
見たことのない異国の料理をキャンプで作ることに、私は取り憑かれています。
今回はデンマークの国民的料理「ステクトフレスク」に挑戦です。
ステクトフレスクとは、豚バラ肉をカリカリになるまで焼き、ホワイトソースをかけたデンマークおふくろの味。もちろん、食べたことはありせん。
そんなわけで不遜ではありますが、デンマークの国民食たるステクトフレスクを作ってみます。

塩とこしょうをかけておいた豚バラ肉をアツアツに熱した鉄板に並べていきます。
じゆーーうっ。

この世界で最も美しい音と評される宇多田ヒカルのFirst Love「いつか誰かとまた恋にうぉおちても~」の”うぉお”に唯一匹敵するのは、この豚バラ肉が奏でる”じゆーーうっ”だけであるというのが我が持論である。
豚バラ肉がカリカリに焼き上がるまでに、マッシュポテトとホワイトソースをこしらえます。
お湯を注ぐだけでマッシュポテトが出来上がる魔法の粉を使い、ものの数秒で完成。次いで、ホワイトソース。鍋にバターを溶かし、小麦粉を混ぜる。牛乳を少しずつ加えていくと、あっと言う間にこちらも完成です。
豚バラ肉、マッシュポテト、買っておいたリンゴのジャムを一つの皿に盛り付けていく。
仕上げにホワイトソースとパセリをかけたら、デンマークおふくろの味ステクトフレスクの出来上がりです。
豚肉、ポテト、ジャム、ソースをぐしゃぐしゃにして、デンマークの人々が愛するその味をおそるおそる口へと運びます。
ん? んまいっ?
私はデンマークに縁もゆかりもありません。なのに「母さん、ありがとう」と、胸の奥から感謝の言葉があふれてくるような優しい味がします。
あるはずのない懐かしさに煽られて、もう一口。
塩気の効いたカリカリの豚肉と無味でモソモソのマッシュポテトに、ジューシーなリンゴのジャムとミルク感強めのホワイトソースが舌の上でかけ合わさる。
この組み合わせは化学反応を起こすのか、心の中にリトルデンマークかあちゃんが立ち上がり、話しかけてくるのです。
「おかえり、外は寒かっただろう? なんたって昨日からコペンハーゲンは大雪らしいからね。あんたが好きなコレ作っといたから、いっぱいお食べ」
毎晩ひとりで冷えた米と納豆を食べる極東の三十路男。
その凍えきった身体が北欧の愛のこもった一皿によって、内側からだんだんと温まっていきます。
リトルデンマークかあちゃんと話したくて、さらにもう一口。
心温まるその味わいに安堵し、今度は自分の方から心の中のリトルデンマークかあちゃんに話しかけていました。
「実は相談があるんだ。子どもの頃からの夢を諦めきれなくてさ。どうするのが正解なんだろう」
すると、リトルデンマークかあちゃんはすべてを見透かした口調で「正解なんて誰にも分かりやしないわ、だからって挑戦しない理由にはならないんじゃなくて」そう言い残し、消えてしまった。
ありがとう、リトルデンマークかあちゃん。
正直、これがステクトフレスクの正解なのか分かりません。でも、レシピには忠実に作りました。
挑戦の答え合わせはすぐにはできない。未来へ歩み続けた、その先でしか分からないのだと、リトルデンマークかあちゃんは教えてくれました。
つまり、デンマークへ行きビッグデンマークかあちゃんが作る本場のステクトフレスクを口にする、その日まで正解は分からない。
でも、私はステクトフレスクに挑戦したことに、いっさいの悔いございません。
もしリトルデンマークかあちゃんに会いたくなったら、ぜひステクトフレスクを作ってみてください。

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