
20代女性を中心に圧倒的な支持を集める妹尾ユウカさんの新連載がスタートしました!
連載タイトルは『マテリアルガールは休暇中』。お金や物質的な豊かさを追い求め、“理想の自分”や“社会的な成功”を手に入れることに価値を置いてきた“マテリアルガール”が、立ち止まり、そのレールの先にあるものを見つめ直す連載です。
鋭くも不思議と腑に落ちる妹尾さん言葉の数々を、どうぞお楽しみください。
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今年のGWはまったく遠出をしなかったせいで、最近の下世話な時事ネタに妙に詳しくなってしまった。
不倫、結婚詐欺、海外出稼ぎ。どれもNetflixで映画化を狙えそうな、大衆を躍らせる話題ばかりで、恥ずかしながら、わたくしもすっかり夢中になってしまった。
中でも興味をそそられたのは、ドバイのヤギのビジュアルと、人気女優が不倫に走った理由。
失うものもある綺麗な女は、なぜ既婚者なんか選んだのか。蚊帳の外の者からすれば、「もったいない」の一言に尽きる。
彼女もまた、「好きになった人がたまたま既婚者だった」がすべてなのだろうか。だとすれば、それは本当に“たまたま”だったのか。
性悪由来の既婚者フェチではなかったとしても、「既婚者だから惹かれた」という可能性を、完全に否定できるだろうか。
それに、既婚者に惹かれる女の多さは、もはや「たまたま」で済まされる範囲をとっくに超えている。ここまでくると、“既婚男性”というカテゴリーに何かしらの魅力があると考える方が、よほど自然だ。
一体、なにが女たちを惹きつけるのか。
東京で消耗しきれなかったGWの時間を使って、私はその正体に少しだけ迫ってみることにした。
まず第一に、既婚男性には「すでに選ばれた人」というバッジが付いている。これは、誰かの人生において一度は“一生を添い遂げたい男”としてのマルをもらった実績だ。当然、それがすべての価値を保証するわけではないが、現実問題、それだけで偏見の目はずいぶんと薄まる。既婚者というステータスは、ときに身元保証のようにも機能するのだ。
次に、彼らは「夫」や「父親」といった複数の役割を日々こなしている。まさにその生活にすり減らされた所作や、誰かに慣れて丸くなった態度が、ただの生活感ではなく、“落ち着き”や“余裕”を醸し出しているのではないだろうか。
もちろん実際には、不倫をする男という時点で、独身男性よりも軽薄さや不安定さが削ぎ落とされているわけではない。だが、そうした“悪い脂”のような部分は、家庭という網の下にすべて落ちているため、女の目にはあっさりして映るのかもしれない。
そして、余計な脂が落ちたことによる、こなれた物腰と絶妙な距離感。若くて未完成な独身男性を相手にするときのような“育てる工程”が不要で、最初から「できあがっている感」がある。
しかし彼らは、“できあがっている男”というわけではなく、妻や家庭のおかげで仕上がった、完成途中のただの男。わかりやすく言えば、ある程度のしつけが済んでいる犬なだけで、生まれつき賢い犬なわけではないということ。
だから、不倫をする女たちが"彼自身の魅力”だと思い込んでいるものの多くは、実は“既婚者であるがゆえの副産物”にすぎないと私は思う。妻の手入れによる清潔感であり、家庭があるからこその余裕である。
もしかしたら、彼から柔らかくていい匂いがするのも、あなたのお目に適う男をつくれる妻が選んだ柔軟剤のおかげかもしれない。
未婚女性と既婚男性の不倫。それは、完成品に見える男とその人生を、未完成な女が奪おうとすることなのかもしれない。
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マテリアルガールは休暇中

コラムニストとして20代女性を中心に圧倒的な支持を集める妹尾ユウカさん。『マテリアルガールは休暇中』は、お金や物質的な豊かさを追い求め、“理想の自分”や“社会的な成功”を手に入れることに価値を置いてきた“マテリアルガール”が、立ち止まり、そのレールの先にあるものを見つめ直す連載です。
「本当に欲しいものって、なんだったっけ?」
そんな問いに、時に笑いながら、時に真顔で向き合っていく毎日は、意外と悪くない。
鋭くも不思議と腑に落ちる妹尾ユウカの言葉の数々に、あなたもきっと頷かされるはずです。
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