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裏表がありすぎる人

2026.02.05 公開 ポスト

人当たりがいいのに、突然キレる―「裏表がありすぎる人」が職場で信頼されない真の理由榎本博明

職場の人間関係で、なぜか自分だけが消耗してしまう――その原因の多くは「裏表がありすぎる人」にあります。なぜ裏表のある人は、上司に本質を見抜かれにくく、評価されやすいのか。

彼らの心理メカニズムと行動原理、そして心をすり減らさずに対処するための具体策を示した、『裏表がありすぎる人』。本書から、一部をご紹介します。

*   *   *

人当たりがいい反面、突然キレることがある

いい人と思われたい思いが強い人は、いい人を装うためにホンネを無理やり抑えすぎるところがある。その結果、忍耐が限界に達し、突如感情を爆発させてしまうことがある。

そのような同僚の姿を見て、ギョッとしたという人もいる。

「職場の同僚に、いつも穏やかな笑顔で、だれに対しても好意的な言葉を発する人がいるんです。後輩のミスで迷惑をこうむっても、『だれでもミスはするものだし、私も最初の頃しょっちゅうミスして迷惑かけてたから、気にしないでね』などとやさしい言葉をかける。新人が当たり前のことをしても『すごいじゃない。もうできるようになったのね』などと感心してみせる。そんな姿をいつも見てるから、根っからやさしい人なんだなって思ってたんです」

「ところが、あるとき、お手洗いに入ろうとしたとき、その人が『もう、いい加減にしてよ! いつまでもミスばかりして』と怒鳴ってるのが聞こえてきて、慌ててそっとドアを閉めて立ち去りました。

ほんとはできの悪い後輩や新人に相当頭に来てるんだとわかり、それ以来、やさしい言葉をかけているのを見ると、不気味に感じてしまいます」

いい人と思われるために、腹が立っても、文句を言いたくても、それは抑えて、「気にしないで」と笑顔でやさしい言葉をかける。思っていることをはっきり言わずに、いい人を装う。そのように自分の思いを抑えすぎることによって、かなりのストレスを溜め込んでいる。

思いを吐き出すことができれば気分もスッキリするが、吐き出せないため、ストレスを解消できず、ときに感情コントロールに失敗し、怒りを爆発させて周囲を驚かすこともある。

そんな姿をときどきさらす先輩が恐いという人もいる。

「その先輩は、人当たりがよくて、いつも満面の笑みで接客するので、お客さんから『いつも穏やかでいい人』とみられ人気があるんですけど、従業員の間では気性が激しく突然キレる人として恐れられているんです。

笑顔で接客して戻ってくるなり、洗い場の水溜めの中に食器を乱暴に投げ込んだり、『ふざけるな! 調子に乗りやがって』『何様のつもりだ。偉そうにしやがって』などと吐き捨てるようにつぶやいたりするんです。その姿を初めて見たときは、ほんとにびっくりしました」

ふだん自分の本性を無理やり隠し、抑えつけているため、ストレスが相当溜まっているのだろう。このように、いつも穏やかな人が突然口汚くののしったりするのを見て驚いたという人が少なからずいるが、まさにそのことが無理をしていい人を演じている証拠と言える。

職場では本性を現すことがなくても、何気ない会話を通して、家に帰ってから発散していることがわかるケースもある。

「いつも穏やかで、何があっても文句を言ったり怒ったりすることはなく、仕事のできない人にも励ますようなことばかり言って、けっして厳しいことは言わない同僚がいるんですけど、『昨日はあのできの悪い新人があまりにバカなことばかりするから、ほんとに腹が立って、家に帰ってから娘にずっと愚痴ってた』って言うのを聞いて、ほんとは気性の激しい人なんだなって気づいたんです。うっかりだまされるところでした」

このように、職場ではいい人と思われるために猫をかぶっていても、ちょっとした雑談の中に本性が顔を出すことがある。

感情的ですぐに気分を害する

いい人にみられたいという思いの強い人の特徴として、我慢しすぎるためにストレスを溜め込み、ときにキレることがある、ということは前項で指摘した。

それに加えて、じつは元々感情的で、ちょっとしたことで傷ついたり腹を立てたりしやすいということがある。だからこそ、相手が気分を害していないかと過剰なほどに気にするのである。

いつも人当たりがよくて、何かと目の前の相手をほめるため、穏やかな人かと思うと、こちらが何も感じない場面でも、

「今のあの人の態度、ムカつきませんか」

「何ですか、あの感じの悪い言い方!」

などと毒づくことがあり、じつは気性の激しい人なんだなとわかる。とても感情的で、正当な注意を受けただけでも激高し、表面的には「すみません」と言いつつも、陰で「いちいちうるさいんだから」と愚痴ったりする。

そんな職場の後輩がいて、はじめは穏やかな人だと思っていたが、じつは気性が激しく文句の多い人だとわかったという人もいる。

「いつも愛想がよくて、常に相手をもち上げるようなことを言う職場の後輩が、ちょっと客が無愛想だったり、細かい要求をしたりすると、『こっちが愛想よくしてるのに、あんな態度で、ほんとムカつきますね』『何だかいちいちうるさいことを言う客って、ほんと面倒くさくて嫌ですね』とか言うので、ほんとはすごく感情的で文句の多い人なんだなって思いました。

私からすれば、客も疲れてて愛想の悪いこともあるし、必要な場合は細かな要求をすることもあるし、そんなことでいちいちイライラしたりしないのに、穏やかな仮面の下はよっぽど気性の激しい人なんだなってわかって、気をつけなきゃって思いました」

こうした事例からもわかるように、自分が気分を害しやすい性格であるため、人もちょっとしたことで気分を害するかもしれないと思うあまり、相手が気分を害さないように非常に気をつかうのである。

つまり、相手が気分を害さないか過度に気にするのは、自分自身が人の言葉や態度にすぐにムカついたりするからなのだ。

ちょっとした言葉や態度に傷つき、ムカつく性格であるからこそ、相手が気分を害さないかが気になって仕方がない。だから注意すべきことも注意できず、腹が立ってもホンネを抑えて笑顔でやさしい言葉をかけたりするのである。

周囲から見抜かれていることに気づかない

陰で仕事のできない人物のことを嘆き、こき下ろしているのに、本人の前では、そんな様子はおくびにも出さない。

それどころか、その仕事のできない人物をほめちぎり、本人がミスの多さを気にすると「全然気にすることないよ」などと心にもないことを言う。陰では「あの子、どんだけ不注意なんだ。いい加減にしてほしいよ。一緒に仕事してるとほんとイライラする」などと言っているのに、平気で真逆のことを言えてしまうのだ。

そんな矛盾する発言をいろいろな場面でしているのだから、日頃から接している周囲のだれもが、その裏表の激しさに気づいている。そうなると、当然ながら自分に対する態度にも裏があるのではないかと気になる。

そして、自分の前ではいい顔をしてるけど、陰では悪口を言われてるのではないかと、だれもが疑心暗鬼になる。裏表の使い分けの激しい人物、油断ならない人物だということは、周囲のだれもが知っており、表の顔を信用するわけにはいかないと警戒している。つまり、周囲のだれからも信頼されていない。

それにもかかわらず、そうしたスタンスを変えないのは、周囲から見抜かれていることにまったく気づいていないからだ。ふつうは周囲から信頼されず警戒されているのを何となく気づくものだし、自分が裏表を使い分ける様子を見られれば気まずい気持ちになるものだが、そのような感受性が乏しい。

つまり、このように堂々と裏表の使い分けをする人物には、「自己モニタリング」の習慣が欠如けつじょしているのだ。

自己モニタリングというのは、メタ認知の基本で、自分の状態をモニターすることである。

仕事であれば、自分の仕事のやり方を振り返り、その特徴を把握したり、まずい点があるかどうかをチェックしたりすることを指す。人間関係であれば、自分の言動やそれに対する周囲の反応をチェックすることを指す。

人間関係で失敗しないためには、自分の言動とそれに対する相手、あるいは周囲の反応をモニターすることが必要となる。

それができていないと、場違いなことを言ったり、人を傷つけるような無神経なことやずうずうしいことを平気で言ったりして、周囲から信頼されず、敬遠されてしまう。

いい人志向の裏表人間は、人からどうみられるかを過度に気にしており、相手に好印象を与えるために気持ちをくすぐるのは得意である。しかし、わざとらしくもち上げている自分の姿を他人がどうみているかについては、なぜか無自覚である。その部分の自己モニタリングが欠けているため、裏表を使い分けていることが周囲にバレバレなのに、その事実に気づかないのである。

結局のところ、「よく思われたい」という過剰な意識が、見苦しい裏表の使い分けにつながり、かえって信頼を損なうことになってしまうのだ。

*   *   *

人を見る目を養い、日々のストレスを軽くして心地よく暮らしたい方は、幻冬舎新書『裏表がありすぎる人』をお読みください。

関連書籍

榎本博明『裏表がありすぎる人』

職場の人間関係は、ほんとうに面倒だ。 なかでも厄介なのが、裏表の激しい人の存在である。 そうした人物は相手によって態度を使い分け、本性を見せる人と見せない人を選ぶため、被害の実態が周囲に伝わりにくい。 しかも皮肉なことに、そういう人ほど上には気に入られ、出世する。 そんな人物が身近にいると、ストレスが溜まる一方で、心がすり減ってしまう。 そこで本書では「裏表がありすぎる人」の心理メカニズムと行動原理を読み解き、彼らへの対処法を提示する。 人を見る目が一段と深まり、神経の消耗が激減する一冊。

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裏表がありすぎる人

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榎本博明

心理学博士。1955年、東京都生まれ。東京大学教育心理学科卒業。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、大阪大学大学院助教授などを歴任。現在、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした企業研修・教育講演などを行う。 主な著書に、『病的に自分が好きな人』(幻冬舎新書)、『薄っぺらいのに自信満々な人』『「上から目線」の構造』(日経プレミアシリーズ)、『ほめると子どもはダメになる』(新潮新書)、『「過剰反応」社会の悪夢』(角川新書)、『モチベーションの新法則』(日経文庫)、『<自分らしさ>って何だろう?』(ちくまプリマー新書)などがある。

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