
“怪しい人物=何もしていない説”、またしても立証
熱心なミステリードラマ視聴者の中では“あるある”のひとつであろう、
明らかに怪しい人物は大抵何もしていないというセオリー。
「恋は闇」でもそのセオリーは健在であった。
夜道で万琴へ抱き着き、浩暉(志尊淳)からは「多分、俺の親父」という雑な扱いを受けながら、ひとり謎の行動を続けていた設楽貫路(萩原聖人)は、トップクラスに“何もしていなかった”。
部屋にはホルスの目を模した“それっぽい切り抜き”を貼り、ことあるごとに人に刃物を突きつけ、いかにも「私は怪しい男です」と言わんばかりの風貌。
そして番組の総合演出:野田(田中哲司)との意味深な会話を繰り返していた……。

ここまで来ると流石に何かしらは事件に絡んでいると思わざるをえなかったが、蓋を開けてみればこの男は本当に何もしていない。
久美子殺害については浩暉を殺人犯だと決めつけ、今回のホルス事件でも「浩暉は俺に罪をなすりつけようとしているんだ」と思い込み……。
「だったら正々堂々疑われてやんよ!!」と、現場に度々登場していたという始末。
もちろん過去の母親殺害事件に関して貫路は冤罪ではあると思っていたが、現代の事件においてもここまで無関係だったとは驚きだ。
過去の回で浩暉は「普通って何?」と刑事に問うていたが、こと貫路考察においては「普通(セオリー通り)に考えれば何もしてないよね」でよかったのだ。
“普通”という言葉に何かと疑問を呈しがちな現代社会であるが、やはり“普通”という考え方でいいことも多いし、穿った見方をして真実から遠のくこともあるのだなと学んだ。
そして、貫路よ……。話し合えばよかったのでは?
“話し合えば解決できた”、これもドラマあるあるのひとつであろう。まあ人間はそれが出来ないから誤解や争いは生まれるわけで……。
情報番組の司会者役として本作に出演している児嶋一哉氏のお笑いコンビ:アンジャッシュの持ち味は“すれ違いコント”だ。
お互いが一つの事象に対して異なった考えや見方で、すれ違ったまま進んでとんでもない事が起きる。そんな“すれ違いコント”を貫路と浩暉はずっとやっていたように思えるし、児島氏のキャスティングによりそのヒントを与えてくれていたのかもしれない……。(違う)
そんな貫路の真実が明らかになると同時に、みくる(齋藤飛鳥)が過去の母親殺害事件の犯人だったことも判明し、設楽家の謎は概ね今回の第9話で回収された。
そのためいよいよ真犯人考察も大詰めだ。最終話が控えるのみなのでそれはそうなのだが、このフェーズが一番楽しいと言っても過言ではないので真剣に考えていきたい。常々唱えてきた向葵(森田望智)真犯人・唯月(望月歩)実行犯説が一番有力かに思えたが、長年考察をやっているとそこに対しても色眼鏡で見てしまう。
その色眼鏡は最後にかけるとして、真面目に真犯人考察をやっていこう。
向葵単独犯が可能になる突破口は一つ
向葵が真犯人として疑わしい理由は下記の通りである。
①自身が高校時代に襲われたというバックボーンがある。
→この事件を担当した弁護士が設楽久美子(紺野まひる)だったとして、不当な扱いをされたために復讐をした?
(1つ目の刺し傷はみくるだが、残りの12箇所は別の人物である可能性が高い)
②看護師なので被害者女性たちが含まれる健康診断リストを見る事ができる。
③真犯人に見られる几帳面さを持ち合わせている
(お好み焼きのソースのかけ方、ノートの書き方など)
などが挙げられる。
久美子の事件から10年後に連続殺人が行われているのは、貫路の出所のタイミングに合わせその疑いを向けるため。
そして“みくるが久美子を殺害した”という証拠を真犯人が握っているために、浩暉はそれを元に脅迫され、なにかと事件に関与せざるを得ない……。と言った構図だろうか。
しかし、5件目の殺人の際に張り込みをしていた万琴を襲った黒づくめの人物の特徴に向葵は当てはまらない。
そのために事件の計画をしているのは向葵だけども実行犯はデリバリー配達員の唯月なのではないかと考察をしてきた。
彼は異常なほどコミュニケーション能力が高く、特に女性に取り入るのがうまい。

実行犯は被害者宅の玄関から侵入しているため、顔馴染みであればすんなりと玄関から入れるだろう。被害者が1人の時を狙うには相当調べ込む必要があるが、唯月ほどのコミュ力があれば話の中で引き出せるのではないかと思う。
デリバリー配達のお届け完了時間は、それなりに操作(時間をずらして配達完了ボタンを押すなど)できるためにアリバイ工作も容易であろう。
今回の第9話では、万琴の家を訪れた際に唯月が“注射器”のようなものを落としたこともSNS上で話題になった。
それは犯行時に使用する筋弛緩剤か、採血用のものなのか、はたまたラベンダーの香水か……。
その辺りの詳しい考察はぜひとも私たち6969bの動画をご覧いただきたい。
かねてから現在の連続殺人に関しての動機を探るのは難しく、さらには第9話で“始まりの場所”として劇中で初登場のスーパーが出てきた。
数々のヒントはすでに散りばめられているにせよ、動機についてはなおさら後出し(悪い意味ではなく)の情報でしか、わかり得ないのかもしれない。
『恋は闇』というタイトルに準えるなら、向葵の正聖(白洲迅)への恋心が暴走した結果が犯行動機なのかもしれないし、唯月とみくるの知られざる関係性が明らかになった時に動機が見えてくるかもしれない。
この動機について確固たる根拠が見えてこないために、主要人物と関係性の遠い唯月が実行犯だけに止まる考察をしてきたが、動機によっては真犯人兼実行犯の可能性も十分にある。
……とも思ったのだが、やはり“健康診断リストという共通点がある被害者女性の情報”を唯月が知り得るのは病院関係者の協力無くしては難しいし、刑事の大和田(猫背椿)殺害の際は防犯カメラの完璧な死角を熟知していたのも、病院関係者の関与がないと成立しないだろう。

そうなるとやはり向葵が実行犯:唯月の上にいる真犯人(計画・指示)として置いておいた方が辻褄は合う。
しかしもう一つの説、向葵単独犯説も“一つのピース”を解決すればまだ無くなりはしない。先ほどは「5件目の殺人の際に万琴を襲った黒づくめの人物の特徴に向葵は当てはまらない」と述べたが、この人物が浩暉だったとしたらどうだろうか。
浩暉は傷ついた万琴に駆け寄り、「ごめん……」と気が動転して申し訳なさそうにしていた。
この万琴を襲うことが、弱みを握られた浩暉への真犯人からの指示なのか、犯人を炙り出すために浩暉が自ら行ったものかは不明だが、いずれにせよあの黒づくめが誤ってやりすぎてしまった浩暉だったとすれば、実行犯も実は向葵だったという説も残ってくるのではないか。
実行犯が向葵として浮上しない一番のピースである、現在世に出ている真犯人の身体的特徴(身長175~180cm程度)の問題もこれであればクリアできるのではないかと考えた。
最近の浩暉は色々とやりすぎなので、もしかしたら万琴を襲った時からもやりすぎが発動していたのかも……と私は思い始めた。
メタ考察からは逃れられないドラマ考察脳
ということで、最後の真犯人考察をしてきた。
ご覧の通り、真犯人の動機や血液云々に関しては思いっきり逃げた。
そして逃げ切らせていただく。なぜならあまりにもわからないからだ。
しかし、実際に浮上しているピースを理論立てて考察することは出来たのではないかと思うので、あとは妄想も加味して動機などを考えて欲しい。(丸投げ)
最後に色眼鏡を装着……っと。
こんなにも9話で向葵が怪しいと振りすぎていると「ほな違うか~」と思ってしまうのが私たちドラマ考察班である。それは理論もへったくれもなく演出から見るとこうだよね、という紛れも無い色眼鏡で見る……あるいは逆張りというべきか。
ミステリードラマは視聴者をあっと驚かせてなんぼだ。そこを考慮すると、さすがに“万琴の合鍵をもらう”はやりすぎなのでは? “あのラベンダーティー”は意味深演出すぎないか? と思わざるを得ない。
極め付けは“どこかへ向かう向葵”。向葵に振りすぎているのは間違いない。多くの視聴者も向葵が真犯人と思っているだろう。
……そう思いきや唯月が実行犯として9話序盤で浮上!「ああ騙された~」と視聴者が思っているところに「でもその裏には向葵がいました!(ドンッ)」という展開。完璧に見えたぞ。
私がドラマを演出するのであればそんな二段構えをするな……とにやにやしているが、本当にどうなるかわからない。
『恋は闇』という超難関ミステリー。
毎話ごとに謎が深まる入り組んだミステリーと、浩暉と万琴の火10に引けを取らない恋愛描写の二つの側面で視聴者をドキドキさせてくれたこのドラマもいよいよ最終回。
演出的なセオリー通り(=向葵に振りすぎだから犯人ではない)にいくのか?
直感(=向葵が犯人)を信じた方がいいのか?
あなたの考察の着地点を決めるこの1週間。
私は向葵×唯月共犯説でいく。
「第9話」のリアルタイム考察の様子はこちら↓
著者:ケメ・ロジェ
ドラマイラスト:サク
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3人組ドラマ考察系YouTuber 6969b(ろくろっくび)による考察記事の連載がスタート!
今話題のドラマの真犯人は?黒幕は?このシーンの意味は?
物語を深堀りして、噛むようにじっくり味わっていきます。
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