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余白をつくる練習

2025.11.20 公開 ポスト

【特別対談】安藤美冬 × 永崎裕麻(前編)「私はこの地球を思いきり大冒険したくて生まれてきた」…たった一度の人生を後悔なく生きるために永崎裕麻

「世界幸福度ランキング」1位にも輝いた南太平洋の島国・フィジーで、17年間暮らした永崎裕麻さん。話題の著書『余白をつくる練習』の発売を記念して、世界中を旅する作家・安藤美冬さんとの特別対談が実現しました。前編では、本書のテーマである「余白」についての考え方と、お二人の「本当にやりたいこと」について語っていただきました。

*   *   *

人生の「踊り場期」を乗り越える

永崎裕麻(以下、永崎) 最近、「余白」を英単語にするとしたらどう訳すかな、って考えていたんです。「ホワイトスペース」とも訳せるし、「マージン」とも訳せると思うんですが、自分なりの解釈としては「インテンショナル・フリータイム」なんですよね。

「意図的につくり出す」という感じが、僕の考える余白に近いと思っています。たまたまポカンと時間が生まれた、というものではなくて、積極的に攻めてつくり出した時間。それが余白だと思うんです。

美冬さんもこの数年、そんな余白時間を過ごしていたわけですよね。

安藤美冬(以下、安藤) 私の場合は、それを「踊り場期」と呼んでいます。階段って、次の階に行く前に平らな踊り場がありますよね。あれと同じで、「階段を下りたくはないけど、次の階段も見えない」状態。だから、「踊り場期」は、やっぱり苦しいんですよ。私は本当に苦しかった。

でもその苦しさは、決してネガティブなものではなくて、「何かが生まれる前の、生みの苦しさ」に近いんです。私はその期間に、3年くらいかけました。時間はあるようで、実はない。その間ずっと脚本の勉強をして、映画も年に500本くらい観ていたからです。

それが今、ミステリーを手がけるうえで、ものすごく大事な栄養になっています。無駄なことはひとつもなかったと、今では思えます。ただ、当時の私は、3年後の自分がどうなっているかなんて予測できなかったので、やっぱり苦しかったですね。

だから余白には、「インテンショナル・フリータイム」と、もうひとつ、多くの人が直面する「踊り場期」があると思うんです。必死にいろいろやってきたけど、「あれ、私これでよかったんだっけ?」と、ふと立ち止まってしまう。今までやってきたことに興味が持てなくなって、でも次に何をしたらいいのかわからない。

子育てが終わったお母さんみたいな、「燃え尽き症候群」にも似ているのが、「踊り場期」だと思います。これからの時代、それが多くの人に起きるのではないかと感じていて。私は、先んじて体験したんだと思います。

この地球を大冒険したくて生まれてきた

永崎 僕自身も最近、自分と向き合い直して、「自分が本当にやりたいことってなんだろうな」と考えたんです。

そのとき浮かんだのは、美冬さんみたいに熱量を燃やして、「これからタフな山を登るぞ!」という感じではなくて、実はすごく平凡なことでした。息子とキャッチボールしたいとか、娘とボードゲームしたいとか。これが本音なんだ、ということに気がついたんですね。

これ、相談なんですけど、それってすぐにできることじゃないですか。自分が気づいた本音が、めちゃくちゃ「低い山」だった場合、どうしたらいいですかね。

安藤 全然それでいいと思います。私もこの数年は、そういうレベルで自分の本音を叶えてきました。自分が何に喜びを感じるかって、意外と自分でもわかってなかったりするじゃないですか。私の場合は、内装が好みのカフェでお茶をするとか、かっこいい建築を見るとか、そういうことでテンションがすごく上がるんです。

裕麻さんの本でも、味わいを分析する「テイスティング」と、今この瞬間を心ゆくまで味わう「セイバリング」の話をしていましたよね。あれ、すごくわかるんです。

私もこの数年、今この瞬間を味わうことを意識していました。猫を撫でるときの毛のふわふわした感触とか、何気ないことをちゃんと味わおうとしていました。

誰でも心当たりがあると思いますが、つい急いでご飯を食べたり、ご飯を食べながらSNSに夢中になったり、友だちや家族といてもスマホを見たりしがちですよね。私は東京の真ん中で5年間、ほとんどネットに触れない、仙人みたいな生活を経験しました。だからこそ、今この瞬間を味わうということはかなりやってきたつもりです。

そのうえで、これからはもうちょっと全力でいこうかなと。時間的には忙しくなってしまうかもしれないけど、「ホップ、ステップ、ジャンプ」のジャンプができるのかな、という感じがしています。

ただ、必ずしもジャンプする必要はないですからね。どんな人生でもいいと思う。

永崎 いいですね、名言が出ましたね。「ホップ、ステップ、ホップ、ステップ、ホップ、ホップ」でいいんですね。

安藤 それでいいと思います。ただ、そういう言説って今、受けがいいと思うんですよ。「嫌なことからは逃げてもいいよ」とか、「そのままの自分でいいんだよ」とか。もちろん、逃げてもいいし、やらなくてもいい。その人が選ぶことだから、異論はまったくありません。

でも、木造建築は50年、コンクリートは100年と言われますけど、人間は100年後には誰も生きていないし、50年後だってわかりませんよね。そんな一度きりの人生、ゆっくりするためとか、自分のできる範囲で心地よく過ごすために生まれてきたわけじゃないと、私は思っているんです。

私は、この地球を思いきり大冒険したくて生まれてきた。だから、48か国を旅してきたんだと思います。うまくいかないかもしれないけど、一度きりの人生だから、そっちに賭けてみたい。自分の全力を出すこと、本当にやりたいことをやることは、すごく魂が喜ぶことだと思うから。

やりたくないならやらなくてもいいけど、「本当にそれでいいの?」って。「自分を甘やかすために生まれてきたの? もっと可能性を試してもいいんじゃない?」って思います。

*   *   *

※本記事は、安藤美冬 × 永崎裕麻『余白をつくる練習』出版記念特別対談「⾃分に帰る旅 〜“余⽩”と“直感”で心の声に耳を傾ける夜〜」の内容を一部抜粋、再構成したものです。

ゲストプロフィール(安藤 美冬 / あんどう みふゆ)

株式会社UNROUTE代表
ミステリープロデューサー
作家

慶應義塾大学在学中、オランダ・アムステルダム大学にて交換留学を経験。(株)集英社勤務を経て独立後、世界48ヵ国を旅しながら、自分の体験から得た学びや気づきを作家として出版。
近著『つながらない練習』(PHP研究所)と『ノウイング』(サンマーク出版・アンドウミフユ名義にて出版)はそれぞれ台湾、韓国で翻訳出版されている。
2025年9月9日、ミステリーを軸とした様々な物語体験をお届けする株式会社UNROUTEを設立、代表となる。「情熱大陸」「NHKスペシャル」などメディア出演多数。InterFM番組審議員。

◎公式SNS
安藤美冬公式LINEアカウント
◇X: @mifuyu_ando
◇Instagram: @mifuyu_ando

関連書籍

永崎裕麻『余白をつくる練習』

なぜ僕らはいつまでたってもココロが休まらないのか 「いつも時間に追われている気がする」 「最近、余裕がない」 「だらだら過ごしたつもりはないのに、いつの間にか1日が終わっている」 日々、そんなことを感じている方も多いはず。 僕たちはいつになったらゆったりした時間をもてるのでしょうか。 本書は、そんな多忙な毎日を抜け出し「余白」つくるためのガイドブックです。

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余白をつくる練習

効率的に仕事をしても、それで空いた時間に別のことを入れて、一向にタスクが終わらないと感じたことがある人も多いはず。
私たちはいつになったらゆったりした時間を持てるのでしょうか。

世界100カ国を旅したあと、世界幸福度ランキング1位のフィジー共和国へ移住した著者が伝える、人生に自分時間を取り戻す「余白のつくり方」。

バックナンバー

永崎裕麻

100カ国を旅し、世界幸福度ランキング1位のフィジー共和国へ移住。「探究ランド」所長、フィジー留学専門家、武蔵野大学「ウェルビーイング学部」非常勤講師、思考整理コーチ。

2026年1月21日開講「余命の学校 〜Die with Zero, Live without Regret〜 時間残高に向き合う60日間参加者募集中。

著書に『世界でいちばん非常識な幸福論』『南の島フィジーの脱力幸福論』

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