「未来を変えられるのは、今ここにいる者。未来を変えるとは、つまり……新しい未来を作ることなのだ」
偉大なスポーツ選手が残した金言のようなラストだった。
そしてこれが、このドラマの大事なテーマであり伝えたかったことだと私は思う。
過去を変えることはできないが未来は変えられる。現代を必死に生きている我々への応援メッセージだったのだ。
2055年を生きる兆(岡田将生)にとっては2025年は過去だが、文太(大泉洋)らにとっては今なのだ。今を生きるものは未来を変えることができる。
SF作品でありながら、現代を生きる我々に確かなメッセージを届けてくれた脚本は、最後の最後まで素晴らしいものだった。そしてこの物語は「愛に満ちた物語」だったとしみじみ思う。
兆も文太も四季(宮崎あおい)も他のメンバーも、それぞれが愛ゆえの行動だった。
その中でも、四季を救ったのは紛れもなく文太だ。
自分の死を知り自暴自棄になった四季に、そっと手を差し伸べ「四季がいる、この世界を愛する」と語った文太。この言葉が死の未来を憂いでいた四季の心を救ったのだ。
そして文太もまた、四季に救われていたのだ。
この1年で死ぬはずだった文太に生きる意味を授けたのは四季なのだ。
お互いがお互いを救う展開に、仮初の夫婦の面影はなく、正真正銘、愛で繋がる夫婦のカタチを見せてもらった。
そして陰で四季を支える選択をした文太の心意気はまさに「究極の愛のカタチ」と言えよう。

四季と文太と文人(岡田将生)の三角関係の物語ではなく、四季と「ぶんちゃん」の愛の物語だったのだ。
愛と希望に満ちた「ちょっとだけエスパー」私はこの作品が大好きだ。
白い男「京」は一体何をしたのか? そして四季の死ぬ未来は変わったのか……気になる結末を徹底深掘り!
やはり物語の鍵を握ったのは、第5話での登場以降、音沙汰のなかった「白い男」だった。
彼は2070年の文人こと「京」だったのだ。

「京」の能力で、四季の半年間の記憶がなくなり、文太らエスパー軍団は事故に巻き込まれずに済んだようだ。
しかし「京」が指を鳴らしたことで具体的に何が起き、世界がどう変わり、四季の10年後の未来はどうなったのか、明確には言及されずに物語は幕を閉じた……。
個人的にこの辺りが明確に明かされなかったことは、物語の余白として素晴らしかったと思う。ここまでSF作品とは思えぬほどに、全ての事象に“意味付け”をしていた本作において、最後の結末はあえて細かな言及を避け、各々の解釈に委ねたことに“意味”を感じた。
この「余白」は「信じれば未来は変わる」というメッセージだと私は思う。
「2055年の兆がどんなに試行錯誤しても変えられなかった過去を、死ぬはずだった文太達が今を懸命に生きることで、四季の10年後の未来を変えることができるかもしれない、いやきっと変えることができる」と私は信じて疑わない。
そう思えたのも、文太達の姿をこれまで見てきたからだ。
そしてそんな最強メンバーが裏で四季を支えている姿が最後に描かれたことで、四季の10年後の未来も変えることができると心の底から思えたのだ。
ちょっとだけエスパーの魅力的なキャラクター達を愛しているからこそ、彼らを信じることができるのだろう。このように物語の「余白」に対して「不安」になるのではなく、前向きに考えることができた視聴者は私だけではないだろう。
明日を生きる活力やポジティブな思考をくれた「ちょっとだけエスパー」に心より感謝したい。

そしてこれまで「ちょっとだけエスパー」の考察記事を読んで頂いた皆様にも深く感謝を申し上げます。振り返ると、SF作品をあえて考察することは正直難しいところもあったが、展開を自分なりに考察することで野木亜紀子氏の凄まじい「脚本力」を今一度、肌で感じることができ、刺激的な3ヶ月間でした。
そして野木亜紀子氏にしか書けない唯一無二のSF作品を目の当たりにし、この方の底知れぬ幅の広さや引き出しの多さを感じた3ヶ月間でした。またこの作品を自分なりに考えることで、私自身も多くの気づきや成長を感じることができた。これは大きな財産だ。
次はどんな作品を書いてくれるのか、今から楽しみで仕方ない。
その時も、その作品にどんなメッセージが込められているのかを私なりに分析・考察していきたいと思う。
これからも是非、我々と濃密なエンタメライフを過ごしていきましょう。
••┈┈┈┈•• ドラマ情報 ••┈┈┈┈••
テレビ朝日『ちょっとだけエスパー』( 毎週火曜夜9時~)
出演:大泉洋、宮崎あおい、ディーンフジオカ、北村匠海、岡田将生 他
脚本:野木亜紀子
監督:村尾嘉昭、山内大典
エグゼクティブプロデュース:三輪祐見子
音楽:髙見優、信澤宣明
主題歌:こっちのけんと『わたくしごと』
著者:ペチ
イメージイラスト:サク
考察食堂 -ドラマを噛んで味わう-の記事をもっと読む
考察食堂 -ドラマを噛んで味わう-

3人組ドラマ考察系YouTuber 6969b(ろくろっくび)による考察記事の連載がスタート!
今話題のドラマの真犯人は?黒幕は?このシーンの意味は?
物語を深堀りして、噛むようにじっくり味わっていきます。
- バックナンバー
-
- 「ちょっとだけエスパー」最終話 四季が死...
- 「良いこと悪いこと」 第9話 宇都見の...
- 「ちょっとだけエスパー」第8話 最終回を...
- 「良いこと悪いこと」 第8話 最終結論!...
- 「ちょっとだけエスパー」第7話 四季が生...
- 「良いこと悪いこと」 意外と忘れてるあれ...
- 「ちょっとだけエスパー」第6話【愛する人...
- 「良いこと悪いこと」 第7話 森くんを追...
- 「ちょっとだけエスパー」第5話 兆(岡田...
- 「良いこと悪いこと」 第6話 7人目=博...
- 「ちょっとだけエスパー」第4話 四季のエ...
- 「良いこと悪いこと」第5話 委員長の怪し...
- 「ちょっとだけエスパー」第3話 四季に現...
- 「良いこと悪いこと」 第4話 やっぱりい...
- 「ちょっとだけエスパー」第2話 衝撃のラ...
- 「良いこと悪いこと」 第3話 カンタロー...
- 「ちょっとだけエスパー」第1話 文太は既...
- 「良いこと悪いこと」 第2話 明らかに怪...
- 「良いこと悪いこと」 第1話 犯人は1人...
- テレビ局の本気。秋ドラマのラインナップが...
- もっと見る










