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君が面会に来たあとで

2025.11.30 公開 ポスト

ホームレスは2割しかいない!? 炊き出し現場にZ李が見た現代社会の闇とは?Z李

SNS総フォロワー100万人超のインフルエンサーであり作家のZ李さんの新刊『君が面会に来たあとで』が11月19日に発売されました。本書は、歌舞伎町を生きる人々の葛藤や、人情味あふれる人間模様などを恋愛、ホラー、SFなど様々なタッチで描いたショートショート集。本書の発売を記念して、日本各地の炊き出しの現場を取材した『ルポ路上メシ』(双葉社)が発売されたばかりの、ルポライター國友公司さんとの対談、後編をお届けします。2人の共通の話題「炊き出し」から話は膨らみ……。(前編はこちら

*   *   *

炊き出し現場で感じた、現代社会の闇

國友公司(以下國友):新宿租界(Z李さん主催の団体)さんの炊き出し活動って、代々木でもやっているじゃないですか? 実は炊き出し界隈でライフハックが出回っていたんです。

生活保護の人たちは、都営電車と都営バスを無料で乗ることができる「都営パス」を持ってるじゃないですか。都庁だと1人1回しかもらえないけど、代々木公園にはその余りが回ってくるので、代々木公園に行けば、2回もらえるかもしれない……っていう情報が回っていて、あえてパスを使って、代々木の方まで行っている人とかもいましたね。

並んでいる人たちは、生活保護の人たちが多いですか?

Z李:アンケートを取っているんですけど、毎回来るホームレスは全体の20%ぐらい。あとは、保護はもらってないと自称する人が40%。他はネカフェ難民みたいな人たちですね。

國友:僕も『ルポ路上メシ』の取材で調べたんですが、やっぱりそれぐらいですよね。

Z李:保護問題はすごくセンシティブ。生活保護者とホームレスの抗争が、7年くらいの間で2、3回あったんですよ。もう何年もやっているので、今は来る人数が大体分かるんで、フードロスのないようにできているんですけど、その頃はまだ「途中でなくなっちゃった」なんていうことが、頻発する時期だったんです。

「保護のやつらが先に食って、ホームレスで本当にお腹が空いてる俺たちの分がないなんて、本末転倒じゃないか」ってホームレスの人たちが怒って、まあまあ小綺麗で、バッグなんかを持ってる、生活保護っぽい見た目の人に、「返せ」って掴みかかったんです。そうしたら、お互いに加勢が来て、4対4のバトルになっちゃった。

國友:その現場、行きたかったですね。

Z李:たしか、炊き出し20何回目ぐらいの時、海鮮丼をやったんですが、フリーWi-Fiを使っているホームレスとか生活保護者がたくさん来てしまって、その時も途中でなくなってしまったんです。そうしたらまた喧嘩をしだして、加勢が来て……。

その様子を見て、「もらえなかった者の憎しみってすごいんだな」って思いました。

現代社会にも通ずるものがありますよね。株高だとか、一部の人に富が 一極集中してるような状況があるじゃないですか。それに対して、何の恩恵も受けられない人の方が多数派。

その人たちが、ホームレスたちみたいに憎しみを持つと「そうだ、中国人が生活保護をもらっているからいけないんだ」とか「自民党が悪いんだ」ってなってしまうんです。

参政党が躍進したのもそうですよね。“日本人ファースト”って言われると、「自分のことを 1 番に考えてくれてる人がいた」って思うんです。「なんであんたが困ってるか、それは外国人のせいだよ」って言われると、そうなんだってなったりね。

新宿区のネズミ事情まで調べ上げる探究心が創作の原点

國友:昔、歌舞伎町で 60cmのネズミを探せっていうような企画があって、AbemaTV のディレクターに駆り出されて、僕探しに行ったんですよ。結構大変でしたね。

Z李:写真がなかなか撮れないんですけど、あれは多分本当にいるんですよね。最近、下水を通ってくるのか、たぬきもいればアライグマもいます。

國友:えっ、歌舞伎町にですか? 

Z李:そうですね。ハクビシンとかめっちゃ増えてますね。

川沿いに住む「ヌートリア」っていうネズミがいるんですけど、ヌートリアは、東南アジアの人の間でご馳走になってたりしてるんですよね。だから、ヌートリアを誰かが増やしたんじゃないか? っていう説もあるんですよ。

ハクビシンがいたりする時代だから、本当かもしれない。

ヌートリア 44282369

國友:新宿租界さんが炊き出ししている場所あるじゃないですか? 『ルポ路上生活』の取材でそこに寝ている時に、ホームレスの人たちと話してたんですけど。

Z李:あっ、あそこで潜入取材をしてたんですね。

國友:そうなんです。ふれあい通りとか、そのもう一個隣の三井ビルディングとか小田急第一生命の通りに、ずっといたんです。

あの辺って、なぜかネズミがいないんですよ。それはなんでだろうって考えたら、みんな歌舞伎町に吸い寄せられてるのかなって。

Z李:あれがなんでかっていうと、新宿西口のほうから小滝橋通りをまっすぐ行くと、下水処理場があるんですよ。右が高田馬場、左が板橋っていう立地の処理場に向かって、歌舞伎町のものも、西新宿とか、途中ら辺の坂の上のものも流れてくんです。

つまり、都庁とかがある奥の方に行けば行くほど、食べものが集まんないんですよ。だから、ネズミがいない。

それに実は、下水に最終的にいろんな食べものが集まるのは、歌舞伎町よりも高田馬場の方なんですよね。ネズミもそこら辺の方が多い気がします。

國友:初めて聞きました。地下から考えるというのは初めてです。

Z李:俺こういうの、つい調べちゃうんですよね。

創作を支える三要素――ギャンブル、音、匂い

國友:僕はギャンブル全然わからないんですけど、この本の中で、ギャンブルの話はすごい力が入ってますよね。

Z李:やっぱり、ギャンブルのオンラインサロンをやっているくらいだから、好きなんですよね。使ったらいけないお金を使ったりとか、絶対に勝たないといけないとか、ギャンブルをやっている時って、人生の局面みたいなことも多いんです。そういった時の、人間の情念みたいなのを描きたい。沢木耕太郎さんの『波の音が消えるまで』(新潮社)とか、好きですね。

國友:沢木さん、『深夜特急』(新潮社)のイメージだったんですが、ギャンブル小説も書かれているんですね。

Z李:ギャンブルをやっていると、悪い時には、弱り目に祟り目みたいなこともあるし、「これをきっかけに変わって」なんてよく聞くけど、一発当たっても、また落っこっちゃったりとか、運の流れってものがあるんです。

タカちゃんが、バカラ屋に行って100万獲って、そこからピークを目指さないで持って帰るっていう話(「プレイヤーオープン」)があるんですけど、これはなかなかできないことなんです。そういったことが分かって、刺さるような人たちにしっかりと刺さればいいやっていう気持ちがギャンブル作品を書く時にはあるんです。「吉宗」のスロットの話(「日曜日の鷹狩り」)とかもそのひとつです。

カジノでチップを全ベットするイメージ 114804675

俺の本には、結構コアなファンが多いんですよね。100人中90人が分からなくても、10人ぐらい、強烈に刺さる人がいる。「吉宗」の話は、“ボーナス中”の歌の歌詞を引用しているんですけど、変な話、こんなのは、分からない人はなんとも思わない。

でも、この歌詞を読むだけで泣いちゃう人とかいるんですよ。別に「吉宗」のことで涙が出るわけじゃない。あの時、あの人に悪いことをしたなとか、そういったことを思い出す作用が、音楽にはあるんですよね。

國友:自分は小さい時、家がゲーム禁止でした。だから、ショッピングモールの中にあるちっちゃいゲームセンターが楽しみだったんです。そこあるUFOキャッチャーから、ドリカムの中村(正人)さんが作ってる「ソニック」のBGMがずっと流れてたんですよ。あれを聴くと当時を思い出すので、今でもたまに聞いちゃうんですよね。

Z李:わかります。俺は小室世代だったんですけど、やっぱり安室ちゃんの古い曲とか聴くと、昔を思い出しますね。

あと、雨が降った後のコンクリートの匂いがした時。何かを思い出す時と、何も思い出さない時があるんですよ。これは仮説なんですけど、コンクリートの隙間に堆積してた粉塵の中には、いろんな配分があるじゃないですか。2ストロークのエンジンオイル20%で、みたいな。これが多分、20年ぐらい前と同じような分量のやつが臭ってくる時に、いろいろ思い出したりとかするんですよ。

國友:そうかもしれないです。東南アジアでも、ホーチミンとバンコクでは、スコールの時の匂いが違ったりしますよね。

Z李:そんなくだらないことばかりずっと考えてるんです。だから、いろんなことが書けるのかもしれませんね。

國友:僕も取材意欲が湧いてきました。本日はありがとうございました。

*  *  *

Z李さんの新刊『君が面会に来たあとで』、國友公司さんの新刊『ルポ路上メシ』(双葉社)、どちらもぜひチェックしてみてください!

関連書籍

Z李『君が面会に来たあとで』

どこからが虚構で、どこからが真実? 言葉の売人、Z李が紡ぐ30のショートショート 立ちんぼから裏スロ店員、ホームレスにキャバ嬢ホスト、公務員からヤクザ、客引きのナイジェリア人にゴミ置き場から飛び出したネズミまで。 繁華街で蠢く人々の日常を多彩なタッチで描く、東京拘置所差し入れ本ランキング上位確定の暇つぶし短編集!

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君が面会に来たあとで

Z李、初のショートショート連載。立ちんぼから裏スロ店員、ホームレスにキャバ嬢ホスト、公務員からヤクザ、客引きのナイジェリア人からゴミ置き場から飛び出したネズミまで……。繁華街で蠢く人々の日常を多彩なタッチで描く、東京拘置所差し入れ本ランキング上位確定の暇つぶし短編集、高設定イベント開催中。

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Z李

座右の銘は「給我一個機会,譲我再一次証明自己」。経歴不詳、表と裏の境界線上にいるインフルエンサー。X(旧Twitter)のフォロワー約90万人超。週刊SPA!にて2021年より2年にわたり、長編小説『飛鳥クリニックは今日も雨』を連載、2023年に書籍化。2025年4月17日より、配信サイトLeminoにてドラマ化される。

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