トランプ・ショックから初の女性首相就任まで、政治経済が目まぐるしく動いた2025年。お金や投資の面ではどのような展開があったのでしょうか。人気ブロガーであり、今年3月に『ふつうの会社員が投資の勉強をしてみたら資産が2億円になった話』が発売になった著者の斗比主閲子さんに、今年の総括、そして来年の投資環境を予測してもらいました。
※本コラムの原稿料、
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こんにちは、斗比主閲子と申します。
今年の3月に『ふつうの会社員が投資の勉強をしてみたら資産が2億円になった話』というタイトルの本を出版しました。私が会社員として働き始めてから、独力で金融資産を2億円まで増やした経緯を紹介したものです。
早いもので、本を出版してからもう9ヶ月が過ぎました。今年は(今年も?)大きな出来事が目白押しでしたよね。
私が一番に思い出すのは、今年1月にアメリカ大統領に就任したドナルド・トランプが、トランプ関税を全世界の国に適用させると言って、世界経済が大混乱したことです。
トランプ・ショックで世界中で株価が暴落!
私の本が発売されたのはその真っ只中で、3月から4月にかけて世界中の株式市場で、株価が大きく下落しました。例えば、日経平均の短期間で20%程度値下がりしました。
現金な話をすると、「本を出版するには、いまいちの時期だったな」と頭の片隅をかすめたのは事実です。だって、株価が右肩上がりで「投資は儲かる!」と、みんなが思ってるときのほうが、私が書いたような投資本は売れるはずですから。
一方で、「この株価の低迷は一過性で、せいぜい続いて半年から一年ぐらいだろうな」「本では長期投資の重要性を訴えていたから、本の内容そのものは価値を失わないはず」とも考えていました。
私の予想が当たっていたか答え合わせをすると、世界中の株式市場で株価が下がり始めたのが3月で、4月初旬に年初最安値になったのに対し、7月にはトランプ関税で株価が下がる前の水準に戻っていました。実質、株価の低迷期間は4ヶ月間程度だったということです。
さすがにここまで早いとは想定していませんでしたが、過去にも、一旦下がった株価が時間を空けて上昇する現象は起きています。例えば、2008年の世界金融危機(日本ではリーマン・ショックと呼ばれるもの)でも、株価は直前の最高値に2年かけて戻っています。記憶に新しい、2020年コロナ・ショックも1年以内でもとの水準に戻っています。
株価が元に戻る期間は、基本的には、その現象が実体経済に与える影響の大きさに連動するため、トランプ・ショックでの株価の低迷が限定的だったのは、結果的にトランプ関税の影響が限定的だと捉えられたのだと思います。象徴的なのが、5月にTACO(TRUMP ALWAYS CHICKENS OUTの略)という言葉が金融業界で流行ったことです。トランプが関税で脅しをしてもすぐに引き下がるという“悪口”ですが、実際この頃から関税政策の不透明さは薄れていき、株価も上昇しました。
ただ、今年新NISAが登場し、初めて株式投資をし始めた人は物凄く混乱したはずです。新NISAでは最大年間360万円を投資できるとして、1月初めに360万円をオルカン(正式名称:eMAXIS Slim 全世界株式)に一括投資していた場合、今年4月の一番下がったときでは約70万円の評価損が発生していたはずですから。
70万円は率にすると、おおよそ-20%程度です。最近は金利が上がっているとしても、高くて金利1%ですから、4か月の保有期間で資産がこれだけ目減りしたら、投資が怖くなっても仕方ありません。
投資をするのが怖くなったら、どうしたらいい?
そんな、株価が低迷したときの心の持ちようを私の本の中では紹介しています。投資本の中ではちょっと珍しい話ですね。詳しくはぜひ本を買って読んでいただければと思いますが、一番大切なことは、なぜ投資をしているかを思い出すことになります。
人によって投資をする理由はそれぞれだとしても、来年や再来年にすぐにお金が増えて欲しくて投資がしている人は限定的でしょう。老後2000万円問題が紛糾したように、10年後、20年後といった、長期の単位で、老後の資金を確保するのが目的という人が多いはず。
長期的に資産を増やすことが目的だとすれば、単年の間の株価の浮き沈みを心配しても意味がありません。だって、今、まさに現金が欲しいわけではないですからね。「私がお金が必要なのは、10年後。短期間での株価の変動は気にしないでおこう」と、放っておいて構わないのです。
ただ、大きな金額を投資しておいて、それが減った増えたで一喜一憂しないようにするのは難しいのも事実です。
金額の増減が気になって仕事や家事も手が付かないということなら、次にやることは、投資金額と投資先の見直しです。
私は半年ぐらい無職でも生活できるだけの資金を確保した上で、それ以外の余った現金を投資するのが良いと考えていますが、投資で一喜一憂している人は、投資金額が大きすぎる可能性があります。
投資する金額が減れば将来得られる利益も減りますが、仕事に支障を来すようなら、別に投資額を減らしたっていいんです。また、投資先も株式だけではなく、値動きの少ない債券にしてもいい。一人一人で、投資をすることに恐れを抱くレベルは違いますから、みんなが同じスタイルで投資をする必要はありません。
なお、私は株価が大きく下がったときは、紅茶とケーキを嗜むようにしています。これが、私がもっとも落ち着く方法だからです。自分を落ち着けられれば何でもいいので、皆さんも好きなやり方で、株価の上下動のストレスを減らす方法を確立されるといいと思います。
ちなみに、今年の株価の暴落時には私は紅茶とケーキは楽しみませんでした。過去も似たような暴落を経験してきているし、繰り返しですが、一年以内で元に戻ると考えていたからです。
代わりに、200万円を追加投資しました。本の中で紹介した通り、私はタイミング投資(安い時に買って、高い時に売る)は現実的ではないと考えているのですが、20年以上長く投資をしていると、投資に慣れて、つまらなくなってしまうんですよね。
なので、刺激を求めて下がったところで投資をしました。皆さんには推奨はしません。
今年一年も、やはり株価は物価・賃金以上に上昇
本の中では、賃金上昇率や物価上昇率より、株価の成長率が上回ると紹介しました。
これは、フランスの経済学者のトマ・ピケティによるr> g(資本収益率は経済成長率を上回るもの)で一般にも知られるようになったと思いますが、こちらも振り返って答え合わせをすると、今年も株価は、賃金や物価の伸び以上に成長していました。
色々な統計データがあるものの、日本国内の今年の賃金上昇率は5-6%程度、物価の上昇率は3%程度だったようです。一方で、株価の方は、日経平均は年初から25%以上も値上がりしています。
日経平均は指数の特殊性があるので、もう一つの国内の代表的な株式指数であるTOPIXの上げ幅を紹介すると、こちらも年初から20%以上値上がりしています。
ちょっと信じられない上げ幅です。
上場企業は日本企業の中でも選りすぐりの企業ですから、インフレ以上の値上げができ、従業員の賃上げをしても十分に利益を増やせることができるとしても、さすがに株価は値上がりしすぎです。だいたい、日本の株式投資での期待リターンは年で6-8%程度ですから。10%を超えても高いのに、20%とは異次元のレベルです。
背景にはAI投資の加速、高市首相の経済政策への期待があったようです。高市さんは、成長分野への投資と、日本の輸出企業のための円安を政策上打ち出していましたから、理屈上は株価が上がるのは理解できるものの、正式に首相に就任したのは10月21日ですから、ちょっと期待を先取りしすぎている気もします。
今年は世界的にも株式市場は絶好調で、オルカンも今年一年で約20%値上がりしました。途中でトランプ・ショックはあったにせよ、後から振り返ってみると、今年の株式市場は絶好調だったと言えるでしょう。
一方、銀行預金は上昇傾向といっても、大手都市銀行で0.3%程度、一部のネット銀行で一年定期預金の金利が1%という状況です。これでは、物価の上昇率を下回っているので、銀行預金をしている限り、資産は相対的に目減りをしていることになります。
来年も株高は続く……? こどもNISAは使うべき……?
今年一年は投資が絶好調な年だったとして、来年はどうなるでしょうか?
ここで私が、「来年は世界経済は引き続き好調で、インフレも続くから、投資をするのがお勧め!」なんて断言できると格好いいのですが、残念ながら、「まったく、分かりません!」が私の答えになります。
だって、去年の2024年は、オルカンは30%値上がりし、日経平均も20%値上がりしているんですよ。2025年も同じ水準で値上がりすることなんて、私は去年時点でまったく予想できませんでした。「トランプが大統領になりそうで、経済が低迷しそうで不安だな」と何となく考えていたぐらいです。来年の世界経済の不安要素は中国経済でしょうが、それもどう株価に影響を与えるか、私には分かりません。
株価が短期的にどう動くかはさっぱり分からないものの、基本的には物価や賃金以上に株価が上昇するのは長期的な傾向としては続くと考えています。r> gですね。
だから、これまでの約20年間と同様に、来年も私は淡々と投資を継続するはずです。だって、別に来年に大金が必要なわけじゃないですから。長期投資をしている以上、単年度の予想は私は興味がないし、分からないというのが答えになります。
来年注目している制度はあります。「こどもNISA」です。
現在の「新NISA」を未成年(こども)にも拡大し、投資を出来るようにするものです。記事執筆時点で制度導入は確定していませんが、我が家は恐らく利用するはずです。なぜなら、合法的な相続税の節税対策になるからです。
ただ、一般家庭には「こどもNISA」はお勧めはしません。なぜなら、子どもの資産を増やすよりも、親の資産を増やす方が優先ですから。来年も、「新NISA」の年間360万円の投資枠×夫婦分は親が投資できるわけで、更に子どもの分も投資できる余力がある家庭は限定的でしょう。
はっきり言って、「こどもNISA」はお金持ち向けの制度です。我が家としては、ふるさと納税と同じく、「節税できる合法的な制度が存在しているなら、使わない理由がない」という観点で、消極的に利用するはずです。
資産2億円を超えても、楽しく働いています!
最後の答え合わせとして、現在の我が家の金融資産の状況を紹介します。
我が家が投資を継続していて、今年は世界の株式市場が好調だったということで、説明不要でしょうが、我が家の金融資産は本を執筆していた時点の2億円から大きく増えました。
投資には種銭が必要と言われますが、大きな金額を投資していると雪だるま式に資産が増えて行くというのは、特に実感した一年でした。
なお、本の印税の影響は限定的です。本があまり売れていないということではなく、本を出版したことでの我が家への収入の増加は、投資した資産の増加に比べれば大きくないんですよね。
こんなペースで資産が増えてくると、FIREすることも頭の片隅に浮かぶことはありますが、まだ仕事は辞めていません。楽しく働いています。
まだまだ子どもの学費が不透明なところもありますし、「いざとなって辞めたらいい」と思っていると、大胆に仕事ができて、ストレスも大きくないんですよね。
最近はFIREがブームになっているものの、お金があれば必ず仕事を辞めた方がいいというわけではないですし、楽しく仕事をするために資産を増やすというのも考え方としてはあってもいいと思います。
以上、本を書いてからの今年一年の振り返りでした。私の本が少しでも参考になり、皆さんの生活が豊かになることを願っています。
ふつうの会社員が投資の勉強をしてみたら資産が2億円になった話

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