
定年退職後に長野県安曇野市に移住した、元『装苑』編集長の德田民子さん。初のエッセイ『80歳、私らしいシンプルライフ』では、四季のはっきりした安曇野での暮らしやおしゃれの工夫、毎日をごきげんに過ごす秘訣など、80歳を迎えた德田さんの心豊かな日々をご紹介しています。本書より、一部をお届けします。
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70歳の記念にピアスの穴を開けました。年を重ねるほど、挑戦が新しい世界を広げる
日常はついついマンネリになってしまったり、気分がちょっと落ち込みそうになったり、誰にでも波はあるものです。こういうときこそ、私は新しいことを始めるチャンス、と思うようになりました。70歳の記念にピアスの穴を開けたときのこと。大きな決意があったわけではありませんが、70という数字の大きさにはそれなりに衝撃があり、もう悩んだり、考えている時間はそう多くないと思ったのです。
これまでファッションを仕事にしてきて、もちろんピアスに興味はあったけれど、親にもらった体を傷つけるなんて、とどこか気兼ねする思いもあって未経験のままでした。私はメガネがトレードマークでもあるので、耳元のおしゃれを加えたらトゥーマッチなのでは、という思い込みもありました。でも、やりたいと思ったときにすぐやらなければ、機会を逃してしまうと思いたって、いざ皮膚科へ。穴開けは「パチッ」という音がして、一瞬で仮のピアスが耳たぶに。痛みはまったくありませんでした。拍子抜けするくらいスムーズに作戦をコンプリート。いざ、ピアスをつけてみたら、メガネと重ねても面白いし、コーディネートにピアスが加わって、おしゃれする楽しみがぐんと広がりました。
小さなチャレンジですが、気持ちが切り替わり、幸せを運んでくれました。その達成感たるや、年を重ねてからのほうが効果が大きいように思えます。皮膚科の先生からは「70歳で開けたのはあなたが初めてよ」と言われました。
また、ピアスの穴を開けたところ、面白いことに、自然と女性らしいおしゃれも楽しみたくなって、爽やかな水色のギンガムチェックの生地でワンピースを作ってみたり、ルンルンと気持ちも弾みました。おしゃれの幅も広がり、また気持ちも華やいで元気が湧いてくるのだから本当に不思議です。普段はジーンズにスニーカーのようなカジュアルでボーイッシュなスタイルが多い私にとって、こうして女性らしさを演出してくれるピアスは、今ではとても大切な存在です。70歳にして新しい自分を発見! さらにおしゃれの扉が開いたのです。やりたいことがひらめいたら、我慢しないで、やったほうがいい。時間がないから、もういい年だから……と言い訳しているヒマがあったらやっちゃいましょう。
30代の頃は、腕や首まわりにじゃらじゃらアクセサリーを重ねていた時期もありましたが、年齢とともにアクセサリー使いは変化してきました。今心地よいのは、こうした小さなピアスやブローチ、小ぶりなネックレスを身につけること。ピアスは、小さなものをつけるだけで印象が変わるし、下げて揺れるタイプなら縦ラインを強調して顔をすっきりと見せてくれたり、フェミニンな印象を与えてくれたりします。
また、こうしたつける楽しみのほかに、集める楽しみも。買い物ついでにアクセサリーショップをのぞいたりして、少しずつコレクションが増えています。明日のピアスは何にしよう。それともまた、新しいものをひとつ、見つけようかしら。

80歳、私らしいシンプルライフ

定年退職後に長野県安曇野市に移住した、元『装苑』編集長の德田民子さん。初のエッセイ『80歳、私らしいシンプルライフ』が8月6日に発売となりました。本書より、試し読み記事をお届けします。
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