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アルパカ通信 幻冬舎部

2025.05.27 公開 ポスト

岡本雄矢『僕の悲しみで君は跳んでくれ』/矢樹純『彼女たちの牙と舌』- 人間ドラマに心揺さぶられる小説2作アルパカ内田(ブックジャーナリスト)/コグマ部長

幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
矢樹純『彼女たちの牙と舌

仕事も家庭環境も異なる母親四人が
出会ったきっかけは、進学塾の保護者説明会。
定期的に集うようになるが、
ある日、詐欺事件に巻き込まれ……。
笑顔の裏に隠された嘘、​​​​​​嫉妬、後悔、嫌悪。
敵は詐欺グループか、それとも笑顔のママ友か。

一方こちら、気鋭の作家による犯罪サスペンス。舞台は横浜。主人公は同じ中学進学塾に子供を通わせている四人の母親たち。その一人である衣織は、ある日仲間の知絵から相談を受ける。知絵はSNSで見つけた「高収入バイト」で、コインロッカーから別のロッカーに荷物を移動する仕事などをやっていたのだが、スズキと名乗る雇い主から言いがかりを付けられ、知絵が働く訪問看護の利用客の個人情報を渡せと脅されているという。〝身バレ〟もしているので、警察に相談することはできないし、夫はがんの療養中で頼れない。結論は出ないまま、一週間後、市内の高齢者宅で強盗事件が発生。被害者は軽傷で済んだものの、知絵の訪問看護の利用客ではないかと衣織は怪しむ。案じた衣織がほかの仲間に相談すると、全員にスズキからメッセージが届く。「あんたたちがやったことを知っている」。やがて、先の強盗に関連するとみられる殺人事件も発生。

ごく普通に生きていた女たちが、凶悪犯罪に巻き込まれていく。ごく普通の母親が簡単に犯罪に手をそめていく。親しく付き合っていても、裏では昏い秘密を抱え、簡単に牙をむく。スリリングな展開に、読み終えても心拍数が上がりっぱなし。現代の病理を描き切った傑作だが、いつの世も変わらぬ人間の闇深さを描き切った著者の巧みさに脱帽だ!

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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。

幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!

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アルパカ内田 ブックジャーナリスト

内田剛(うちだたけし)。ブックジャーナリスト。約30年の書店勤務を経て2020年2月よりフリーランスに。NPO法人本屋大賞実行委員理事で創立メンバーのひとり。文芸書をメインに各種媒体でのレビュー、学校や図書館でのPOP講習会などを行なっている。これまでに作成したPOPは6000枚以上で著書に『POP王の本!』『全国学校図書館POPコンテスト公式本 オススメ本POPの作り方(全2巻)』あり。無類のアルパカ好き。
Twitter @office_alpaka

コグマ部長

太田和美(おおたかずみ)。幻冬舎営業本部で販売促進を担当。本はミステリからノンフィクションまでノンジャンルで読みまくる。アルパカ内田(内田剛)さんとは同学年。巨人ファン。
Twitter @kogumabuchou

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