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わたしを幸せにする0円生活

2025.08.09 公開 ポスト

材料費10万円、家賃は0円!手づくりハウスとコンポストトイレで循環する暮らし田村ゆに

青森県南部町で自給自足生活を送る田村ファミリーの妻・田村ゆにさん。電気・ガス・水道は契約せず、廃材で建てた手づくりハウスに家族3人、ニワトリ12羽と暮らしています。お金の不安が尽きない都会の生活から抜け出し、田舎に移住して気づいた“本当の豊かさ”とは。初のエッセイ『わたしを幸せにする0円生活』より、一部をお届けします。

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廃材セルフビルドで材料費10万円のおうち

「廃材で建てた家」と聞くと、どんなイメージでしょうか。古びた廃墟のような建物が思い浮かぶ人もいるかもしれません。夫が建てた小屋にはじめて来たときの印象は、手づくり感はあるものの、廃材といわれてもピンと来ませんでした。室内は窓も大きくて明るく、太陽に照らされた色とりどりの木の色に、新築の木の家とは違う美しさを感じたものです。

廃材といえどもちゃんとした木材であれば、表面を削ると本来の美しい木目が現れることをあとから知りました。ボルトやビスだけでなく、木と木を組んでいくことで四季の変化による伸縮にも耐え、さらに地震の揺らぎでより家が締まっていくような感覚があります。それはまるで建てたあとも、家としてしなやかに育っているようです。

夫は「汗水流して稼いだお金で家を買うより、その汗で家を建てよ」といいます。今では廃材や建築について講座を開けるほどの知識と、1日もあればむき出しの井戸に屋根をかけるスキルがあります。しかもその技術は、誰にも教わることなく小屋を解体することからスタートした独学によって身につけたものでした。期間にして約7年、材料費は約10万円で夢のマイホームを実現しています。

わたしが東京で一人暮らしをしていたときは「ほとんど家にいないのに、なんでこんなに高い家賃を払わなきゃいけないんだろう」と、安い物件を求めて場所を転々としていました。それが今では外出しても、早く家に帰りたいと思うことが多くなり、むしろ出かけるよりも家でのんびり過ごすことをぜいたくに感じるほどです。

今、とくに田舎では、世帯数よりも空き家の数が多いエリアもあります。新築を建てるのにローンで悩む人たちと、住むわけでもない家を管理しなければならない人たちがお互いに助け合えれば、家を新しく建てなくとも問題を解決できるように思います。「みんなの0円物件」というサイトでは、0円でもゆずりたい家や土地の情報が見られます。ただし古民家をリフォームして住む場合、安さだけで選ぶと住み始めてから見えてくる問題もあるので、いきなり買うよりまずは借りるのがおすすめです。

2016年に完成したわが家の外観。
住みやすいように年々、改築を重ねています。
屋根には食用のワイルドストロベリーも生えています。

わが家の捨てない0円トイレ

「全然におわない!」「公衆トイレよりも快適」。これはうちのトイレを見学に来た人たちの感想です。わが家では水洗ではなく、コンポストトイレという溜めて肥料にして畑に還すトイレを6年以上使っています。いつもだと水で流してすぐに目の前を去るうんちがその場に溜まることで、汲み取り式のトイレをイメージする人もいます。

しかし、実際には通気をよくするため水分と便を分離させ、排せつ後に落ち葉やもみ殻くん炭をかけて堆肥化させるので溜まってもニオイは気になりません。

トイレはこれまでに何度か変化してきました。はじめは伊沢正名さんの『「糞土思想」が地球を救う 葉っぱのぐそをはじめよう』(山と溪谷社)という本との出会いもあり、裏手の崖に穴を掘って埋めるスタイルでした。次にテントを切って円すい形のティピのように幕を張って、場所を移動しながら穴埋めスタイルを続けました。そのあとに、小さな木の小屋を建てオイル缶で手づくりした便座のある現在のコンポストトイレになりました。最近になりおしっこ専用の水洗トイレもできて、常に水の流れがある場所を利用して、用を足す場所の下を水路が通るようにしています。海外にはこれに似たトイレもあるため女性にも好評です。

さらにトイレットペーパーも、冬場を除いては葉っぱを使います。春先はふきの葉。そのあと初夏にかけてキウイの葉が出てくると、枯れるまではおしり拭きとしても活躍してくれます。なので、世間でたまに起こるトイレットペーパーの買い占めも、うちでは心配ありません。

多少不便でもこのようなトイレを選んだことには理由があります。流すしかないと思っていた尿や便は、畑があれば有機物として立派な肥料にもなるものです。昔はそうやって、食べたら土に還すことで次の実りへとつなげていました。食べるだけで次の命にならないどころか、さらに人や自然に負担をかける現代のトイレの仕組みから抜け出したかったのです。

コンポストトイレを続けることで、さっきまで自分の一部だったものを汚いと感じる気持ちも薄れてきました。うんちや土を汚いと感じるのは、それは最終的に人や生き物の還る場所を知らないだけです。

毎年税金から何千億円にもなる下水の処理費用がまかなわれています。払わなければならない暮らしから、払わなくてもいいような仕組みに変えていくことで希望が見えたらとも思います。決して安くはない上下水道料金や税金の解決に、コンポストトイレが答えのひとつになるかもしれません。

わが家のコンポストトイレ。
通気性がよく、室内は明るい。
排せつ物を堆肥化させ、畑に還元します。
排せつ物にもみ殻くん炭をかけて使用。
オイル缶がいっぱいになったらドライコンポストに移動させ、約3ヶ月で堆肥になります。

関連書籍

田村ゆに『わたしを幸せにする0円生活』

電気・ガス・水道は契約なし!テレビで話題の自給自足ファミリーの妻・田村ゆにさん初の単著。 都会から青森の田舎に移住し、0円生活で手に入れた“無限の幸せ”とは。

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わたしを幸せにする0円生活

電気・ガス・水道は契約なし!自給自足ファミリーの妻・田村ゆにさん初の著書『わたしを幸せにする0円生活』より、試し読み記事をお届けします。

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田村ゆに

1987年北海道札幌市生まれ。高校卒業後に歌手を目指して上京。アルバイトをしながらの歌手活動中に着物の魅力にハマり、価値観が激変。日本人の昔ながらの生活に触れ、「いつか自分で作った野菜を家族に食べてもらいたい」という新たな夢を見つける。29歳になる年にSNSで見つけた田村余一の「お嫁さん募集」へエントリー。その年の秋に青森へ移住し、2017年に入籍。オフグリッド生活や畑しごとをスタートする。2018年第一子を出産。現在は子育てや畑しごとの傍ら、テレビ出演のほか、SNSで暮らしの知恵や野菜に関する知識などをシェアして活動している。

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