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じゆうちょう「Q」

2025.06.28 公開 ポスト

あの夜、山中で起こったこと 第4話「捕まえたれ」フェイクドキュメンタリーQ

フェイクドキュメンタリーQによる連載4回目の今回は、懐かしの「宇宙人」がテーマ。この連載では、とある事情にてお蔵入りとなった文章を、一部再編集し公開できるようになったものを掲載します。軽い気持ちでソレに近づくと、大変なことになるかもしれません……。

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未知のオーパーツが日本で発見!? “宇宙人を捕まえた男”の衝撃告白——2025年 某オカルト雑誌に掲載予定だった記事

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大阪に、まだ人々に知られていないオーパーツが存在するという情報が編集部に入ったのは、昨年の暮れのことである。

 

本誌の読者であれば無論ご存知だとは思うが、新たに不可思議な世界への扉を開いた諸君のため、オーパーツとはなにかを簡単に説明しておこう。
OOPARTS(オーパーツ)はOut-of-Place Artifactsの略称で、直訳すれば「場違いな人工物」となる。考古学・地質学などの発掘調査の際に出土した、その場所や時代に作られたとは到底考えられない物品を指す。有名なものではアステカのクリスタル・スカルやアンティキティラ島の機械などがある。
現在ではほとんどが技術的に可能であったか、あるいはフェイクということが明らかになっているが、それでもオーパーツの存在は我々の好奇心を惹きつけてやまない。
まだ世に出ていない新たなオーパーツ——という表現は矛盾しているようだが——は一体どういったものなのか。逸る気持ちに背中を押され、我々は大阪へと飛んだ。

 

「俺な、宇宙人捕まえた事あんねん」
そう言って話を始めたのは、大阪で小さな居酒屋を営むAさん(55)だ。
Aさんは今から40年前、1980年代に大阪河内長野で「暴走族」をしていた。
グループのメンバーは15人ほど。7、8台の改造バイクにまたがり、排気音を高らかに鳴らしながら夜な夜な爆走していたという。

当時の集合写真(Aさん提供)

「『南河内・■■會』言うてな、俺は上から3番目やった。田舎の道やからな、夜はほとんど車走ってへん。パトカーも全然やで。やりたい放題やったわ」。

ある日、いつものように皆でバイクを走らせていると、どこからか大きな衝撃音が聞こえた。
「それが、飛行機でも落ちたんか?思うほどおっきい音で、みんなバイク停めてなんやなんやて言い合うたんや」
音の出どころを探し辺りを見回すと、■■山の山頂付近から、一筋の赤い光が空に向かってまっすぐ伸びていた。
「山が燃えてるとかそういうのやないねん。ほんまビューンと伸びた光線やで、山の中から宇宙の方までビューンと伸びとったんや。それ見て総長がやな、タケモト言うんやけど、そいつが『あれUFOちゃうか、墜落したんかもしれん、行こうや』言いだしてな。みんなもテンション上がってもうて、ほなその光の根本まで行ってみよいうことになったんや。『捕まえたれ』言うてな、アホやろ?」

一行は山の麓でバイクを降り、暗い山中へと入っていった。懐中電灯などは持っていなかったが、例の光線の明かりが彼らの道中を照らしていたのだという。赤い薄明かりに照らされた山道は異様な雰囲気だったに違いない。
山頂に近づくと、臭いが変わった。どうも焦げ臭い。
立ち止まった彼らは、周囲に大きな金属片のようなものが散らばっているのを発見する。一見、鉄やアルミニウム合金のように見えたが、Aさんが拾ってみるとそれは非常に軽かったという。
「ほんなら誰かが『おい!』って大声出してな、そいつの方に近づいたんや」
そこでAさんが見たのは、大きくえぐれた地面の中央にある、一辺3メートル程の巨大な立方体だった。
その立方体から、光の筋が天に向かって伸び続けていたのだという。
「円盤やなかったんや、サイコロみたいなやつやった」
一部の面は壊れていたが、中は見えなかった。ただそこからスライムのようなドロドロとした液体が流れ出していた。

Aさんが描いた現場イラスト

「俺はそのドロドロが宇宙人やないかと思ったんや、死んだんちゃうかって」
その時、後ろの方から悲鳴が聞こえた。
駆けつけると、メンバーの一人が頬に切り傷を負っていた。
「ネコに引っかかれたみたいな傷でな、『宇宙人や、襲われた!』ってそいつ言いよんねん」
思わず周囲の森に目を向けると、銀色をした人型のナニカが逃げていこうとするのが見えた。
さすが血気盛んな暴力団の若者たちだけあって、木刀や石を手に、怒声を上げながらソレを追ったのだという。
「タケモトがそいつ捕まえよってん。さすが総長やで、俺らも急いで捕まえに行ったんや」
総長に加勢する形でその銀色の生物の動きを封じようとしたが、体表がヌルヌルして上手く掴めない。
「ウナギみたいにな、ヌルヌルしとんねん、全然掴まれへん」

Aさんが描いた宇宙人イラスト

「そんでみんなの手からスポーンと抜けてな、そいつ山の下転がっていったんや」
一同は落下した宇宙人をなおも追った。バイクを停めた山の麓まで戻ってきたが、滑落したであろう地点に宇宙人の姿はない。
しかし、車道をよくよく見ると、ヌラリと光る箇所があった。宇宙人の体表から出たと思われるヌルヌルした液体が、点々と跡を残していたのだ。
Aさんたちはバイクに跨がり、その痕跡を追った。
「モトキいうて若い奴がおってんけど、そいつが調子乗ってバンバン飛ばして先頭走ってたんよ、ほんならドンっ!て音がして宇宙人はねよったんや。
横にあった田んぼの方に転がっていってな、ピクリとも動かんかったんよ。殺してしもたんや。なんかな、みんなもサーッとテンション下がってもうて、『どうしょう?どうしょう?』言うてな。その場の空気がめっちゃ下がってん、さっきまであんなに盛り上がってたのに。ほんでモトキも責任感じたんやんやろな、タケモト(総長)の顔色伺いながら宇宙人に心臓マッサージし始めてな、人工呼吸も。見よう見まねで適当にやってたんちゃうかな、でもアカンかった。宇宙人もその場の空気も」

Aさんたちは結局、その宇宙人を近くの山中に埋めた。

翌日、立方体のUFOをもう一度見に行こうと■■山に向かうと、黒いスーツ姿の男達がウロウロしていた。警察や地元の人間には見えなかったという。
「山に入ろ思うたらそいつらに止められてな、『変なモノ見なかったか?』って聞かれたわ。一旦トボけたけどな、あれは間違いなくあの宇宙人を探しとった」
そして彼らは考えた。その連中に、宇宙人の死骸を高値で売りつけてやろうと。
バイクを駆り宇宙人を埋めた場所に戻った彼らだったが、そこで見たのはぽっかりと空いた穴だった。
「きっと埋めたあと生き返ったんやろうな。そんで土の中から() うてでてどっか行ってもうたんやろ」
その後の宇宙人の行方は分かっていない。
「ただな、穴の中に変なモノがあったんや。宇宙人の忘れ物か知らんけど」
そう言って立ち上がったAさんは、店の神棚の横からとあるモノを持ってきた。
「人に聞いたら『オーパーツ』ちゃうかって言われた」

オーパーツを手に、にっこり笑うAさん

「当時みんな欲しがらんかってん、絶対危険や言うてな。実は宇宙人に会った3日後かな、モトキいきなり死んだんよ。みんなモトキが宇宙人に人工呼吸したせいやって言うてたわ。
まあ俺もそうやと思う、知らんけど」

……果たしてこれは、本当に「オーパーツ」なのだろうか?
どこか釈然としない思いを抱えながらも、我々はAさんにお礼を言い、大阪を後にした。

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本稿は掲載前に取材対象者が音信不通になったためお蔵入りとなった。

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じゆうちょう「Q」

この連載では、とある事情にてお蔵入りとなった文章を、一部再編集のうえ公開できるようにし、掲載していきます。呪われたモノ・こと・人…あなたのまわりにも「それ」はあるかもしれません。

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フェイクドキュメンタリーQ

「フェイクドキュメンタリーQ」は、映像制作を生業とするクリエイターの集合体で、YouTube上でホラー系のフェイクドキュメンタリー作品を不定期に公開。テレビ局の未放送VTRや素人動画を再編集するというフォーマットを採用し、その高いクオリティと迫真性で視聴者から高い評価を得ている。 初の著作『フェイクドキュメンタリーQ』(双葉社、2024年)は累計発行部数6万部を突破。
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@pro9ramQ 
X:https://x.com/pro9ramQ 

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