
誰かを待つ時間、その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに、そんな「待つ時間」をテーマにして選曲&言葉を綴っていただきます。
夜の余韻を日時計が嗜めて、神泉の高層ビルに跳ね返る影が少しずつ、存在感を忘れたように
三日前よりも冷淡な気配が空の大半を占める中、颱風に襲われた街が息を吹き返すように、僕や君の残り香を思い出しているはず
きっと君の胸の奥にはまだ、少しだけ熱が残っていて、傷つけあった夜の言葉たちや、我を失った瞬間の表情とか、ほとんどは燃え尽きたはずなのに
灰の隅で微かな光が、ユラユラまだ揺れている
許すことは、簡単じゃない
朝の光に触れると、ほんの少しだけ、その重さが溶けていく気がするのは気のせい?
あの人を責める代わりに、ただただ眠る
白い息が闇へ溶けて、痛みは遠くに旅立ってゆく
怒りは、心が生きている証なのか
許しは、心がまだ優しくなれる証だとか
空が少しずつ明るくなって、タクシーのガラス越しに差し込む光が、疲れ果てた君や僕を抱きしめるように広がって
怒りの夜を越えた朝は、何も語らずそこにある静けさが、どんな言葉よりも胸を癒す
許すことに理由はいらない
朝の光がまぶしい。
そんな今が泣きたくなるほど美しいから、君の手に僕の手をそっと重ねてみた
Chara『Lush Life』(2025年、ソニー・ミュージックレーベルズ)
渋谷で君を待つ間に

誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。
- バックナンバー
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- きっと君の胸の奥にはまだ、少しだけ熱が残...
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