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神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること

2025.10.11 公開 ポスト

10月 実りを言祝ぐ

茶道で、お茶碗をまわしてから飲むのはなぜ?ヒントは「神聖な空間では、正面は常に”神様専用”」桃虚(神職/ライター)

私たちの身近にはたくさんの神様がいますが「湯気」も神様だったようです!

神職さんが教えてくれる『神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること』より、貴重なお話。

*   *   *

茶の湯を通して気づいた、神様の存在

私が湯気を尊ぶようになったきっかけに「茶の湯」があります。

おつとめしている神社の秋祭りでは、「祭り釜(がま)」と言って、氏子(うじこ)さんに抹茶と生菓子をふるまうお茶席を設けているのですが、そこでお茶を点ててくださっている裏千家の先生に、数年前から茶道の稽古を受けています。

茶の湯の場合、お湯の入った釜のふたを、閉めているときも、すこしだけ開けています。これを茶道では「釜のふたを切る」と言うのですが、そうすることによって、釜からはいつも、すっとした湯気が、清らかに立ち上っています。

(イラスト:宮下 和)

まず、茶碗を客人の前で清めるさいに、柄杓(ひしゃく)でお湯を茶碗にそそぐ。このときも、釜のふたを開けて湯気がふぁー。お湯をすくった柄杓からも湯気がふぁー。お湯がそそがれたお茶碗からもかすかな湯気がふぁー。柄杓を蓋置においても、柄杓からはまだ湯気がふぁー。また釜のふたを切っておくと、そこから細い湯気がふぁー。

抹茶を入れ、湯を入れて練る時にも、客人が茶を飲み、返ってきた茶碗を清めるときにも。何回湯気が、ふぁー、となることか。でもその湯気が、なんともいえず、心をやすらかにし、癒し、お菓子や抹茶の味同様に、滋味があるのです。

茶室という、ほぼ何もない空間に立ち上る湯気。

「火」のように現れては消え、つかむことのできない姿をした「湯気」。

これこそ神様ではないのか。私は湯気に神様を感じて、たいへん興奮しました。千利休に弟子入りした名だたる武士たちも、明日をも知れぬ命で一杯の茶をいただく時、ほほをあたたかくしめらせる湯気に、神様を感じたに違いない、と思いました。

お抹茶は、「お茶碗をまわしてから飲む」というイメージがありますよね。実際、裏千家では時計回りに2回、すこしまわしてから飲みます。

どうしてかご存じでしょうか?

(イラスト:宮下 和)

茶碗には「正面」があり、正面から見る景色がよいので、亭主は客人にその「正面」を向けて出します。でも、客人は茶碗の正面に口をつけることを控えて、すこし横にずれたところに口をつけるために、まわすのです。これは「正面」をさけることによって、謙遜をあらわしていると言われますが、私は「神様に正面をゆずっている」と解釈しています。

神社の参道も、真ん中は神様の通り道なので、参拝者は真ん中を避けて歩きます。

拝殿でも、神様の真正面のラインは「正中」(せいちゅう)と呼ばれ、そこを横断するときには身を低くします。

神聖な空間では、正面はいつだって「神様専用」なのです。

お茶室に入った客人は、ただじっとお抹茶を待っているあいだに、「今この瞬間に自分をとりまくすべてのもの」に敏感になります。八百万の神々の存在を身近に感じる。そこへ湯気がふわーっと立ち上るのですから、もう「湯気が神」で、茶室は名も知れぬ神々のおわす神聖な空間になります。だから茶碗の正面を神様にゆずるために、ごく自然に、茶碗をまわすという所作が生まれたのではないかと思うのです。

点心のお店からはみ出している湯気。蒸籠(せいろ)を開けたとき、歓声とともにひろがる湯気。お母さんが作ってくれたラーメンから出る湯気。雨に濡れて帰り、お風呂につかった時の湯気。たくさんお酒を飲んだ翌朝に食べる、お味噌汁から立ち上る湯気……。

だれかと湯気を共にする。

だれかと湯気を祝言(ことほ)ぐ。

だれかに湯気をもてなす。

だれかを湯気でねぎらう。

ふだんの暮らしの中で、すぐできることですが、じつは私たち、湯気という神様と遊んでいるのだな、と意識してみましょう。

身近な神様に気づくことで、きっと運が動き出しますよ。

(つづく)

関連書籍

桃虚『神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること』

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神主さん直伝。「一日でも幸せな日々を続ける」ための、12カ月のはなし。

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桃虚 神職/ライター

1970年インド(ムンバイ)生まれ、東京育ち。 ライター業を経て、大阪府枚方市の片埜神社にて神職歴20年。 「神社新報」で連載など。筆名の「虚(とうきょ)」の、「桃」は無邪気の象徴、「虚」は素直な心を表す

最新刊に『神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること』。

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