
定年退職後に長野県安曇野市に移住した、元『装苑』編集長の德田民子さん。初のエッセイ『80歳、私らしいシンプルライフ』では、四季のはっきりした安曇野での暮らしやおしゃれの工夫、毎日をごきげんに過ごす秘訣など、80歳を迎えた德田さんの心豊かな日々をご紹介しています。本書より、一部をお届けします。
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「ああしたい」「こうしてみよう」と試行錯誤。暮らしにフィットさせる工夫が毎日を快適にする
家の南側、庭にせり出すように張った広いウッドデッキがあります。この場所は以前から洗濯物を干したり、朝食を食べたり、お茶を飲んだりと活用していましたが、最近、透明な波板の屋根をとりつけました。この屋根のおかげで、雨の日でも濡れる心配なく、また洗濯物を安心して干せるようになり、日差しを感じながら快適に過ごせる空間となりました。家仕事の合間にこのデッキから庭を眺めながらお茶を飲むのが、最高のくつろぎの時間です。
庭の手入れは手間がかかります。春には草むしり、夏には芝刈り、秋には落ち葉の掃除・木の剪定と、一年を通してやることが尽きません。落ち葉掃除は時に数時間かかることもありますが、夫が率先して庭仕事をしてくれるおかげで、私は助かっています。庭を整えるたびに、新たな空間が生まれ、暮らしがまた少し快適になるのを実感しています。
この庭には、移住当初に少しずつ植えた木々がたくさんあります。今や立派に成長し、夏には日よけになるだけでなく、鳥たちの憩いの場になっている木もあります。彼らのさえずりを聞きながら、デッキからこの庭の季節の移ろい、いろんな表情を楽しむことは言いようのない喜びです。私たちの日常の小さなごほうび、幸せを感じる時間です。
また、庭の片隅に数年前にガレージを建てました。それまで車は青空駐車だったため、冬場は窓に霜や氷がついたりしましたが、ガレージのおかげでそのような心配がなくなりました。また、ガレージ内には夫が趣味で集めた装飾品を並べ、小さな展示スペースのようです。夫はそこを整理したり飾ったりすることが好きで、楽しみのひとつになっています。
こうして自然の成長とともに、あるいは自分たちのペースで、ひらめいたアイデアをもとに、手を加えていく。その積み重ねがこの家を育ててきたのだと思います。ああしたい、こうしようとあれこれ工夫する。大きな変化ではありませんが、このひとつひとつの工夫が私たちの暮らしを豊かにし、支えてくれているんだろうな、と実感しています。
これからも、マイペースに家や庭と相談しながら、今の自分たちにフィットするよう工夫して、日々の暮らしをより快適にしていきたいです。

80歳、私らしいシンプルライフ

定年退職後に長野県安曇野市に移住した、元『装苑』編集長の德田民子さん。初のエッセイ『80歳、私らしいシンプルライフ』が8月6日に発売となりました。本書より、試し読み記事をお届けします。