
一見、風情を楽しんでいるだけのように思える節句行事にも、じつは病気除けや、体調を整える実効性があるんですよ!
神職さんが教えてくれる『神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること』より、貴重なお話。
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茱萸嚢( ぐみぶくろ)で病気除けし、体調を整える
さて、9月9日の重陽の節句は、5月5日の端午の節供に飾った「薬玉(くすだま)」を「茱萸嚢(ぐみぶくろ)」にかけ替える日でもありました。
薬玉は、薬効と芳香のある植物を嚢(ふくろ)に入れて玉にしたものでしたよね。
茱萸嚢は、赤い布に、匂いの強い漢方薬「呉茱萸(ゴシュユ)」を入れたもので、薬玉と同様に、魔除けの飾り物です。

(イラスト:宮下 和)

(イラスト:宮下 和)
呉茱萸は、体の中心であるお腹を温めて冷えを取り除く効果がある生薬。呉(中国)の茱萸を主成分とするお薬なので、それを入れて飾る袋を、茱萸嚢と呼んだのですね。
茱萸の語源は、その果実を食べるときには実を口に含み、皮を出すことから「含む実」が変化したとする説と、果実にしぶみがあるため「えぐみ」からきているという説があります。
弾力がある食感が楽しいお菓子の「グミ」は、ドイツ語の「ゴム」を意味する「Gummi」が由来だと言われている、まったくの別物なのですが、ちょっとイメージが似ているのは、偶然の一致とはいえ、おもしろいですね。
こうして、5月5日に「薬玉」を、9月9日に「茱萸嚢」を、交換でかけることによって、「時」という、目に見えず、流れていくものにいったん区切りをつけ、視覚化する。これからやってくる季節への構えを、頭と体、感覚で、しっかりととる、ということをやってきたわけです。
一見、風情を楽しんでいるだけのように思える節句行事にも、じつは病気除けや、体調を整える実効性があるのです。
(つづく)
神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること

古(いにしえ)より、「生活の知恵」は、「運気アップの方法」そのものでした。季節の花を愛でる、旬を美味しくいただく、しきたりを大事にする……など、五感をしっかり開いて、毎月を楽しく&雅(みやび)に迎えれば、いつの間にか好運体質に!
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神主さん直伝。「一日でも幸せな日々を続ける」ための、12カ月のはなし。
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