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カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

2026.01.28 公開 ポスト

推しが最後に一般人になったとしても「推さない」ことは出来ない~リアリティ番組にはまった日記~カレー沢薫

去年からリアリティ番組をいろいろと見ている。

リアリティ番組と言えば恋愛リアリティであり、前回、恋愛経験が低い者同士の恋愛リアリティなら安心して見られるのではないかという話をしたが、これは逆である。

恋愛強者が集う恋愛リアリティは、私から見ると同じ人間同士の戦いに見えないのだ。

自分と同じ運動不足の中年が集められ殴り合いを強要されているのは見ていられないが、オリュンポス12神同士の闘いなら別次元すぎて落ちついて見られるのである。

だがどちらにしても、私は恋愛リアリティより、サバイバル系リアリティ番組の方が好きである。

サバイバル番組とは、何かに自信ニキやネキたちが集い、そろそろ頂点を決めようや、となる番組だ。

競う内容は、頭脳や料理、そして「今からデカい岩を担いで耐えてください」と言われる身体能力バトルまで様々だ。

しかし、最終的に勝ち残るのは1人にしても、途中で絶対に「チーム戦」が組み込まれており、どれだけ頭が良い料理上手の体力ゴリラでも、コミュ力がない奴は追放される、というキツいメッセージ性を感じる番組構成になっている。

そして、あらゆるジャンルのサバイバル番組を見尽くした末、私が今たどり着いているのはボーイズグループのオーディション番組だ。

正直自分でもここに流れ着くとは思わなかった。

しかしアイドル性に自信ありの若い男子が山のように集まって、最終的に勝ち残った数名のみがデビューするという構成はこれ以上なくサバイバルである。

それにデカい岩を担ぐことでその場の勝敗は決まるかもしれないが、それがその後の人生にまで影響するかは未知数だ。

それに対しオーディション番組はその結果で人生が大きく変わる、むしろそこから始まると言っても過言ではない、やる方も見る方も熱くならざるをえない。

そういえば数年前、友人がオーディション番組の出場者にハマり、推しに投票してもらうべく、職場で選挙活動をしたと言っていた。

その後惜しくもデビューを逃し、推しが「一般人」と化したため、推すことすらできないと言っていた。

当時私はその話を聞きながらドリンクバーをゴクゴクいっていたが、紛れもない「因果応報」を感じる。

幸い私が見ているのはかつて放送されていたオーディション番組であり、すでに結果が出ているので、応援や投票をするものでもない。

それに、他人に興味が薄いコミュ症特有の「人の顏と名前を覚えるのが苦手」に加え、一定を越えたイケメンは逆に見分けがつかなくなるイケメン非対応網膜搭載のせいで、みんなの顔と名前が一致し出すころには最終回が近かったりするのだ。

それが何を引き起こすかというと、私が早くから顔と名前を一致させ推しにしてしまう出場者は、誰が見てもイケメンな正統派イケメンではなく、クセのある特徴的な顔立ち、または地味だが苦労人で努力家など、エピの方が目立っている出場者なのだ。

これは良くない傾向である。

そういう出場者は、割といいところまではいくし、なんならファイナルまで行く。

しかし、あと一歩力及ばず、最終的に一般人と化してしまいがちなのだ。

これは漫画で言えば、早くから登場し終盤まで生き残るが最終決戦で死ぬキャラばかり好きになってしまうのに等しい。

しかし、推しの好きなところを問われたら「実力はあるけど最後の最後で力及ばないところ」としか言いようがないのでどうしようもない、「こいつは最後まで生きてるからこいつを推せ」と言われても推せないのと同じだ。

また、私が名前と顔をなかなか一致させられないのは海外の番組ばかり見ているからだと思う。

オーディション番組に限らずリアリティ番組は大体海外の物を見ている。

これは日本の番組が面白くないからではなく、翻訳を挟むことにより出場者の言動がマイルドに感じられるからだ。

リアリティ番組はリアルという体なので、出演者の振る舞いが炎上してしまうこともある。だが、あくまで番組であり、演出や編集でそう見えてしまっているだけかもしれないので、それに本気で腹を立てるのは危険なことである。

それが海外番組になると、ケンカをしているようなシーンでも字幕が「君は何がいいたいんだ?」「プライドが傷つきました」など、絶妙な硬さを残しているため、こちらも「二人とも落ち着いてください」という気持ちで見られる。

つまり、日本の番組は感情移入しすぎそうで怖いので見ていない。

今のところ日本のオーディション番組は見ていないのだが、この調子だと見てしまいそうな気もするし、また最終的に一般人になりそうな人を推してしまいそうな気もする。

だが「こいつは最後まで残ってデビューするからこいつを推せ」と言われてもそれは無理なのである。

関連書籍

カレー沢薫『人生で大事なことはみんなガチャから学んだ』

引きこもり漫画家の唯一の楽しみはソシャゲのガチャ。推しキャラ「へし切長谷部」「土方歳三」を出そうと今日も金をひねり出すが、当然足りないのでババア殿にもらった10万円を突っ込むかどうか悩む日々。と、ただのオタク話かと思いきや、廃課金ライフを通して夫婦や人生の妙も見えてきた。くだらないけど意外と深い抱腹絶倒コラム。

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カレー沢薫

漫画家。エッセイスト。「コミック・モーニング」連載のネコ漫画『クレムリン』(全7巻・モーニングKC)でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『もっと負ける技術』『負ける言葉365』(ともに講談社文庫)、『ブスの本懐』(太田出版)がある。

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