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あぁ、だから一人はいやなんだ。

2025.11.15 公開 ポスト

第258回 バック・トゥ・ザ・フューチャーいとうあさこ

80年代。内容はもちろんですが、その“音楽”に夢中になった映画がたくさんあった。『フラッシュダンス』『フットルース』『ゴーストバスターズ』『ブルース・ブラザーズ』『トップガン』などなど、挙げだしたらキリがない。今でもこれらの曲がかかれば、時に踊り出し、時に歌い出し、その興奮が止まらなくなる。そんな中の一本。

 

1985年、私が中学三年生の時の映画、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。パート3まで作られた名作中の名作。今年はその最初の映画公開から40周年という記念の年。わたくし、おっきな2つの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を“浴び”ました。

1つは劇団四季の『ミュージカル バック・トゥ・ザ・フューチャー』。今年の春、竹芝で開幕した。最初聞いた時は正直、ただただ「どうなる!?」でした。だってこれだけ世界的に有名で人気で、言ってしまえばがっつり“出来上がっている”。そこに“ミュージカル”と言う事は歌をプラスするわけで。もうあれだけすごい音楽たちがあるのに、新曲を!? と言うかそもそもあの世界って舞台で再現できるの!? って思ってしまいました。結果は、“そんなこと考えていた自分をぶん殴りたい”でした。いやねぇ、めっっっっっちゃくちゃよかったんです、ええ。もうね、劇場入ったとこから、いや、劇場入る前からだ。劇場に向かう人たちを見ると、マーティのような赤いダウンベストにデニムを着ている方や、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のあの見るだけで興奮しちゃう、タイトルロゴのグッズだらけの人など、とにかくみんながめっちゃワクワクしてるのがガンガン伝わってくる。もうそれだけでこっちもワクワク。只今絶賛上演中だから詳しくは書けませんが、客席についたら「おー」、始まったら「わー」、最後のデロリアンに「ぎゃー」。感嘆詞で書くと、こんな感じ。もうとにかく「ブラボー!」こんな世界があったのか、と。本当に本当に素晴らしかったです。

もう一つは『バック・トゥ・ザ・フューチャーinコンサート』。これまた、こんな世界があったのかパート2、です。この事を周りに話すと「最近そういうのあるよね」的な反応だったので、ご存じの方も多いかもですが、私はまったくもって初めての世界。要は大画面で映画を流し、劇中の音楽はフルオーケストラが生で演奏する、というもの。会場は東京国際フォーラム。私は音楽も楽しもうとあえて字幕ではなく、日本語吹き替えの回をチョイス。マーティ・三ツ矢雄二さん、ドク・穂積隆信さん、という私としてはもう“ザ”なペアのお声。会場に入ると舞台の上では新日本フィルハーモニー交響楽団の方々がチューニング中。時間が来て、客電が消える。そこへ拍手で迎えられ、指揮者のニコラス・バック氏が登場。その空気感、本当にクラシックのコンサートに来たかのよう。そして、スタート。もうね、1音目からやられました。映画の前の、あれは映画会社の紹介VTRって言うんですかね。東映の波ザッパーン、みたいなヤツ。あそこの音楽からオーケストラが演奏。そのリンク具合の物凄さと音の迫力に、気づいたら、涙。後ろの席の男の子も、思わずもれちゃった感じの「すげぇー」の声。いやぁ、あれはホントどうやって合わせているんだろう。タイミングもスピードも、信じられないくらい映画と音楽が完全シンクロしているし、そもそも映画から音楽だけ消すってどうやるの? あんまり凄すぎて、そして自然すぎて、最初泣いたくせに、途中からオーケストラの上にあるスクリーンに集中し過ぎて、生演奏だってことを忘れちゃった。ちなみに主題歌であるヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「The Power of Love」のような歌詞があるものはそのまま流れました。最後はちゃんと“コンサート”で、映画が終わっても拍手が鳴りやまずアンコール。再度指揮者が出てきて、1曲演奏してくれた。もう一度言わせてください。「ブラボー!」

それにしてもオーケストラを聞いた後って、なーんか“高尚”感、みたいなものが自分の中に漂っちゃいましてね。場所も東京国際フォーラムだったから一緒に行った友人と「じゃあザギン(銀座)のレストランでお食事でもいただいちゃいます? オホホホホ」なんて言いながら銀座方面へ。ただね、昼公演だったもので、この時15時前くらい。ザギンのお店たちはこぞってランチが終わって、夜の準備に入る感じで閉まっている。カフェは開いていたのですが、公演の興奮もあってか、二人してめっちゃお腹空いていたので、“ちゃんと”食べたい。ただこの日はまあまあな雨だったので、しばらくブラブラ探しましたが結局、百貨店の食堂に行く事に。そんなわけで腹ペコの為、がっつりランチを頼みつつ、“グラスワイン”を注文して、自分の中の“高尚”欲を満たす。それでも興奮冷めやらぬ我々。しかも滅多に来ない“銀座”で“オーケストラ”ですから。「ホテルノバーニ行カナイ?」慣れないワードに固くなってしまったのは否めないですが我ら、いざホテルのバーへ。もうテンションだけで向かってしまいましたが、バーの前に来て気づく自分の恰好の雑さ。もう超いつも通り。スウェットのズボンにトレーナー。足は裸足で爪先のあいたサンダル。まあ一応言っておきますが、その中でも小綺麗方面のそれら、ではあったんですよ。でもスウェットはスウェット。まず瞬時に信じられないほど姿勢を正した。もうこれ以上ないほどの姿勢の良さ。更に顔もちゃんとまっすぐ前を見る。“これで間違っていないんだ”という意思を表現。そして必殺技。つま先の指を折り曲げて、サンダルの先から指が見えないように。まるでつま先のあいていない靴を履いているかのように偽装。最後は“ちゃんとした格好”の友人が前で、私は後ろにほんのり隠れる。作戦、成功。無事に“ホテルのバー”に入り、しゃれたカクテルなんぞをいただいた。

そんな『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が12月に限定上映されるニュースも目にした。もうこうなったら絶対に観に行きたいな。それにしても40年経ってもまだこれだけ興奮させてくれる映画。とんでもないぜ。

 

【本日の乾杯】今年度も冬キャンプスタート。スーパーにあった塩だれのラム。鉄のフライパンで葱と共に焼いて、最後キャベツの千切りを添える。バカ美味いとはこのこと、ってくらい美味しかった。次回もこりゃマストだな。

関連書籍

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。3』

海への恐怖を感じた、初めての遠泳。4人で襷を繋いだ「24時間駅伝」。お見合い旅inマカオ。“初”キスシーンに、“初”サウナ。ドラクエウォークで初めての高尾山。接続できずに大騒ぎのリモート飲み会。拍子抜けだった大腸検査。ブームに乗って、のんびり「おばキャン」、のつもりが……。いくつになってもあさこの毎日は初めてだらけ。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。2』

セブ旅行で買った、ワガママボディにぴったりのビキニ。いとこ12人が数十年(?)ぶりに全員集合して飲み倒した「いとこ会」。47歳、6年ぶりの引っ越しの、譲れない条件。気づいたら号泣していた「ボヘミアン・ラプソディ」の“胸アツ応援上映”。人間ドックの検査結果の◯◯という一言。ただただ一生懸命生きる“あちこち衰えあさこ”の毎日。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

ぎっくり腰で一人倒れていた寒くて痛い夜。いつの間にか母と同じ飲み方をしてる「日本酒ロック」。緊張の海外ロケでの一人トランジット。22歳から10年住んだアパートの大家さんを訪問。20年ぶりに新調した喪服で出席したお葬式。正直者で、我が強くて、気が弱い。そんなあさこの“寂しい”だか“楽しい”だかよくわからないけど、一生懸命な毎日。

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