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変わるコンビニ、変わらない青のり

2025.08.17 公開 ポスト

最終回「ゴールデンボール」に込めた何億もの願いブリーフ&トランクス伊藤多賀之(シンガーソングライター)

ブリーフ&トランクスの伊藤です!
改めまして僕は「半径5メートル以内の日常生活」をテーマに曲を作って歌っている、48歳のメンズです。
あ、今月末に49歳になります。ってどうでもいいですけどね!

このエッセイ、短い期間でしたが今回で最終回となりました。
シーズン1終了ってことで、今後、僕がもっと羽ばたけたら、
いつかシーズン2もあるかもしれないという願いも込めて、
最終回は2012年にリリースした「ゴールデンボール」にまつわる話をさせてください!

 

ブリーフ&トランクス「ゴールデンボール」
作詞・作曲:伊藤多賀之

 


ゴールデンボールは下ネタか?

「ゴールデンボール」というタイトルは一見、輝かしく、
美しそうな雰囲気が漂っていますが、すぐに「下ネタかよ!」と思う方も多いでしょう。
断言しますが、この曲は相当真剣に作っています。

小説家が何枚も何枚も原稿を紙に書いては破り捨てていくあの光景の如く、
何日も引き篭もって歌詞を書きました。
カーテンを閉め切って間接照明1個だけを付けて、
人に会わず、ヒゲも剃らず、髪の毛をグシャグシャに掻きむしりながら作った記憶があります。
もちろん他の曲も全て真剣に作ってますが(笑)

この曲に至っては、歌詞に込めたメッセージの本気度がケタ違いかもしれません。


自転車乗る時にサドルに挟むと痛すぎる

“どんなに強い男達でも
か弱き 鍛えられぬ場所がある”

と冒頭で歌っていますが、
そんな男にしかわからない痛みの話は実はどうでもいいのです(笑)


“下から蹴らないで ゴールデンボールを”

これは全人類の男が共通して思っている「大切なお願い」ではございますが、
これも特に伝えたい事ではありません。


平等に与えられたポテンシャル

大事なポイントは主に2つあります。
一つ目は、ここです。


“どんなに弱い男達にも平等に与えられたものがある
大統領 マフィア いじめられっこも ボールの中身は同じ グッジョブベイベー”

この歌詞に込めたのは、
ゴールデンボールの中身は、大統領でもいじめられっこでも同じ、
大金持ちでも貧しい人でも中身は変わらない、
生命のポテンシャルは、最初はみんな同じということです。

いじめられっこがいたら僕は抱きしめたくなるほど味方でいたい気持ちですが、
もしそんな子供がいたら声を大にして言ってあげたい。
「君のゴールデンボールは世界を動かす大統領と何も変わらないんだよ、全く同じなんだよ」と。
「だから負けないで欲しい」と。


競い合う世の中で思うこと

昔も今も、人生は競争ばかりで疲れますよね。
子供の頃は、内申点やテストの成績、足の速さなど、全てに順位がついて、
それによってモテ度も変わってきたりします。

令和の時代、
運動会での徒競走で順位をつけない学校とかもあるみたいで、
流石にそれは変だと僕は思っていますが、
人間の可能性は、無限にある中で、
学生時代の順位なんて、ほんの一部、1億分の1くらいの話で、
それで落ち込んだり、勝ち誇ったり、
48歳になった今思うと、どうでもよかったな、とも思います。

大人になる前の脳のトレーニングって意味では、
当然たくさん勉強しておいたほうが、
その鍛えた脳を、いろんな分野で活かせることになりますし、
数学の方程式とか歴史の暗記とか、
「これ、大人になって使わないじゃん」とか言わずに、
筋トレと同じく、脳をガンガン動かしておくのは必要なことだと思いますが、
特に学生時代の順位は、一時的なものだってことです。

自分次第で、どの順位にも、どの道にも行けるということです。

犬や猫が、人間を見る時、
成績や年収や肩書きでヘコヘコしてくることはないですよね。
河川敷にテントを張って寝ているオジさんであろうと、
大企業の社長であろうと、動物は平等に接してきます。

それこそ、ゴールデンボールの中身と同じく、
人間が持つ愛情の容量は、誰もが全く同じ大きさなんだ、
というメッセージを、歌詞に込めていました。

 

昔は良かったと思っちゃダメ?

そして2つ目のポイントは、曲のラストです。


“何億個ものライバル抜いて 勝ち残った後
僕らが生まれたのなら このシラけた時代に負けはしない”

人間、歳を重ねるたびに、
「ああ、昔は良かった」と思うことが増えてきます。

ノスタルジーに支配されてしまうのは錯覚だと思いたいですが、
本当に昔の方が良かった場合もありますよね。
メールも便利だけど、手紙の方が気持ちが伝わってくる。
電話も楽だけど、直接会って話したほうが話は早い。
好きなミュージシャンのライブ情報をネットで10秒で知る喜びよりも、
自転車こいで1時間かけて本屋さんで調べて見つけた時の喜びは遥かに大きい。

などなど、利便性優先なゆえ、
本来の楽しさが失われていることも多いです。

こういう話をすると、現代の若い世代の方からは、
「出たー、オヤジの戯言だ」と思われるのでしょうね。
でも、それはどの世代でも、みんな同じように繰り返していくのだと思います。

自分より上の世代が「昔は良かったのにな」と遠い目をしてるシーンは、
100年前にも、1000年前にもよくある光景だったかもしれませんよね。

このように、
今の時代がシラけてるような気分になることがどんどん増えてきて、
こんな人生何が面白いのか、
果たして自分は幸せになれるのか…と、
いつまでも自問自答は尽きません。(あ、僕だけなのかもしれませんが)

 

誰もが経験したあの戦い

そんな時に、自分にも言い聞かせていることが、
この「ゴールデンボール」のラストの歌詞です。

時は49年前、僕が生まれる1年前、
西暦でいうと1975年の話。
父のゴールデンボールに眠っていた何億ものオタマジャクシが、
大きなピストルの音を聞き、一斉にスタートしました。
曲がりくねった道、坂道、土砂降りの雨、
過酷な暗闇でのマラソン大会が突然開催されたのです。

そんな中、眠い目擦りながらも、必死にゴールを目指し、
疲れても休むことも許されず、ライバル達に追い越されながらも追い抜き返し、
体を激しくぶつけ合いながら、不眠状態でひたすら走り続け、
何億もの挑戦者全員を蹴落とし、
見事に1人だけ勝ち残ってゴールしたヤツ、
それが、今の僕なのです。

僕はとんでもない戦いに勝ったチャンピオン、勝者なのです。

ゴールデンボール基準で考えると、
生まれたことはスタートではなく、ゴールなんだとしたら…。

この人生は、生まれる前のオタマジャクシ仲間たちに夢を託され、
「お前、楽しんでこいよー!」「元気でなー!」「いいなー!うらやましいなー!」という、
たくさんの声援を受けながら、
何億のうちのたった1人にだけ許された、ボーナスステージなのではないでしょうか。

 

人生はボーナスステージ

そう考えると、
人生悩んでる場合じゃないなと、
毎日楽しもうぜ、となれるような気がしますし、
あの壮絶な戦いを思えば、
今ライバルや敵がいたとしても、相手は何億人もいないだろうし、
あの時に勝ち残った僕らなら、同じように誰にも負けないだろうと、
そう思えるのです。

「止まない雨はない」
「明けない夜はない」
この言葉が僕はあまり好きではありません。

雨が止むのを待っている時間、夜が明けるのを待っている時間、
それが無駄な時間であり、耐える時間なんだと言われてる気がするからです。

僕は、雨が降り続くなら雨音を楽しみたいし、
夜が永遠に続くなら、その静けさを楽しみたいのです。

どんな辛い状況でも、
その状況をも楽しめちゃうようなポジディブな思考でいた方が逆に楽だと思うのです。
明るい未来をただ待っているのではなく、
今が最高なんだと思っちゃえばいいと思うのです。
明日のために今日を頑張るのではなく、
今日のために昨日まで生きてきた、と思って僕は生きていきたい。

全てはボーナスステージ。
今を思いっきり楽しんで、笑顔で生きてほしい。

そんな「ゴールデンボール」に込めたメッセージを、
最後にあなたに届けて終わります。

 

短い期間でしたが、
僕ごときのエッセイにお付き合いいただきありがとうございました!
そして、この期間に念願のトークイベントも開催でき、
集まってくれた皆さん、幻冬舎の皆さん、
エッセイ担当の山本さんには最大の感謝を!

*   *   *

◆最新ライブ情報

『ブリトラ変体コンサート2025』
~オールタイムベスト新曲付き~

 

 

 

 

 

【日時】2025年10月18日(土)

【場所】神奈川県 横浜赤レンガ倉庫 1号館ホール

【チケット】
 VIP指定席:¥9,900(ブリトラ特製プレゼント付き)
 S指定席:¥6,900
 A指定席:¥5,900

【チケット一般発売(先着)】
https://eplus.jp/sf/detail/0740950001

◆リリース&ライブ情報

アルバム「ブリトラリニューアルビッグミニ」(2024年9月)

ライブ「ブリトラ完全リニューアル祭り2024」(2024年9月)

ライブ「ブリトラハモり極み祭り2025」“黄金スペシャル2012~2022+α”(2025年5月)

ライブ「ブリトライトウエキサイトナイト ”牛の内臓スペシャル2001-2011+α”」(2025年7月)

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変わるコンビニ、変わらない青のり

新生ブリーフ&トランクスとして再始動した伊藤多賀之が

自身の楽曲や歌詞を手がかりに、“あの頃”と“いま”の違い、そして変わらずそこにあり続ける日常の断片を綴ります。

「青のり」「コンビニ」など、ブリトラ楽曲に登場した身近な風景を見つめつつ、

移ろいゆく時代の中でも変わらない“青のり”的な何かを探しながら、

「半径5メートル以内の日常生活」を描き出していくエッセイ連載です。

バックナンバー

ブリーフ&トランクス伊藤多賀之 シンガーソングライター

1976年生まれ/静岡県伊東市出身

作詞作曲編曲&ボーカル&ギター係

楽曲テーマは「半径5メートル以内の日常生活」

 

1998年ブリーフ&トランクス(main Vo)として、シングル「さなだ虫」でメジャーデビュー

「青のり」「コンビニ」「石焼イモ」「ペチャパイ」など多くのヒット作をリリース

現在はソロ活動の新生ブリーフ&トランクスとして精力的に活動中

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