体力も気力も大きく変わる「80歳の壁」。そんな壁を軽やかに超え、現役で活躍し続ける人たちがいます。高齢者医療のカリスマ・和田秀樹が“80歳超えのレジェンド”たちと対談した内容を収録した『80歳の壁を超えた人たち』は、老いへの不安を希望に変える一冊です。
食事、運動、医療との距離感、意欲の保ち方まで、“老けない人”から幸せに長生きする秘訣を引き出した本書から、一部をご紹介します。
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草野仁(くさの・ひとし)
1944年旧満州生まれ、81歳(2026年1月時点)。東京大学文学部社会学科卒業後、NHKに入局。1985年に退局しフリーに。『草野仁のGate J. プラス』(グリーンチャンネル)でMCを務めている。『「伝える」極意 思いを言葉にする30の方法』(SB新書)など著書多数。
惰性で生きると記憶力は衰える。積極的に生きていく
和田 草野さんは記憶力がよいことでも知られます。円周率は今も100桁まで覚えてらっしゃるとか。
草野 はい。円周率だけでなくいろいろとつまらないことを覚えてます。例えば日本の競馬場で一番多くの観客が入ったのは東京競馬場で1990年、19万6517人とか。全然、役に立たないんですけどね(笑)。変なことをちょっとだけ覚えている力は、なんとか保てているようです。
和田 保つと簡単に言いますが、年齢を考えたらすごいことなんですよ。
草野 記憶力を保つ方法のようなものはあるんですか。
和田 最近の脳科学では、記憶が苦手になるのは、2つの原因があると言われます。ひとつは若い頃と比べて復習をしなくなることです。例えば本を読んで「いい話なので覚えておきたい」という場合、本当は2~3回読むと記憶が定着するのに、それをしなくなるんです。
草野 なるほど。
和田 もうひとつは感動する力や好奇心が低下するからです。記憶というのは、感情を伴うことで残りやすくなります。子供の頃の出来事でも、楽しかった思い出や嫌だった経験は覚えていますよね。心が強く揺さぶられた経験は強く記憶に刻まれるのです。
草野 たしかにそうですね。
和田 草野さんはいろんなことに関心を持ち、感動しながら話を聞かれます。それが記憶力のよさにも繫がっているのだと思います。そうやって主体的に生きることは、記憶力だけでなく、元気に長生きする秘訣でもあるんですよ。
草野 認知症の予防にもなりますか?
和田 はい。なると思います。認知症は脳の老化現象なので、それを防ぐ方法はありません。ただし老化現象だから、遅らせることはできるんです。
草野 なるほど。
和田 例えば80歳でボケるところを、頭を使ってたから90歳まで遅らせられたとか。
草野 私と同年代の方にも聞かせたいお話ですね。
和田 最も大事なのは意欲なんですよ。つまんないなあと思いながら生きるのではなく、「今日はこうしてみよう」「あれもやってみよう」と思いながら生きていると、自然に頭も使うでしょ? それが認知症の予防にもなる。毎日を惰性で生きるのではなく、積極的に実験をするようなつもりで生きたらいいと思います。
クヨクヨ悩んでも仕方ない。なんとかなると割り切ってしまえ
和田 引退を考えたことは?
草野 幸いにもまだ体力があるので「もうやめようかな」などとは考えません。でも少し違う仕事にも目を向けてみたいな、という思いは少しあります。
和田 どんなことに興味が?
草野 人材の育成事業とか。そういう形のものができたらいいかなと。
和田 それは素晴らしい。やはり前向きに生きる手本みたいな方ですよね。お話しするだけでこちらまで元気になってきます(笑)。ネガティブになることはないんですか?
草野 うまくいかなかったりした時は、そういう気分になることもありますよ。
和田 意外ですね(笑)。
草野 ハハハ。根が努力をしないタイプだから、せめて気持ちを切り替えようと。
和田 それは大事ですね。
草野 悩みごとを抱えて寝床に入り、ずっとそれを考えて眠れなくなる。そういう人は多いと思います。だけどそれは身体のためにもよくない。考えたって、いい解決策が出るとは限らない。ならば「よし! 明日は今日よりも必ずいい日になる」と思い込んで睡眠に集中する。そうやって割り切ると、自然に深い眠りに入れます。
和田 「悩めば人間は成長する」なんて言う人もいるけど、僕はそう思いません。
草野 同感ですね。
和田 悩みには大きく分けて2種類あります。ひとつは自分で変えられる「建設的な悩み」です。もうひとつは自分では変えられない「建設的でない悩み」です。建設的でない悩みを抱え続ける人は、次第に神経症的な悩みになっていきます。
草野 建設的でない悩みって、具体的には?
和田 例えば過去。これは変えられないですよね。それから、人の気持ちも変えられません。みんな人の気持ちは変えられると信じているんですが「あの人にどんなふうに思われているか」と悩んだところで、変えられないんですよ。それなのに思い悩むからどんどん苦しくなり、心を病んでいってしまう。
草野 なるほど。建設的な悩みとは、どういうものでしょう?
和田 自分で変えられるものです。例えば「明日の服どうしようか」とか「今度こんなことやろう」とか。それは変えられることですよね。悩んでも気分は暗くなりません。将棋の藤井聡太さんが「最善の手はどれか」と悩むのは建設的な悩みです。
草野 私は「割り切り力」が大事だと思っているんですね。
和田 割り切り力?
草野 はい。グチグチと細かく考えすぎると、割り切れずにそのことが頭に引っかかったままの状態になりますよね。
和田 すると、そこに気をとられて、目の前のことに集中できなくなる。
草野 そうです。それはよくないと思うので、私は「ここは切り替えよう」と、即断的に割り切ってしまうんです。
和田 テレビみたいな仕事は、やはり〝出たとこ勝負〟が求められますからね。その力のある人が残っていくのだと思います。この世界で60年近くも活躍されている草野さんは、その最たる人なんでしょうね。
草野 いやいや(笑)。
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80歳の壁を超えて、生き生きと人生を満喫する秘訣を知りたい方は、幻冬舎新書『80歳の壁を超えた人たち』をお読みください。
80歳の壁を超えた人たち

80歳、90歳を過ぎても驚くほど若く、元気に活躍し続けている人がいる。本書では、高齢者医療のカリスマ・和田秀樹が、養老孟司氏、草野仁氏、宮内義彦氏、市川寿猿氏ら〝80歳を超えてなお現役のレジェンド〟から、いつまでも老けない極意を引き出す。「食べるのは肉? 魚?」「医者にはかかる? かからない?」「運動はやっている?」「意欲を持ち続ける秘訣は?」――そんな疑問に答える、実体験から生まれた“幸齢【こうれい】習慣”が満載。不安いっぱいの老後が、幸せに満ちた黄金期へと変わります!













