光浦さんが出てた番組を、先日たまたま見ました。すごく面白かったです。面白いという言葉には二つの意味があって、おかしくて笑っちゃうような意味と興味深いという意味がありますが、光浦さんのトークには両方ともあります。若干アニメみたいな声がよく通るため、年寄りの耳にも聞き取りやすくノンストレスです。本人の意思とは別にタレントにも介護にも向いてると思います。
私は最近、『僕には鳥の言葉がわかる』という本を読んでいるのですが、幼い頃から鳥好きだった作者が、シジュウカラの鳴き声を日々聞き取り、分析してみたところ、どうやらさえずりにはちゃんと意味や文法があったと。お互いにエサや危険などを伝達し、助けあっていることがハッキリ判明した、というドキュメントです。光浦さんのさえずりにもちゃんと意味があって心に残る、というイメージと重なりました。
そういえば動物の声と光浦さんと言えば、私にとって消しても消しても消えない苦い思い出があります。あれはもう何年前のことになるでしょうか。椿鬼奴さん、モリマン・モリオなど女子芸人数名でハワイに行った事がありましたよね。天候もよく、コンドミニアムも快適で、ある一件以外はとても楽しかったです。
着いて3日目に、私たちはガイドつきのイルカツアーに参加しましたよね。ボートで沖に出て海に入って30分ほどたった頃だったでしょうか。私はシュノーケルをつけながら海での光景に一人、感極まってました。本当にオアフまで来てよかった。手を伸ばせばふれられそうなところにイルカの群れがいるのです。その姿が幼児たちみたいでフォルムもめちゃくちゃ可愛い。イルカの鳴き声が何度もハッキリ耳に響き、私は幸福感でいっぱいになりました。しかもその声の愛らしいことよ。テレビなんかでは知ってたけど、よく聞く「体験してみないとわからない」世界観は確かにあった、と確信しました。いったん海からあがって、ボートの上でバスタオルで身体を包みながらしばらくその声を思い返してはうっとりしてると、背中で聞こえてきた鬼奴さんたちとの会話の中で、あなたは確かにこう言ってましたよね。「イルカ、ちっとも鳴いてくれんかったなや。私しゃずっと鳴き真似しとっただに。のど痛いだに」私は心の底から驚愕し、ゆっくりと静かに振りかえりました。なぜなら振り返るあいだに、嘘だと言って欲しかったから。その言葉を待ってたからです。そうです。海で私の耳に響いていたのは、天真爛漫なイルカの可愛い鳴き声ではなく、三河弁メガネの呼び寄せ声だったのです。悔しい。返せや私のイルカとの清らかな思い出を。さすがに海で(あれ? 不思議だな)とは、思ってたんですよ。イルカって意外とアニメ声みたいなんだな~、ツルツルしてるアニメ肌だからやっぱり声もそうなるのかな~、とうっすら妙ではあったんです。まさか詐欺だったなんて。
こう書いてるうちに、ハワイのクヒオ大佐の事件までよみがえりました。暖かい国だと人は、それだけで弛緩して騙されやすくなるのかもしれません。王族の末裔でパイロットだと名乗る初代・国際ロマンス詐欺、ジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐。当時から横山やすしさんそっくりな風貌でよくもぬけぬけとやってくれたもんです。詐欺はやっぱりこのぬけぬけって音を人として鳴らせるか否かで決まりますね。
あ、また不愉快がよみがえってきたので話を声にもどします。ドラマなんかを見てると、最近は若い女優さんのお芝居もすごく上手くて、セリフがとても自然です。声も抑えめで低カロリー。舞台女優の独特なあの古くて強い発声法は消えてなくなりつつあるようです。「あめんぼあかいなあえいうえあお!」など、もう最近の劇団員の方も口にしないんでしょうね。あれ、なんかいらなそうでしたもんね。ピンマイクも性能がよくなってるから、声が小さくてもその人の息づかいまで視聴者にしっかり伝わるという。そのうち役者もまず息づかいから練習する時代が来るかもしれません。怒りを抑えた息づかい、驚いた時の息づかい、イルカ詐欺にあった時の息づかい。あ、また怒りがもどってきました。年を取ると怒りの反芻も止まりません。
セリフだけでなく、トイレが和式から洋式に変わってから、特に平成になってから、お腹から声を出せる日本人は少なくなったのではないでしょうか。かくいう私も意外とそうなのですが、割と声が通らないタチ。たとえ同じだけの量を話してたとしても、野沢直子が3倍喋ってる印象が残るはずです。光浦さんも昔私によく言ってましたよね。「清水さんと大久保さんとだいたひかるで、聞きとりにくい三姉妹作ればいいだに」。なめんなよこの野郎。小声で抗議。早く縄とけよ、おい。
昔、ピアノの先生に「鍵盤を強く叩く時、デシベルでなくヘルツを感じて」と言われたセリフが忘れられません。うまいこと言うなあ、でした。声は大小ではなく、強弱。アイナジエンドさんはヘルツ、和田アキ子さんはデシベル、世代によってそんな違いがある気がしないでもないですが、私たちも出そうと思えば声は出る。ただヘルツが三姉妹に足りないだけなんですよね。誰が三姉妹だ馬鹿野郎。小声で合唱。
【シミチコNEWS】今回のツアーグッズ、ホームページでも販売を始めました。よろしくお願いします。
彼方からの手紙

清水ミチコさんと光浦靖子さんが月1回手紙を送りあうリレーエッセイ














