら。『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』(日経BP)。聞き上手を自負し、多彩な職業・バックグラウンドの人々にインタビューをしてきた著者が、聞く/聴くの心構えを、取材を交えながらまとめたものです。単純な技術論だけでなく、幼少期からの愛着の安定が「聞く」に与える影響などにも触れられていて、とても幅広い。

「このタイプ(不安型愛着スタイルの人)、は他人からの注目や好意を失うのが怖過ぎて、人の話をきちんと聞くことができません」

わ、私だーーーー!
聞くために、まずは心をととのえよう……とかたく誓ったのでした。

そんなわけで、ドキドキしながら初収録に臨んだのですが。
私の相方・鈴木綾が、めちゃくちゃ聞き上手だった!

それもそのはず、彼女はもともとジャーナリストとしてのキャリアを積んでいるのですね。しかも、日本語・英語・フランス語がしゃべれるトリリンガル。とにかく耳がいいし、聞くことの心構えが整っている、最強のパーソナリティなのです。

「まわり道の愛し方」では、そんな綾の「聞く秘訣」もちょくちょく明かされていく予定。「聞き下手」な自覚がある皆さん、ぜひ聞いてみてください!

それでは今日はこの辺で。
まわり道の愛し方」は月2回、月曜日に更新予定です。

番組ハッシュタグ「#まわり道の愛し方」でぜひ感想を呟いてください。
綾と私の新刊『いつか終わる恋愛の、人生への影響について』もよろしくお願いします!

関連書籍

鈴木綾/ひらりさ『いつか終わる恋愛の、人生への影響について』

マッチングアプリのずっと前から わたしたちは『商品』だったよね? 30代後半、ともに独身。 ロンドンと東京の会社員兼文筆家が 恋愛を考えるために往復書簡を始めた 「新年早々、失恋で寝込んだわたしが往復書簡を始める意味」(ひらりさ) 「恋愛に失敗なんてあるのかな?」(綾) 「わたしの恋愛には『人からどう見えるか』がいつもつきまとう」(ひらりさ) 「わかりやすい『性的魅力』にいいことはない」(綾) 「わたしの恋愛は、傷つけるほどの距離にならない」(ひらりさ) 「誰も教えてくれなかった愛するときに必要な『地味な仕事』」(綾) 恋愛で受ける傷、対等さへのこだわり、出産への迷い―― 他者と自分を愛する可能性を探った1年間の記録。

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まわり道の愛し方

ひらりさ×鈴木綾によるポッドキャスト番組「まわり道の愛し方」連動連載エッセイ。

アイコンイラスト:WAKICO/題字:ニョグ

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ひらりさ 文筆家

1989年、東京生まれの文筆家。「劇団雌猫」メンバーとして、『浪費図鑑―悪友たちのないしょ話―』(小学館)でデビュー。女オタク文化からフェミニズムまで、女性と現代社会にまつわる文章を執筆。個人名義の著書に『沼で溺れてみたけれど』(講談社)、『それでも女をやっていく』(ワニブックス)、『友達じゃないかもしれない』(上坂あゆ美との共著/中央公論新社)、『まだまだ大人になれません』(大和書房)がある。

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