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エナフンさんの推し活株式投資

2025.10.18 公開 ポスト

「ライバル企業こそ狙い目」雑誌記者が名前も聞きたくなかったSBI証券の“投資する価値”会社員投資家・奥山月仁(エナフン)

――投資に勝つコツ(17)ライバル企業を調べる。業界荒らしは要注意

私の書いた『株小説エビ銀』(日経BP)の中で、伝説の投資家恵比寿銀蔵は、見習い投資家である主人公たちに対して「業界のプロから見て、嫌だと感じるようなライバル企業は投資先として有望である」といった趣旨のアドバイスをしました。

 
『株小説エビ銀 路地裏の大投資家が教えてくれたこと』(日経BP)

おそらく、この連載の読者のみなさんの多くも社会人としてどこかの業界に精通していると思います。それは出版業界かも知れませんし、自動車や家電といった製造業かも知れません。あるいは外食や小売業といったサービス産業かも知れません。いずれにせよ、その業界において、何か新しい変化を感じたら、そこに投資のチャンスが存在するのです。

ただし、多くの場合、そのチャンスは少々嫌なイメージであなたに近寄ってくるでしょう。それは、本屋業界にとってのアマゾンが登場した時のように、従来の業界慣習やビジネスモデルを根底から覆すような存在かも知れませんし、新興のヤンチャな業界荒らし企業かも知れません。今後はAIを上手に使って業界のあり方を根本から変える企業も登場するでしょう。

2019年の春、私はあるネット証券会社系のWEBマガジンから取材を受けました。取材してくださったのは同世代の女性記者さんだったのですが、その際も、私は上記のようなライバル企業が有望という持論を展開しました。すると、その記者さんから、
「有望なライバル企業といいますと、具体的にはどのような会社がございますでしょうか?」
と質問をされました。

(写真:iStock.com/sebra)

そこで、その方の立場も考慮して
「例えば、ネット証券会社の社員である、あなたのような立場であれば、SBI証券が狙い目と言えます。一度、詳しく調べると良いでしょう」
と軽く答えました。ところが、SBI証券という社名を聞くなり、その記者さんは悲鳴を上げてしまいました。
「ぎゃー、その社名だけは出さないでください~!」

まぁ、そんなもんでしょう。ライバル企業の株を買うというのはそのくらい心理的な抵抗があるのです。SBI証券は2025年3月に証券総合口座の開設数が1400万口座を超え、今や野村證券の口座数を遥かに凌ぐ、ネット証券業界のトップ企業です。まさに従来の訪問型の証券業界のあり方を根底から変えてきた企業であり、従来型の証券会社からは、手ごわい存在です。
当然のように、その件については、それ以降、その取材で触れられることもなく、最終的にアップされた記事にもSBI証券の文字はどこにもありませんでした。

(写真:iStock.com/Photix Studio)

ちなみに、この時、SBI証券の親会社である、SBIホールディングスの株を買っていたら、今頃、どうなっていたでしょうか? 気になって調べてみました。

当時(2019年4月末)の同社の株価は2,373円でしたが、2025年8月末現在6,999円まで上昇していますから、計算すると、約2.9倍に財産を増やすことが出来たようです。さらに言うと、この間、6回にわたって配当をもらえましたので、その分をすべて加えると、トータルでは3.3倍も儲かっていた計算になります(税は計算に入れていません)。この間、日経平均株価の上昇率は約1.9倍ですから、この時の私のアドバイスは、どうやら、的を射ていたようです。

私自身も、業界内の新興企業で儲けたことがあります。その企業名に触れてしまうと、私の個人情報に関係してしまうので、ここで具体名を出すのは避けますが、いつものように社内回覧で回ってくる業界誌の中から、「これは」というヒントを得て、実際に投資をし、やはり数倍に儲けることが出来たのです。

自分が属している業界への投資というのは、自分が属していない業界への投資と比べて、大きな優位性が存在します。自分がプロである領域においては、常に最新情報に接し、嫌でも勢いのあるライバル企業の動向や、逆に凋落企業の苦しい現状などを肌でリアルに感じ続けているわけです。何も知らない外国人投資家ではつかめないこみいった重要情報の意味も理解出来ます。そもそも、自社の業績については、他の誰よりも分かっているわけですから、それと比べることでライバルがどの程度儲かっているかについても、相当、正確に予想出来るはずです。つまり、あなたの強みを最大限活かせる投資先の一つと言えるのです。

(写真:iStock.com/takasu)

もう一つ重要な点は、ライバル企業に投資をすることで自分の仕事についても、様々な好影響がもたらされることです。多くの企業はその決算説明資料の中で、自社がなぜ好調なのか、どのような考え方で、どのような工夫をして、業績を拡大させているか(あるいは失敗したのか)? といった事業戦略についても、株主に対して、適切に説明してくれます。ライバル企業の現況は自社にとっても大きなヒントになるはずです。

私は会社員を続けながら、株式投資を続けてきた兼業投資家ですが、会社員としての経験が株式投資にも役立っていると感じますし、株式投資の経験が会社員としての判断に好影響を与えているとも感じているのです。
 

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エナフンさんの推し活株式投資

あなたが常連になっているものは、なんですか。

好きなものにお金を落としているだけではもったいない!?著者・奥山月仁氏が億の資産を築いた背景には、身の回りのモノやサービスに対する“推し活精神”があった!いま話題の会社員投資家が“推し活投資”の秘訣を紹介します。

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会社員投資家・奥山月仁(エナフン)

会社員投資家。高校2年から株式投資を始め、投資歴は30年以上。
大阪大学経済学部で証券理論を専攻。卒業後は大手企業に就職し、堅実なサラリーマン生活を営むかたわら、ピーター・リンチに倣い、成長株に中長期で投資して数億円の資産を築く。
2008
年から、株式投資の正しい知識を広める目的でブログ「エナフンさんの梨の木」を開始。
資金100万円からスタートし、投資成績を日々ブログで公開。それから17年後の20257月末には40倍以上に増えている。
著書に『個人投資家入門 by エナフン』『普通の人だから勝てる エナフン流株式投資術』『普通の人でも株で1億円! エナフン流VE投資法』(いずれも日経BP)などがある。
2025
7月には、『株小説 エビ銀 路地裏の大投資家が教えてくれたこと』(日経BP)を刊行。

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