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彼方からの手紙

2025.07.28 公開 ポスト

バーベキューと気候変動清水ミチコ/光浦靖子

清水ミチコさんと光浦靖子さんのリレーエッセイ。光浦さんの住むカナダは涼しい夏のイメージですが、バーベキュー好きの住人に囲まれ、予想外の暑さを味わっているようです。

*   *   *

こちらは7月ですが、気温は30度を越えることはまだありません。日差しは日本より強くジリジリ痛いほどですが、日陰に入れば涼しく心地よい風が吹きます。最高の夏です。バンクーバーにはクーラーのない家が多いです。当然、うちの古いアパートメントにもクーラーはありません。でも窓を開ければ涼しい風が入ってくるので、クーラーは必要ないのです…なはずだったんですが、今、窓が開けられず、暑いです。なぜなら、いつもここの住人が誰かがベランダでバーベキューしているからです。

 

カナダ人は本当にバーベキューが好きです。ほとんどのカナダ人が、あの蓋のついたでっかいバーベキューグリルを持っています。私調べによると、家族なら100パー、カップルなら100パー、一人暮らしなら85パー持ってますね。私調べですけどね。夏になるとみんな週末はどこかに出かけバーベキューをしています。どこかに出かけられない人は家の庭で、庭のない人はアパートメントのベランダで焼き出します。

当然、ベランダで焼き出したら上に住んでる住人、横の住人の部屋には脂臭い煙が入り込んでいきますが、誰一人文句は言いません。本当に誰も文句を言わないんです。「まあ、まあ、バーベキューなんだから許してやってよ」というおミソ感ではなく、なんというか、バーべキューに関しては否定してはいけない空気が、なんか聖域感があるんです。きっとカナダ人に「BBQの煙がひどいんだけど、やめてくれる?」と言うことは、日本人に「換気扇から漏れる醤油のにおいが臭いから、使うのやめてくれる?」と言うことに相当するんじゃないかな、アイデンティティーの否定なるのではないかな、と私は考えています。だから私が何か言えるわけない。郷に入っては郷に従えですからね。

私は今、本の出版に向け、家で書き物三昧なんですね。で、書き物をしてると、ん? なんか臭う? ソーセージ? ああああ!!!! 気づいた頃にはすでに遅し、家がバーベキュー臭に侵されています。これ以上の侵食を防ぐには窓を閉めるしかない。で、窓を閉めた途端に室温が高くなるんですね。暑い。集中できない。私が外に出るしかない。

毎週金土日は確実、平日も誰かが焼いています。昼の時もあれば夜の時もあり。なんか鼻がバカになったのか、部屋がいつも煙くさい気がします。「また焼いてんのか?!」それが幻臭だったりする時もあります。でもクーラーは買いたくないし使いたくない。

日本はもう暑すぎてクーラーがないと生きてゆけませんね。清水さんが言ってた通り、熱帯雨林気候化してますね。不倫に対しての厳しいバッシングは、この気候が原因の一つだと私も思います。この気候に生活スタイルがフィットしてないから、その摩擦から起こるストレスのせいではないか、と。クーラーの効いた室内、熱帯雨林のような屋外、この温暖差は体にも精神にも厳しいです。

生活スタイルを気候に合わせるべきです。働き方改革で、昼寝と水浴びを導入できないですかね? 昼寝した方が仕事の効率が上がったというデータもありますしね。インドネシアではマンディといって、一日数回、汗をかけば水を浴びる文化があります。最近は生活スタイルが変わって、マンディしてるかどうかわかりませんが、30年も前にインドネシアに行った時、友人の実家に泊めてもらったとき、私も何度かマンディをしました。お風呂場に水が貯めてあって、それを洗面器ですくって体にかけるだけです。びっくりするぐらい、とーってもスッキリします。水を浴びるだけなので、ちゃっちゃとやれば2分で済みます。体も汗臭くならないし、さらっとして、その後涼しいんです。

職場のクーラーの温度を上げて、水浴びをしましょう。で、15分の昼寝も入れましょう。服装はラフでいいです。Tシャツ、短パンでいいんじゃないですか? バンクーバーではスーツを着ている人を見たことがありません。住んでみて知りました。スーツと化粧をやめてもこれといった弊害はなく、街は機能します。

クーラーの設定温度を上げる、これで消費電力の削減ができ、それは環境保護に繋がり、服装のラフ化は個人の出費と煩わしさも削減できます。水浴びなのでシャワーとは違い水の消費量も少ないです。一人多くて洗面器5杯です。室内もストール膝掛け女子が白湯を飲むほど冷やしません。なんなら昭和の「夏は暑いなぁ」くらいの「お母さん、麦茶ー!」くらいの温度にします。基本暑いといろんなことが面倒くさくなるでしょう? これによって「他人の不倫なんてどうでもええわ」になるんです。みなさん、他人の不倫なんて、どうでもいいですよね? (拍手とどうでもいいー!という掛け声) 投票場に行きましょう。みなさんの意思を、他人の不倫なんてどうでもいいと、票で示すのです。ご清聴ありがとうございました。

これで出馬できますか?

清水さん夏の予定はなんかありますか? 私は旅行など大きな企画はなく、バーベキューくらいです。こないだもバーベキューしました。みんなで持ち寄って焼いて、食べて、誰もアルコールを飲みません。(場所によっては禁止されているところもあります)。ノンアルコールで歌を歌って、相撲して、体を使った連想ゲームをして、、、平和! 平和にも程があるでしょう? 私の顔からどんどん険がなくなり、笑顔が増えるのわかるでしょう? 

【靖子の近況】

バーベキューの時の相撲。

関連書籍

清水ミチコ『カニカマ人生論』

すぐに「気負け」して泣いてしまう少女の頃の笑えて切ない思い出。永六輔さん、タモリさんはじめたくさんの大切な人たちとの巡り逢い。自分の弱さやセコさにぶち当たりながらも、日常の些細な面白みを慈しみつつ、「若い頃よりクヨクヨしなくなった」と思えるようになるまでの様々な出来事。武道館を沸かせる国民の叔母(自称)の、自伝エッセイ。

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彼方からの手紙

清水ミチコさんと光浦靖子さんが月1回手紙を送りあうリレーエッセイ

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清水ミチコ

岐阜県高山市出身。1986年渋谷ジァンジァンにて初ライブ。1987年『笑っていいとも!』レギュラーとして全国区デビュー、同年12月発売『幸せの骨頂』でCDデビュー。以後、独特のモノマネと上質な音楽パロディで注目され、テレビ、ラジオ、映画、エッセイ、CD制作等、幅広い分野で活躍中。著書に『主婦と演芸』『「芸」と「能」』(共に幻冬舎)、『顔マネ辞典』(宝島社)、CDに『趣味の演芸』(ソニーミュージック)、DVDに『私という他人』(ソニーミュージック)などがある。

光浦靖子

1971年生まれ。愛知県出身。幼なじみの大久保佳代子と「オアシズ」を結成。テレビやラジオで活躍する一方、手芸作家、文筆家としても活動。著書に『『50歳になりまして』『お前より私のほうが繊細だぞ!』『傷なめクラブ』など多数。2021年8月よりカナダに留学。現在は、就労ビザを取得し、カナダで生活を続けている。(写真:山崎智世)

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