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あぁ、だから一人はいやなんだ。

2025.09.30 公開 ポスト

第255回 お遍路さんいとうあさこ

私は「似合うねぇ」とよく言われる衣裳がいくつかある。その筆頭が割烹着。要は“おっかさん”である。下手すりゃ割烹着着てなくても、三角巾着用だけの時でも「似合うねぇ」と言われるくらい。そしてもう一つ、“お遍路”さん。これはそもそも今から7年前、「イッテQ!」温泉同好会でカナダに行きまして。

 

“スポーツ空手”たるものに挑戦。自分の身長より長い棒を自分の体に打ち付けてパシパシ止めながら、回していく。それを私が披露した際、最後その棒を床にドンと突き刺し、キリッとしたポーズで「ヤーッ」と叫んで終えたのですが、その姿を見たオカリナが思わず「あさこさん、お遍路みたい!」白い胴着に長い棒。オカちゃん、たしかにだわ。番組でもその瞬間、私のその姿にバッグと笠がプラスされ「お遍路あさこ」の文字が。そこから四国に限らず、どこか“お遍路”感ある、白い衣装でのロケ、増えました。

そんな私がこの度とうとう“本当の”お遍路へ。こないだオンエアになったばかりの「イッテQ!」。森三中・大島ちゃん、鬼奴ちゃん、オカリナと4人でお遍路ツアーをしに、徳島県に行ってきました。今回は四国八十八ヶ所のスタートであります徳島県内にある23カ所を周ることに。まずは一番札所と呼ばれる霊山寺の総合案内所の売店で必要なものを買う。必須アイテムとして、輪(わ)袈裟(げさ)。袈裟を簡略化したもので、首にかける。白衣は着ないで私服に輪袈裟だけ、の方もいらっしゃるくらい、これは大事なものだそうです。そして、金剛杖。これは単純に歩く時の補助、ではなく“自分のお墓”なのだそう。もうダメだ、の時にこれを地面に突き立てて、そこに倒れる、という。更には“弘法大師の分身”とされていて、常に一緒に旅をしている、と。急に何か重さを感じて、ちょっと緊張。ただそこはまあまあな年齢の4人。鈴やカバーのついていない、一番軽い杖を選ぶ。その他もろもろ買い揃えていただきまして、準備万端。着替えた4人はまあみんな、似合う似合う。年齢もあるかもですが、誰も初心者には見えない。中でも私は大島ちゃんに「お遍路8回目くらいでしょ?」と言われるほど。何故か、嬉しい。

いやぁ、それにしてもお遍路さんはやることがいっぱい。まずは手水舎で手を清めて、本堂にお参り。カバンの中に用意しておいたろうそく1本とお線香3本をたてる。この時に人の火をもらわず、必ず自分で火をつける。納札という自分の住所と名前を書いた札を1枚納め、お賽銭を入れ、御数珠を出して読経。それを弘法大師が祀られている大師堂でも同様にお参りする。これを各寺でやっていくのですが、まあ最初はいちいちカバンから出すのに手こずり、お参りの際に杖立に入れた杖、読経の時のお数珠、手を清めた後にはずした手甲を戻すことなどなど、何かと忘れてしまい、とにかくバタバタ。本当にどうなることやらと思いましたが、どこにお線香を入れておいたら出しやすいか、カバンの中の配置を自分なりに工夫してみたり、どこで何の準備をすればスムーズかなど分かってきて、少しずつ少しずつ慣れていきました。

夜は宿坊へ。着いたらまず御本堂で読経など、夜のお勤めをしてから晩御飯。これが驚いた。完全なる精進料理だと思っていたら天ぷらを始め、いろんなおかずがあるし、ご飯もお変わり自由で本当に美味しい。聞くところによると、やはり基本、お遍路で立ち寄る為、体力つけなくてはいけないので、お肉やお魚、卵などを使ったものもメニューに入れているとのこと。更に一番のびっくりはビール。とにかくここで英気を養って、翌日の旅に備えるのだそう。ちょっと背徳感もあり、もちろん疲れもあり、ここでのビールは格別に美味しかった。お部屋もWi-Fi、エアコン完備。とにかく清潔だし、なにせ“気”がいい。それと最初の夜に泊まった六番札所安楽寺にあった薬師の湯が素晴らしく。本当にちょっと入っただけなのに、みんな翌日超元気に。女芸人4人とも、朝売店でそこの入浴剤を買った。

3日目の朝、朝食中にディレクターから「今日は二手に分かれましょう」と。お遍路するチームと徳島の名所観光に行くチーム。どうわかれようかみんなで話をしていると、ふと大島ちゃんが「1-3でもいいんですか?」1-3? なにそれ。え? こういうのはだいたい2-2じゃないの? 1-3? そんなわけで3日目はまさかの一人でお遍路へ。ただ一人な分、いろいろ皆さんが教えてくださって。特に覚えているのが十三番札所・大日寺の観音様の周りの祠というんですかね? 覆っているものが、最初蓮のつぼみだと思ったら、よく見たら手だったんです。するとどうやらその感覚は合っていたようで、合掌は蓮のつぼみのようにちょっと膨らませて、親指も組んだりせず揃えてするのだそう。遅ればせながら、ちゃんとした合掌を知れた。

あと今回は移動は車でしていましたが、一カ所だけ、全部ではないですが歩きのルートも行かせてもらいました。途中、竹林や森の中を通ったのですが、真っ黒い、羽ばたくように飛ぶトンボがいて。まるでナウシカの世界のようで大興奮。調べると“神様トンボ”とも呼ばれているトンボで、出会うと縁起がいいそう。「うーん、やっぱりお遍路さんは歩きがいいなぁ」なんて言っていた矢先、足、グネる。ちゃんと、グネる。うん、無理せず車移動でいいのかも。

それにしても煩悩を取り除く旅のはずなのに、途中道の駅に寄って、徳島名産のすだちやわかめなど爆買い。お参りが早く終わったからと徳島ラーメン屋さんへ。生卵おかわり無料だし、ラーメン自体も濃厚なので、白米も頼んで、卵かけご飯にしたり、もちろんラーメンにも卵入れて。大島ちゃんなんてその卵かけご飯をラーメンで巻いて食べるという。もう煩悩の塊の極み。宿坊でもビール。つまりはお遍路→煩悩→お遍路→煩悩、の繰り返し。こんなでいいのだろうか。ただスタジオの内村さんや出川さんは「ずっと見ていられる」と。みんなで喜んでいると、ムーさん、いいとこに気づく。「見たいって言ってるのおじさん世代だけ。これ若い子、見る?」うん、ごもっとも。とにもかくにもどうなるかわかりませんが、是非是非続きの高知、愛媛、香川と、八十八ヶ所制覇したいなあ。

 

【本日の乾杯】軽井沢ロケで出会ったキュウリのピリ辛お漬物。もうこんなのはねぇ、無限ですよ、無限。ポリポリいくらでもいっちまうぜ。

関連書籍

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。3』

海への恐怖を感じた、初めての遠泳。4人で襷を繋いだ「24時間駅伝」。お見合い旅inマカオ。“初”キスシーンに、“初”サウナ。ドラクエウォークで初めての高尾山。接続できずに大騒ぎのリモート飲み会。拍子抜けだった大腸検査。ブームに乗って、のんびり「おばキャン」、のつもりが……。いくつになってもあさこの毎日は初めてだらけ。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。2』

セブ旅行で買った、ワガママボディにぴったりのビキニ。いとこ12人が数十年(?)ぶりに全員集合して飲み倒した「いとこ会」。47歳、6年ぶりの引っ越しの、譲れない条件。気づいたら号泣していた「ボヘミアン・ラプソディ」の“胸アツ応援上映”。人間ドックの検査結果の◯◯という一言。ただただ一生懸命生きる“あちこち衰えあさこ”の毎日。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

ぎっくり腰で一人倒れていた寒くて痛い夜。いつの間にか母と同じ飲み方をしてる「日本酒ロック」。緊張の海外ロケでの一人トランジット。22歳から10年住んだアパートの大家さんを訪問。20年ぶりに新調した喪服で出席したお葬式。正直者で、我が強くて、気が弱い。そんなあさこの“寂しい”だか“楽しい”だかよくわからないけど、一生懸命な毎日。

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