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幸齢党宣言

2025.06.27 公開 ポスト

「栄養と笑いががんを防ぐ」高齢者医療のカリスマが語る“免疫力”の真実和田秀樹

「壁シリーズ」でおなじみの和田秀樹先生の最新刊『幸齢党宣言 医療改革で、世界もうらやむ日本を創る』が、2025年5月28日に出版されました。

政治・政策の視点から、厚労省・製薬業界・医学教育の抜本的改革を訴え、幸せ多き日本への大改造計画をまとめた一冊。本書から一部を再編集してご紹介します。

*   *   *

ワクチンを打っても、免疫力が落ちては意味がない

実はアジア系アメリカ人の平均寿命は、日本人より長いことが明らかになっています。

医療は日本より恵まれていないのですが、食生活がアメリカの一般国民に近いことが理由と考えられます。

以上もろもろをヒントに、もう少しまともな栄養学を啓蒙していく(テレビ局は減塩商品やダイエット商品のスポンサーがいるので、この手の疫学調査と違う健康常識を垂れ流しています)ことを幸齢党が動き出したら、訴えたいと思います。

もう一つ、がんで死ぬ人が多いのに、ないがしろにされているのが免疫学です。

コロナ禍の折にも、がまんがまんの自粛政策が強いられたのですが、NK〈ナチュラルキラー〉細胞の名づけの親で、日本における免疫学の権威である順天堂大学の奥村康先生は、外にも出ない生活を続けていては免疫力が落ちてかえって感染症が広まったり、重症化すると心配しておられました。

本来、ウイルス感染症というのは、薬物治療が困難で、ワクチン接種などで対応するものですが、ワクチンができるまでは自分の免疫力を高めておくことが大切になります。

コロナ対策に欠けていた“免疫”の視点

新型コロナが流行る前までは、風邪予防として、ビタミンCを多く摂ろうとか、十分な栄養を摂ろうとか、適度な運動をしようと勧められたのは、すべて免疫力を高めるためです。

ところが、新型コロナの専門家会議には、免疫学の専門家はおらず、奥村先生のいうところの免疫力を落とすような政策が採り続けられました。

楽しみがなく、ストレスだらけだと免疫力は落ちます。

家に閉じこもり、運動不足で食欲が落ち、栄養が足りないと免疫力は落ちます。

運動をろくにしていないと免疫力が落ちます。

報道で脅されて、不安が強いと免疫力が落ちます。

ついでにいうと、ワクチンというのは、コロナウイルスに対する免疫をそのまま身体に入れるのでなく、B細胞という免疫細胞に学習をさせて、コロナにかかっていないのに、コロナウイルスが侵入してきたときに、抗体を作るメカニズムで働くものです。

ただ、身体が衰弱していたり、栄養が足りなかったり、超高齢者であったりなどの理由でB細胞に元気がないと抗体を十分に作ってくれません

だからワクチンを打っても、亡くなる方がいるのです。

コロナ禍の時期には、さまざまな医師のコメンテーターが出演し、危険をあおりましたが、免疫については無知で、脅すばかりで、免疫力をかえって落とすような発言をする人が多くいました

日本人よ、がまんしない美徳をもちましょう

免疫というと感染症対策の側面ばかりが考えられがちですが、がんの予防にも重要です。

人間は、身体じゅうで細胞分裂を常に起こしているのですが、その中で1日数千個から数万個の出来損ないの細胞を作ります。

それを掃除してくれるのが、NK細胞と呼ばれる免疫細胞です。

これが出来損ないの細胞を全部殺してくれれば、がんにはなりません。逆に食べ残しがあれば、それが分裂していってがんになるというわけです。

もちろん、これはまだ仮説ですが、私はかなり妥当な仮説と思っています。

つまり、NK細胞を元気にしておけば、がんの予防になるのです。

前述の奥村先生によると、NK細胞というのは、栄養状態や心の状態の影響を受けやすいものです。

つまり、十分な栄養を摂り、なるべくストレスを受けず、受けた時にはそれを解消し、楽しんで生きたほうがNK細胞の活性が高まるのです。

日本人はがまんを美徳のように考えていますし、がまんがまんの食生活が健康につながると考える人が多いようです。

また栄養過多の害ばかり問題にして、ダイエットはいいことのように思う人も多いようです。

しかしながら、実は、食を楽しみ、十分な栄養を摂るほうが免疫力は上がるのです。免疫学に対する啓蒙が足りていないから、がまんがまん型の健康常識が蔓延し、いまだにダイエットを望む人が多いのです。

がんで死ぬ人が多い日本では、このような免疫学の啓蒙は喫緊の課題です。

健康長寿に不可欠なのは“楽しみ”と“笑い”

実は、NK細胞の活性は歳をとるほど下がることがわかっていて、40代くらいには20歳のときの約半分、70代になるとそのまた半分に落ちてしまいます。

歳をとるほど楽しみ、十分な栄養を摂ることが健康長寿に直結するのです。

もう一つ、NK細胞の活性を上げるものに笑いがあります。

笑うとNK細胞の活性が上がることは、各種調査や実験で明らかになっています。

ところがテレビ局は、箸が転んでも笑うような若者を笑わせることはできても、高齢者を笑わせることのできない低レベルの芸人ばかりを出演させ、高齢者は笑うチャンスを奪われています。

免疫学の啓蒙とともに、マスコミの使命として、多くの人を笑わせることのできるような番組の制作を、とくにテレビメディアには求めたいと思います。

本当は大切なのにないがしろにされてきた栄養学と免疫学を、学問として応援していきます。

*   *   *

この続きは幻冬舎新書『幸齢党宣言 医療改革で、世界もうらやむ日本を創る』でお楽しみください。

関連書籍

和田秀樹『幸齢党宣言 医療改革で、世界もうらやむ日本を創る』

人生100年時代だが、ヨボヨボでの長生きは避けたい。 優れた国民皆保険制度がありながら、薬漬け、医師不足、無駄な医療費、そしてニセ健康情報の氾濫により、日本は人権と人命が軽視される国に転落した。 本書は、政治・政策の視点から、厚労省・製薬業界・医学教育の抜本的改革を訴える。 年齢差別禁止法の制定、総合診療医倍増、歩道のベンチ増設、AI介護ロボット導入等、近未来への具体案も充実。 「幸齢者」が増えれば、介護・医療費が減り若い世代の手取りも増える。 高齢者医療のカリスマによる、幸せ多き日本への大改造計画。

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幸齢党宣言

「壁シリーズ」でおなじみの和田秀樹先生が、幸せ多き日本への大改造計画を記した一冊です。本書から、一部をご紹介します。

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和田秀樹

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』『70歳の正解』『マスクを外す日のために』『バカとは何か』『感情バカ』(すべて幻冬舎新書)など著書多数。

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