
ミステリーパートの加速に乗り遅れるな!
今からでも間に合う真犯人考察
想像してみて欲しい。
あなたが今いるのは、心霊スポットとして噂になっているひと気がない深い深い森の中。その場所では数年前に凄惨な事件があり、その事件で亡くなったとされる女性が幽霊となって現れる……とSNSを賑わせている。
人っこ一人いないその場所で、事件の跡と思われる血痕を発見した……その時。
目の前にはスーツを着てメガネをかけた中年の男の姿が。
驚く私をよそに、その男は微動だにせず黙ってこちらをじっと見つめている。
勿論その男性に心当たりはない。
ただ一つわかるのは、その男は幽霊ではなく生身の人間であるということ。
男はこの深い森の中、何の目的でこの場所にいて、何を考えているのか。
その男から視線を逸らしたあとのことは 何も覚えていない。
突然何を言い出すのかと困惑したと思うが、ひと気がない場所にいるはずのない人がいることが幽霊よりも何よりも恐怖なのではないか……と伝えたかった。
シチュエーションはかなり異なる上、スーツ姿にメガネをかけた中年男性でもないが、「恋は闇」第5話のラストは、まさにそれだった。
ひと気のない場所に、いるはずのない齋藤飛鳥氏が突然現れ、観るものに驚きと恐怖を与えた。
私たちが生きる現実の世界で、いるはずのない場所に齋藤飛鳥氏が突然現れたら恐怖よりも喜びが勝ってしまうのは間違いない。
しかしドラマの中の世界で見知らぬ謎めいた女が突然現れる恐怖は想像を絶するものだろうと思う。
浩暉(志尊淳)が現れると誰もが思っていたあの状況で予想だにしないこの展開は、「恋は闇」ミステリーパートのギアを急速にあげたのは確かである。
これまでの連載では主に恋愛パートの掘り下げをしていたが、さすがに今回は毛色を変えてミステリーパートにフォーカスして記事を進めていくことにする。とは言っても「あのシーンがこうでこうで……」と文字で説明するのは、あなたも私もお互い苦しい思いをすることだろう。
そこで今回は、ミステリードラマを5年以上考察し動画を投稿してきた私たち6969bだからこそできる、ミステリードラマ考察初心者に向けた“ミステリードラマ考察のノウハウ”をドラマ本編の考察も軽く交えながら紹介していきたいと思う。
いわば手の内を明かすのだ。
近いうちに私が失業したらこの記事のことを思い出し、偲んで欲しい。
ここを抑えればあなたも真犯人に辿り着く!?
そんなことは言いつつも、テレビドラマ考察は誰にでも出来る。
今まで失業せずにやってこれたのは、支えてくれる視聴者の皆様がいたからこそ。そして何より運良く色々な波に乗ることができたからだ。
私たちにドラマ考察に長けた特別な能力(そんな物はない)が備わっているわけでもなければ、某東大生ドラマ批評家のように多くの知識と学があるわけでもない。
私たちはただドラマを注意深く、そして楽しんで観ている。それだけなのである。
一つだけ私たちが生き残ってこれた要因をあげるとすれば、圧倒的茶の間感だろう。
画面を通じてではあるが同じ茶の間で、同じ目線でテレビを観ているような感覚と、ドラマの翌日には「昨日のドラマ観た?」と教室やオフィスでだべっている感覚を提供できている自負がある。そこが私たちの強みとして支持され、これまでやってこれたのではないかと思う。
(ドラマ考察を始めたきっかけや私たちが何者であるかを知りたい方は、連載の初回の記事を読んでいただきたい。)
少し話は逸れたが、この誰にでも気軽に楽しむことが出来るドラマの楽しみ方の一つ「ドラマ考察(犯人考察)」をどのように進めていけばよいのか。
私たちの普段行っている方法をいくつか紹介していこう。
知名度考察
身も蓋も無い。「長年のキャリアに泥を塗りたいのかお前は」と、メンバーからお叱りを受けそうだが、まず紹介したいのは 知名度考察。
一つ目にあげるべき項目ではないかもしれない。
考察という言葉が独り歩きし、“考察”という言葉の意味を今一度見つめ直す必要性が一部で取り沙汰されるこの時代。
あえて私は、考察とは名ばかりのこの考えを取り入れていきたい。
要は「知名度ある人が真犯人なんじゃね?」という考察である。
もう一度言おう、身も蓋も無い。どの俳優が知名度あって、どの俳優が知名度なくて……とかそういう失礼な話がしたいのではないというニュアンスはどうか伝わって欲しい。
しかし現実問題、やはり知名度のある俳優が真犯人を演じるケースは非常に多い。それはそうだろと言われればそれまでだが、それこそ一大考察ブームを巻き起こしたドラマ「あなたの番です」や「真犯人フラグ」でも知名度があり人気の俳優が真犯人を演じていた。
これは正直ドラマ考察を盛り下げる要素の一つでもあると思っている。
誰もがフラット(均一的)な知名度 および 駆け出しの無名な俳優たちしか出演しないミステリードラマがあったとすると……
知名度の点からは、真犯人を考察することは不可能となり、真犯人考察はさらに楽しいものとなるだろう。
そもそもメタ視点……“俳優の知名度”のように、物語とは関係のない情報をミステリードラマの犯人考察に加える自体がナンセンスかもしれないが、前述した通りこれは経験上無視できない部分なのだ。
だが、何よりドラマ考察(真犯人考察)はドラマを楽しむことが一番の目的なので、「こんな視点も持ち合わせている」くらいがちょうど良いとさえ思う。
肩肘張らずに。
この視点を「恋は闇」に落とし込んでみよう。
……まあ容疑者の多い事。
このドラマにおける真犯人をどう定義するか?については色々複雑ではあるが、ひとまずは“ホルスの目殺人事件”の実行犯という定義で進めていく。
今回初登場の謎の女:齋藤飛鳥氏もその一人として浮上するのは知名度の点から申し分ない。
そして英国の推理作家ロナルド=ノックスが主張した、推理小説を書く際に守るべき10項目“ノックスの十戒”の一つ
「犯人は物語のはじめに登場していなければならない」
にも齋藤飛鳥氏は当てはまるのだ。
(推理小説とあるが、“ノックスの十戒”がミステリードラマにも当てはまる前提として話を進める。)
第1話冒頭の浩暉が女性に注射するシーン。
今まで“ホルスの目殺人事件”の被害者女性が映し出されていると思っていたが、実はその姿は齋藤飛鳥氏だったのだ。これはかなりの驚きである。
それ以外にも浩暉の父親である謎の男:貫路(萩原聖人)含め、ほとんどの登場人物が第1話には出ている。なのでこのドラマにおいて知名度考察は難しいものではあるが、ポッと出の何者かが真犯人である可能性は殆どないということを認識していただけるといいだろう。
相関図考察
どうかこの記事を読むことを止めないで欲しい。
良い加減にして欲しいと思うかもしれないが、侮れないのが相関図考察。
これは真剣にドラマを考察する上で絶対に外せない一つである。
番組の公式HPには相関図というページが用意されている。
そこには、
・登場人物同士がどういった繋がりか。
・ドラマを観ただけでは知り得ない情報
・これからドラマの中で明かされる登場人物のプロフィール
などが記されている。意外とこの相関図を使った考察が面白いのだ。
「恋は闇」のHP相関図を見てみると、刑事:正聖(白洲迅)の隣にいる “飴ちゃん”でお馴染みの女性刑事、大和田夏代(猫背椿)のプロフィールには気になる情報が。
彼女に息子がいることはすでに劇中で明かされているが、シングルマザーであるという文言が記載されているのだ。
この情報を加味すると、実はテレビ局の野田(田中哲司)と元夫婦だったのでは? という可能性も浮上してくるだろう。
デリバリー配達員の夏八木唯月(望月歩)のプロフィールには、
“誰とでも仲良くなれる、コミュ力おばけ”との一文も。
劇中でもそのコミュ力を遺憾無く発揮している夏八木だが、被害者女性の自宅に玄関から侵入できたのもそのコミュ力のおかげでは?と考察することもできる。
このように劇中ですでに知り得た情報と、相関図に記載されているその人物の特徴を照らし合わせると見えてくる場面が本当に多くあるのだ。
相関図はその配置にも注目である。

万琴(岸井ゆきの)と浩暉がハートを真ん中に線で繋がれているように、その人物同士の関係を現す線が今後の回を重ねるごとに増えてくることが多い。
つまり、すでに隣り合っていたり上下の人物は、今後意外なつながりが判明する可能性も非常に大きいのだ。
“謎の女”と“謎の男”が上下に並んでいるのを見逃せないのは言うまでも無いだろう。私たちの動画で謎の女は“浩暉の妹説”を説いているのでぜひ観ていただきたい。
“理由が説明できない行動”こそ……
これまであげた2点のように“○○考察”と銘打てない事が歯がゆいが、「理由が説明できない行動」これこそ!が、ミステリー考察の基本である。
「それはそうだろう」という言葉があなたから聞こえてくるが、「この人物のこの動きはなんだろう?」という点に注目し、他の行動や言動と繋げるのだ。
今回の第5話でいうと、向葵が務める検査予約センターの椅子に帽子とメガネ姿の浩暉が座っていたシーン。
「ちょっと……取材で……」などと浩暉は言っていたが、熱心に考察をしていない視聴者でもそれをそのまま鵜呑みにした人はいないだろう。
しかしこの先を考えただろうか。なぜ浩暉は検査予約センターに変装して居座っていたのか? その目的はなんなのか?
そういった違和感を、他の事象と組み合わせて考えると、直接真犯人に辿り着かずともそのプロセスを辿る事ができるかもしれない。私たちが行っているのは日々この繰り返しだ。
違和感……行動の理由が説明できない一つ一つを繋げていき、断片でも新しい真実が見えてきた時にドラマ考察(真犯人考察)の面白さをあなたは実感することだろう。
それが合っている合っていないというのは、正直どちらでも良いのだ。何度も言うようだが、ドラマを楽しむことが第一の目的であることを忘れずに考察を楽しんでみてはいかがだろうか。
後半戦は恋に考察に大忙し
今回あげた考察のノウハウはほんの一部であるし、楽しみ方の一例に過ぎない。参考にしていただけたら嬉しいが、あなたなりのあなただけの楽しみ方や考え方でドラマを観ていただくことが何よりである。
今後、“ホルスの目殺人事件”に関する情報はより増えていくだろう。真犯人に辿り着くまでのスピード感も増していくことは間違いない。
そして恋愛面では相変わらず浩暉と万琴のイチャイチャを観ることになるし、当て馬の正聖は近くにいる向葵(森田望智)の良さに気づかない。
彼らの恋を見てむず痒くなったり、真犯人考察を誰かに話したくなった時は、ぜひあなたのお茶の間『6969bのエンタメLabo』に顔出しに来て、ゆっくりしていって欲しい。
著者:ケメ・ロジェ
ドラマイラスト:サク
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3人組ドラマ考察系YouTuber 6969b(ろくろっくび)による考察記事の連載がスタート!
今話題のドラマの真犯人は?黒幕は?このシーンの意味は?
物語を深堀りして、噛むようにじっくり味わっていきます。