
人気怪談系YouTuberナナフシギが、子どもたちに届けたい、実話怪談をセレクト!
児童向け怪談集『5分怪談』から、夏にピッタリな怖い話をお届けします。
油断していると、大人でも眠れなくなるかも……?
* * *
参道の地縛霊
わたしの家系は少し特殊だ。
そのことに気がついたのは、小学4年生のころだった。
わたしのおばあちゃんは占い師だ。大人たちのあいだでおばあちゃんは有名人で、警察にたのまれて不思議な事件について占ったり、いろんな人の相談に乗ってあげたりしている。過去には、おばあちゃんに占ってもらうために遠くから新幹線でやってきたという人もいた。
お父さんも、お寺や神社で悪い幽霊を祓う祈祷師(きとうし)っていう仕事をしている。2人とも霊の姿が見えるのだ。
そしてわたしには、そんなおばあちゃんやお父さんより強い霊感があるんだって。
「おまえはこれから、あたしらなんかよりずっと霊を感じる力に目覚めていくはずだよ」
それを聞いたとき、わたしはすごくうれしかった。だって、大きくなったら2人の仕事を手伝えるから。
2人みたいに、いろんな人を助ける仕事ができると思うと、今から楽しみで仕方なかった。
次の日。わたしは、学校に着いてすぐ、クラスで仲良しのミユちゃんにこのことを話した。心のどこかでミユちゃんがすごいってほめてくれると思っていたんだ。
でも、わたしがうれしそうに話せば話すほど、ミユちゃんの表情はくもっていった。
「メイ、霊感とか本気で言ってるの?」
声のトーンを落として、ひそひそ声でミユちゃんは言う。まるで、わたしとの会話をほかの人に聞かれたくないみたいだった。
「うん。だって、お父さんもおばあちゃんも霊感あるし、霊をたくさん見たことあるって」
「それ、絶対ウソだよ」
「ウソじゃないよ! 2人とも霊感を使っていろんな人を助ける仕事してるんだから」
わたしが急に大きな声を出したから、びっくりしたクラスメイトの数人がこっちを見た。
「シーッ、そんなムキにならないでよ。大体、メイってホラーとか好きだったっけ?」
「怖いのはきらいだけど……」
「じゃあ、この話はおしまい。私はいいけど、ほかの子に話さないほうがいいよ。真剣に話すほどイタイ子だって思われるから」
ミユちゃんはぴしゃりと言い放つと、そのまま自分の席へもどっていってしまった。
(ウソじゃないのにな)
モヤモヤした気持ちをかかえたまま、わたしも自分の席に着く。
ほかの人なら遠慮してしまうようなこともズバズバ言えてしまうのは、ミユちゃんの良いところだ。でも、イタイ子と言われたのはちょっとショックだった。
(やっぱり、わたしの家はほかの子とはちがうんだ)
なんとなくわかっていたことだけど、ここまでハッキリ言われてしまうと落ちこみもする。考えすぎかもしれないけど、まともじゃないって言われている感じがした。
(もう少し考えてから話せばよかったな……)
帰り道。
一日中落ちこみっぱなしだったわたしは、家の近くにある神社によった。
小さいときからお父さんの仕事に着いていっていたせいか、物心がついたときから神社にお詣りするのが習慣になっていた。そうしないと、なんだか落ち着かないのだ。
がま口から小銭を取り出すと、お賽銭箱に入れて手を合わせる。今日あったことを頭の中で神さまにお話すると、スッキリした気がした。
(明日は普通にミユちゃんと話せますように)
念入りにお願いをして、わたしは目を開ける。
(これでよし)
帰ろうとふりむいて歩きだした瞬間――
ゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョ
「えっ」
突然、耳元で低い声が聞こえて、わたしはゾワっとした。
全身に鳥肌が立つ。
お腹のあたりがムカムカして、はき気が上がってくる感じがした。
「なに、誰……?」
怖くなって小声で聞いてみるけど、返事はない。
思い切って後ろを見てみても、そこには誰もいなかった。
(幽霊……?)
おばあちゃんから霊感があるって言われたけど、実際に幽霊を見たことはまだない。
声を思い出すだけで背中がゾクゾクしてきて、わたしはにげるように神社を後にした。
次の日。
ミユちゃんはいつもどおりわたしと話してくれたけど、どこかよそよそしくて、わたしと距離を置こうとしているみたいだった。
(わたしがあんなこと言わなければ、変な感じにならずにすんだのに)
帰り道にまた神社へよって、お詣りをする。
大きく息をすって、体のなかにあるモヤモヤと一緒にはきだすと、少しだけ気持ちが軽くなった気がした。
神さまに一礼をして、帰ろうとお社に背を向ける。
すると――
ゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョ
「わっ!」
耳元でまた、男の人の低いさけび声が聞こえた。
昨日聞いたのと同じ声だ。
思わず体に力が入る。
(なんなの、もう)
周りを見わたしてもやっぱり誰もいない。
(まさか、本当に幽霊のイタズラなの……?)
そして、その次の日も、次の次の日も、次の週も。
さけび声は、お詣りした帰りに必ずあらわれた。
ゴニョゴニョ!! ゴニョゴニョゴニョ!!!!
しかも、聞くたびに声のいきおいがはげしくなっていく。
何度聞いてもゾワゾワするいやな声だけど、お詣りをやめたら、それこそバチが当たりそうな気がして、わたしは毎日神社に通い続けた。
* * *
それでも、一週間も怪奇現象が続くと、さすがに不安になってくる。
(お父さんに言ったほうがいいかな)
ミユちゃんのこともあったから、幽霊話をするのは少し気が引けたけど、わたしは神社での一件をお父さんに話してみることにした。
「おまえ、なんでもっと早く言わなかったんだ。どこの神社だ? 一緒に行くぞ」
お父さんは話を聞くなり、立ち上がって仕事道具を身につけはじめる。
そんなにヤバイ霊だったんだろうか。
わたしはドキドキしながら、お父さんを神社に案内した。
神社に着くと、お父さんは鳥居を通ってまっすぐお社に歩いていく。
折り返して石畳の途中で足を止めると、うーんとうなった。
「地縛霊だな。おまえ、よく無事だったなぁ」
お父さんが立っているのは、いつもさけび声が聞こえる場所だ。お父さんには声が聞こえているんだろうか。
「そこ、あぶなくないの?」
「普通の人だったらあぶなかっただろうな。ただ、メイの場合はふらっと根づいたこの地縛霊より強い力を持っていたから無事だったんだ。やっぱり素質があるんだな」
お父さんはうれしそうに笑って、なれた手つきでお祓いの準備をしていく。
ほめられるのはうれしい。でも、ミユちゃんにイタイ子と言われたのを思い出すと、素直に喜んでいいのかわからなかった。
「それで、地縛霊はわたしになんて言ってたの?」
モヤモヤした気持ちから意識をそらしたくて、わたしは幽霊に話をもどす。
結局、あのさけび声はなんだったのか。わたしになにか言っていたのなら聞いてみたかった。
「あぁ、それはな……」
一度言葉を切って、わたしのほうを見る。
「ずーっとおまえのほうを見ながら、こう言っとるぞ」
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5分怪談

5分でゾッとする、本当にあったコワい話!
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