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「選べない」はなぜ起こる?

2025.06.24 公開 ポスト

モノやお店の「高評価=当たり」と信じている人の“大いなる勘違い”小島雄一郎

評価やレビューが溢れる時代、私たちは「ハズレ」を避けようとするあまり、本当の「当たり」に出会えなくなっています。

生活者の"選ぶ瞬間"を分析し続けてきた元・電通プランナー、小島雄一郎さんの著書『「選べない」はなぜ起こる?』(サンマーク出版)が出版されました。「選択疲れ」の時代にモノ・サービス・人間関係まで含めた「選ばれる構造」をマーケティング・心理・社会の視点から解き明かし、「なぜ選べないのか」から「どうすれば選ばれるのか」への視点転換を促してくれる一冊。本書から、一部をご紹介します。

*   *   *

当たりではなく「当たり前」を選んでいる

星5つ、いいね1000件超え、満足度98%。

判断材料に溢れた今、私たちの周りには、そんな「最適解」の選択肢が溢れている。

「その中から選べば、間違いはないはず」

私たちはどこかでそう思っている。しかし、そんな「最適解」には、ある落とし穴が潜んでいる。世間の高評価に基づいて選択すると、私たちは「当たり」という感覚からどんどん遠ざかっていくのだ。

評価を見るほど「当たり」から遠ざかる

現代では、あらゆるモノやお店、人が評価対象になり、それらが点数化され、ランク付けされている。その中でいつしか「高評価=当たり」、「低評価=ハズレ」という固定観念が生まれた。

しかし本来の「当たり」の意味は違う。くじ引きなどにおける「当たり」とは、偶然に自分が喜ぶものを引き当てることだ。

偶然出会った自分だけの喜びこそが「当たり」の本質であって、みんなから評価済みだと知った上で選んでも、「当たり」ではない。

それは「当たり前」を選んでいるだけだ。

「世間の当たり」と「自分の当たり」は一致しない

また、「世間で高評価のもの=自分にとっての当たり」とも言い切れない。図を見てもらいたい。この図で言うと、②の存在を忘れてはならない。

選択肢が多くて選べない時代は、縦軸のような世間的な点数評価が盲信されるため、私たちはつい上部にある①②を「当たり」、下部にある③④を「ハズレ」として認識しがちだ。しかし本質的な意味で言えば、当たりとは③のことを指しており、ハズレとは②のことを指している。

例えば飲食店で言えば、世間の評価が高い①②のお店は混んでいるし、人気店ゆえに値段も高い。それなのに自分に合わない②だったら、その選択は期待と現実の落差が最も大きいことになる。つまりこれがハズレだ

日本ではただでさえ若者の可処分所得が少ない。限りある財産を費やして、ハズレを引いてしまったら目も当てられない。

だったら③④の中から③を見つけるほうがいいだろう。

世間の評価が高くない③④のお店は競争率が低く、価格も高騰していない。それなのに、自分にピッタリ合う③のお店が見つかったなら、それは予想を超える喜びをもたらす選択と言えるだろう。

これこそが本来の「当たり」だ。

もちろん④を引いてしまう可能性はあるが、事前の期待値が低いため、精神的ダメージは少ない。そこに意外性はないのだ。

たしかに、①の「当たり前」は、無難な選択肢かもしれない。

しかし、③の「自分にとっての当たり」には、ほかの何とも代え難い喜びがある。それは評価という物差しでは測れない、自分だけの「当たり」を見つける楽しさだ。人気店とは違う魅力、話題の商品とは異なる良さ。そんな思いがけない出会いは、自分の好みや価値観を広げてくれるだろう。

また、この「当たり」の感覚が近い人とは、きっと仲良くなれる。世間的な評価が高い「当たり前」のお店で好みが一致するのは、それこそ当たり前だが、「当たり」の感覚が近い人は、そう見つからない。

だからこそ「当たり」は運命的な出会いをも引き寄せるのだ。

小島雄一郎『「選べない」はなぜ起こる? 』

“選ばれる”とは、優れていることよりも、「決めやすくすること」なのです。 ・良い商品なのに、なぜか売れない ・がんばって発信しているのに、手応えがない ・選ばれない理由がわからない そんな違和感を抱えるマーケター、営業、企画職、クリエイター、店主、PR担当…… “選ばれる”を仕事にしている人へ。視点が変わる1冊。

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「選べない」はなぜ起こる?

2025年6月11日発売、小島雄一郎著『「選べない」はなぜ起こる? 』試し読み

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小島雄一郎

2007年に株式会社電通へ入社。3年間の営業経験を経て、第1回販促会議賞(現:販促コンペ)の受賞をきっかけにプランナーに転向。その後、同賞で5大会連続入賞。電通では社内ベンチャーとして大学サークルアプリの新規事業を立ち上げ、2014年のグッドデザイン賞ビジネスモデル部門を受賞。その後は生活者研究を専門としながら、子ども向けゲーム開発などで、世界3大デザイン賞であるRed Dotデザイン賞(ドイツ)や、D&AD賞(イギリス)、キッズデザイン賞(日本)を受賞。2023年に立ち上げた事業を売却し、電通を退社し独立。2024年より、自ら企画書を送って自宅に誘致したお酒のセレクトショップ"IMADEYA"の社外取締役に就任。著書は『広告のやりかたで就活をやってみた。』(宣伝会議)。日本経済新聞社のnoteである「日経COMEMO」で新時代のキーオピニオンリーダーとしても連載中。

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