「世界幸福度ランキング」1位にも輝いた南太平洋の島国・フィジーで、17年間暮らした永崎裕麻さん。話題の著書『余白をつくる練習』の発売を記念して、世界中を旅する作家・安藤美冬さんとの特別対談が実現しました。後編では、「自分リテラシー格差時代」の到来と、「自分のやりたいことに許可を出す」ことの大切さについて語っていただきました。
* * *
人生は「3つのカード」を決めるゲーム
安藤美冬(以下、安藤) 著書でも読みましたが、裕麻さんは移住先を見つけるために世界中を旅したわけですよね。移住をすること自体は、早い段階から決めていたんですか。

永崎裕麻(以下、永崎) そうですね。とくに20代の間は、もう「何やってもいいだろう」という感覚があったんです。年を取ってから動き回るのは難しそうだなと思ったので、無茶苦茶なことは早めにやっておこう、という気持ちもありました。
今でも思っていることですが、人生って結局、「誰と・どこで・何をして生きるか」、この3つのカードを決めるゲームだと思っていました。30歳くらいになったときに、その3枚のカードを「俺はこれなんだよ」と、自信を持って出せる状態にしたいなと。
たとえば、「どこで」のカードだったら、僕は大阪に生まれましたけど、大阪というカードを「俺はここが好きなんや」と自信持って出すには、他の場所も見ておかないといけない。そのために、いろんな場所を知っておこうという気持ちがありました。
だから、実は日本のことをあまり知らないんですよ。世界一周でいろんな国に行ったり、フィジーに長く住んだりしたことで、外国から見た日本はよく見えているつもりです。でも、日本国内の県ごとの違いとか、細かいところは見えていないんです。
逆に言うと、去年、日本に帰ってきたことで、これからは日本を開拓するという楽しみが残っている。それはそれで楽しそうだな、と思っています。
「自分リテラシー格差時代」で大切なこと
永崎 僕からすると、美冬さんって他の人より何歩も先にいる印象があるんです。たとえば、オランダにいち早く留学したり、SNSの世界からいち早く抜けたり。だから、美冬さんが今いる場所そのものが「未来」なんじゃないかという気がするんです。
そこで伺いたいんですが、5年後、10年後、僕たち日本人は何に夢中になり、何に不安を覚えていると思いますか。美冬さんの未来予想を聞いてみたかったんです。

安藤 抽象的なことで言えば、日本人の寿命はどんどん長くなっていますよね。「人生100年時代」みたいになってくると、何歳であっても自分のやりたいことに許可を出せるかどうかが、すごく大事になってくると思います。
私は今45歳で、来年1月に46歳になるのですが、まったく新しい分野に踏み出すということは、誰もができることではないと思います。でも、やってみればなんとかなるし、なんとかなりそうな感じがしています。
許可を出せるかどうかは、誰もがおそらく人生のどこかで突きつけられると思います。そのときに、怖いし、不安だし、自信もない。だから我慢したり、本音を押し殺したりしてしまう。私はそれを選びたくなかったんですよね。
永崎 「許可を出せるかどうか」っていうワード、今ものすごく震えたな。さっき美冬さんも、「自分の本音に気づけるか」という話をしていましたよね。僕はそれを「自分リテラシー」って呼んでいて。
今の時代は、自分の本音に気づいている人と気づいていない人で、どんどん二極化していく「自分リテラシー格差時代」だと思っているんです。でも、本音に気づいただけでは足りなくて、それを許可してあげられるかどうかという、もうひとつの壁がある。それは、まさにおっしゃる通りだなと思いました。
安藤 今って、ChatGPTに聞けば、情報もアイデアも山ほど出てくる時代じゃないですか。みんな頭でっかちになって、情報ばかり食べて、アイデアばかり浮かんでいる。でも、これから本当に価値があるのは、アイデアを形にする人だと思います。
実行する力って、情報を集める力とはまったく別ものですよね。結局、アクションを起こしてこそなんですよ。頭の中で考えているだけでは何も始まらない。
誰かが何かを始めたときに、「あれは俺も考えていたんだよ」って言う人なんて、世界中にいる。でも、ビジネスでも人生でも、実際に行動に移すかどうかが大事なんです。
だから、情報やアイデアの価値って、今めちゃくちゃ下がっていて。今、価値があるのは、それを実行できるかどうかだと思います。
それって、能力以前のことですよね。本人にやる気がなかったら、怖がってばかりいたら、自分に許可を出さなかったら、100万回「あなたはできるよ」と言ったとしても、形にはならない。
やる気があるかどうか、実行すると決めるかどうか。それが何よりも大事なんだと思います。
* * *
※本記事は、安藤美冬 × 永崎裕麻『余白をつくる練習』出版記念特別対談「⾃分に帰る旅 〜“余⽩”と“直感”で心の声に耳を傾ける夜〜」の内容を一部抜粋、再構成したものです。
ゲストプロフィール(安藤 美冬 / あんどう みふゆ)

株式会社UNROUTE代表
ミステリープロデューサー
作家
慶應義塾大学在学中、オランダ・アムステルダム大学にて交換留学を経験。(株)集英社勤務を経て独立後、世界48ヵ国を旅しながら、自分の体験から得た学びや気づきを作家として出版。
近著『つながらない練習』(PHP研究所)と『ノウイング』(サンマーク出版・アンドウミフユ名義にて出版)はそれぞれ台湾、韓国で翻訳出版されている。
2025年9月9日、ミステリーを軸とした様々な物語体験をお届けする株式会社UNROUTEを設立、代表となる。「情熱大陸」「NHKスペシャル」などメディア出演多数。InterFM番組審議員。
◎公式SNS
◇安藤美冬公式LINEアカウント
◇X: @mifuyu_ando
◇Instagram: @mifuyu_ando
余白をつくる練習

効率的に仕事をしても、それで空いた時間に別のことを入れて、一向にタスクが終わらないと感じたことがある人も多いはず。
私たちはいつになったらゆったりした時間を持てるのでしょうか。
世界100カ国を旅したあと、世界幸福度ランキング1位のフィジー共和国へ移住した著者が伝える、人生に自分時間を取り戻す「余白のつくり方」。
- バックナンバー
-
- 【特別対談】安藤美冬 × 永崎裕麻(後編...
- 【特別対談】安藤美冬 × 永崎裕麻(前編...
- 【特別対談】永崎裕麻 × 本間正人(後編...
- 【特別対談】永崎裕麻 × 本間正人(前編...
- 毎日に心の余裕をつくる「1日23時間デザ...
- 「頑張らない」をがんばる ~余白を最優先...
- 自分に「最適な速度」で過ごそう ~余白で...
- 余白は人生を変える ~余白で見つかる自分...
- 余白の時間、どう使う? ~偶然をチャンス...
- 若い人こそ終活のススメ ~終活で人生の余...
- 「世界人助けランキング」ワースト2位の日...
- 「なんとなく」を言い訳に理由探しから自由...
- 「義務の断捨離」でやらされ感な日常からお...
- 仕事観に「余白」を取り入れる3つのSte...
- いまこそ「座右の銘」をアップデート ~「...
- 余白泥棒は日本の広告!? あなたは余白を...
- 忙しいと感じるのは錯覚!? 「いつも時間...
- 時間泥棒「やったほうがいい」に要注意! ...
- 【新連載】100ヵ国以上を旅してフィジー...











