
誰かを待つ時間、その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに、そんな「待つ時間」をテーマにして選曲&言葉を綴っていただきます。
梅雨に始まり終わりの合図はなく、容赦を忘れた灼熱と号泣のようなゲリラ豪雨が、僕らの生温い情緒を襲う日々、続き
神泉の雑踏を歩けば、甘だるく濃厚な香りが鼻先をかすめて、コンクリートとネオンに囲まれた景色とは不似合いな感情を呼び覚ます
白い花びらがひっそりと開き、騒音の中に差し込む一瞬の静けさのように
君の我儘で欲しがりな幼稚さだけを、大袈裟な仕草とかに浮き彫りにして
変化に追い立てられることにも疲れた
猛スピードで時や瞬間だけが、濁りながら何処かに流れてゆく
変わらないものが存在していたとしても、耐えているだけなんだねと、君は今夜も楽しくはなさそうに呟いて
実がならない日々と、無口になる僕と、花は語らずとも、何かを伝えてくれるとしても
香りという形のない記憶を運び、ゆっくりと心だけを揺さぶる
言葉にならない感情を抱えて歩く誰かは、少しの安らぎや懐かしさをポケットにしまって
過去と現在が交差して、出会いや出来事にも満ちた場所で、ふと記憶の扉が壊れるキッカケを待っていた
扉の鍵のひとつが、あの香りに運ばれて、自分の中の静かな部分と再会する
変わりゆく街の中で、変わらずに季節を知らせる最後の砦
香りの向こうに、誰かの記憶と、自分の小さな過去がそっと重なることを願いながら
そっと心にも雨乞いをして、君の迷いを奪い去りたい
原田知世『music & me』(2007年、In The Garden Records)収録
渋谷で君を待つ間に

誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。
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