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山野海の渡世日記

2026.04.25 公開 ポスト

二人の「かよさん」山野海(女優、劇作家、脚本家)

花粉もようやく落ち着いたと思ったら、なんとなく気温が安定しなくて

朝から外でロケをやっていると、いまだにヒートテックを着ようか脱ごうか迷っている今日この頃。それでもとりあえずは体調も崩さず私は元気にやっている。

最近の私は、作家の仕事は、とある作品の最後の直しをやっていて、

俳優の方はドラマ「リボーン」と「刑事ふりだしに戻る」の2本に出演させてもらっている。

2本ともむちゃくちゃ面白いドラマで、新しい台本をいただくと、いつもワクワクしながら読んでいる。

 

さて、ドラマ「リボーン」の方はレギュラーで出演させていただいている。

このエッセイを書いている時点で、すでに二話まで放送され、順調な滑り出しで嬉しい気持ちと同時に、内容がどんどん面白くなっていくので、一人でも多くの皆さんにご覧いただきたいと心から願っている。

 

私はこのドラマの中であかり商店街の書店を営んでいる中野加代という役。

撮影では監督はじめスタッフの方々はたいてい役名で俳優を呼ぶので、私を呼びたいときは当然「加代さん」と呼んでくれる。

ただ、その同じあかり商店街の中には肉屋の秀子さんこと岸本加代子さんが出演されている。なのでスタッフさんが加代さんと呼ぶと私と岸本さんが同時に振り向くことが多々あり、そこだけちょっとややこしいが、それを除けば最高に楽しい撮影現場なのだ。

 

このドラマに入る時に、チーフ監督から「あかり商店街」のシーンでは昔懐かしいホームドラマのように、明るく楽しくしてくださいと言っていただいた。

アドリブもどんどん入れてもらって結構ですとも。

これはもちろん、出演者の皆さんが素晴らしい演技力を持った最高の俳優さんだから

監督はそうおっしゃったのだと思う。

いや、本当に、撮影のたびに驚かされる。誰がどんなアドリブを言おうが、他の俳優さんは少しも同様せず、役としての言葉で、そのアドリブに対応する。

もうね、間近で見ていて気持ちがいい。

その中の一人に、私がいることが本当に誇らしい。

撮影現場に行くのが楽しくて楽しくて、何日撮影が続こうが疲れなんか感じない。

 

ただ一つ、困ったことがある。

 

みなさんアドリブもその受けの芝居もピカイチ。

ただし、どんなに素晴らしい俳優さんだって人間だ。

ふいのアドリブに笑ってしまうことがある。

しかもだ、何度も書くが、みなさん最高の演技者だ。

だから面白いことを言う時に、面白い顔や動作などは絶対にしない。

 

これは私も昔から思っていたことだが、人が笑うのは意外性である。

これから面白いことを言うぞ! という気持ちが少しでも先に見えてしまったら笑わない。

役を演じているその人が、一生懸命生真面目に話しているつもりでも、それがずれていくことにおかしみを感じる。

そんなことは百も承知だから、みなさん真面目な顔してアドリブをいう。

そのアドリブによって、周りも真面目に受け答えする。

それが画面を通すと面白くてついクスッと笑ってしまう。

 

それは分かっている。分かっているけど、どうしてもつい笑ってしまう。

時にはおかしすぎて涙が出てしまうこともある。

テストの時などは本当に危ない。

もちろん本番は誰もそんな風にはならないけれど。

 

こんな風に真面目に面白いことを作っている我々俳優陣が仲良くならないわけがない。

撮影の合間の休憩の時などは、普通それぞれの楽屋に戻るものなのだが、誰も帰らずみんなでおしゃべりしている。

その話の中心はもちろん柳沢慎吾さん。

先月もここで慎吾さんのことは書いたが、ずっとお喋りしているのに、その中に一つも誰かを傷つけるような言葉は言わない。

ただただ、みんなが幸せになるような笑いを生み出す。

 

さっき、このドラマは楽しすぎて疲れないと書いたが、それは嘘ではないのだが

撮影が終わって家に帰ると、少し腹筋が痛いことがある。

一日中笑っていたせいだ。

こんな幸せなことがあるだろうか。

撮影もまだまだ続く。

私は残りの幸せな時間を噛み締めながら、今日も真面目に笑いながら撮影をしている。

私が楽しそうだと、犬猫も元気だ!

 

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山野海の渡世日記

4歳(1969年)から子役としてデビュー後、バイプレーヤーとして生き延びてきた山野海。70年代からの熱き舞台カルチャーを幼心にも全身で受けてきた軌跡と、現在とを綴る。

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山野海 女優、劇作家、脚本家

1965年生まれ。東京新橋で生まれ育ち、映画女優の祖母の勧めで児童劇団に入り、4歳から子役として活動。19歳で小劇場の世界へ。1999年、劇団ふくふくやを立ち上げ、全公演に出演。作家「竹田新」としてふくふくや全作品の脚本を手がける。好評の書き下ろし脚本『最高のおもてなし!』『向こうの果て』は小説としても書籍化(ともに幻冬舎)。

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