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神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること

2025.06.08 公開 ポスト

6月 五感と空間を磨く

平安時代に貴族がやっていた「運のいい人を選ぶ、合理的な手段」とは?桃虚(神職/ライター)

神社の行事は、平安時代時代から続いているものが数多くあります。

現代においても、神社の行事やしきたりから、平安貴族の暮らしが、見え隠れします。

さて、今回は、ちょっと不思議な平安時代の遊びから、「運のいい人」を見分ける方法を神職の桃虚さんから教えていただきました。

神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること』より、貴重なお話。

*   *   *

平安貴族は、季節を愛(め)でながら「運の良さ」を競っていた?

神社にいると、雨上がりには、まず鳥たちの声が聞こえてきます。その声で、「あ、雨やんだな」とわかるのです。

ほどなく、参道にもおまいりの人がちらちらと見えはじめ、野良ネコも境内を横切っていきます。ひっそりと雨やどりしていた動物たちが動きだす気配を感じて、「人も動物なのだな」と当たり前のことに気がつく瞬間です。

この瞬間が「草むしり」の絶好のタイミング

雨のあとは地面がやわらかくなっているので、雑草が根の先まで簡単に抜ける、と私に教えてくれたのは、長年、神社の境内の落ち葉そうじをお手伝いしてくださっている氏子(うじこ)さんでした。

彼女は神社の境内や外まわりをそうじしてから銭湯に行く、というパーフェクト・デイズをもう15年ほど続けてきた方で、かっちかちの地面にがっちり生えている雑草を、T字の鎌で必死に取ろうとしている私に「今やっても無駄やで。雨降ったあとにやらんと」とアドバイスしてくださったのです。

ベテランの彼女が言うのであれば真実だろうと、その日は草むしりをやめ、雨のよく降ったあとに草むしりをしたところ、「今までの苦労は何だったんだ!」と思うほど、楽に、じょうずに、根の先まで抜けました。

私はこのとき、草むしりでもっとも重要なのは、使う道具でも、力のマネージメントでも、やる気でもない。タイミングである。ということを学びました。

(イラスト:宮下 和)

平安時代に話はさかのぼりますが、貴族の間で「根合わせ」という遊びがありました。抜いてきた植物の根の長さを競うという、現代の一般人からすれば謎の遊びです。

そもそも、平安時代の宮中では、持ち寄ったものの優劣を競う「合わせもの」という遊びがよく行われていました。持ち寄るといっても、現代のように、ものにあふれた世界ではありませんから、身のまわりにある自然のものや、歌など、目に見えぬものがほとんど。

植物の葉っぱの大きさや根っこの長さ、貝がらの形や色合いの美しさ、めずらしさ。こういったものを持ち寄ってくらべたり、それを題材にして歌を詠み、優劣を競ったりする遊び。

平安貴族は、季節を愛でるということを、勝負事の遊びにしていたのですね。

植物の根の中でも、菖蒲(しょうぶ)の根は長いのにやわらかくて、無理やり抜こうとすると途中で切れてしまう、つまり、抜き方次第で長さに差が出るので勝負がつきやすい植物でした。

「菖蒲の根合わせ」は大人気の遊びになり、これが「根合わせの儀」として5月の行事に定着しました。そして、ものごとにふたつの選択肢がある場合の決定の方法としても、使われました。

(イラスト:宮下 和})

平安時代の5月は旧暦なので、新暦だと6月ごろですから、季節的にはちょうど6月ごろ、貴族たちは菖蒲の根っこを持ち寄って「根合わせ」をしていたのです。

いやいやいや。絵、香、扇、貝、菊などが「合わせもの」のお題になったのはわかる。

わかるけども、「植物の根」は、なんか唐突すぎじゃないのか!? と思いますよね。

けれど、私は6月の雨あがりに草むしりをしていて気がついたのです。

「根合わせ」は、その人物の「タイミングのよさ」を競うものではないか? と。

タイミングがいい人というのが具体的にどういう人か、考えてみます。

日ごろからそのことをしている。状況分析ができる。だから小さな変化に気づく。よって、「今だ!」という頃合いが感覚でわかる。……という人ですよね。植物の根をじょうずに抜くなんて、これらができていないとぜんぜんダメ。

タイミングがいい人は、神様とのタイミングを合わせるのもじょうずです。

それがつまり「運のいい人」

だから、根合わせは、「運のいい人を選ぶ、合理的な手段」だったのではないかしら? そんなふうに思ったのです。

ああ、いまが平安時代なら、私は「根合わせ」で無双して、めっちゃ出世できたかもしれません……。

(つづく)

関連書籍

桃虚『神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること』

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桃虚 神職/ライター

1970年インド(ムンバイ)生まれ、東京育ち。 ライター業を経て、大阪府枚方市の片埜神社にて神職歴20年。 「神社新報」で連載など。筆名の「虚(とうきょ)」の、「桃」は無邪気の象徴、「虚」は素直な心を表す

最新刊に『神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること』。

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