『夢みるかかとにご飯つぶ』でエッセイストデビューした清繭子の、どちらかといえば〈ご飯つぶ〉寄りな日々。
「返信は週明けで」みんなの土日は私が守る!
それは会社員時代のこと。育児時短勤務だった私はメールの署名欄に9:00~16:00と勤務時間を入れていた。そのほうが、相手先から「なんで返事来ないんだろう」とやきもきされないかな、と思ってのことだったが、あるフリーランスの男性と仕事でトラブルになった時、「だいたい、あのメールにある勤務時間は何様なんだよ!」と電話越しに怒鳴られたのだ。
それまで男の人に怒鳴られたことがなく、恐怖で頭が真っ白だったのだが、その勤務時間うんぬんの一言だけは即座に言い返した。「時短勤務は私の正当な権利です。あなたにどうこう言われる筋合いはありません!」
どうも私の怒りポイントは、自分の時間をないがしろにされたときのようだ。
フリーランスになった今、よっぽどの急用以外は、土日のメールは返さないことにしている。公的な営業時間がアナウンスされないフリーランスでは、自分で歯止めをかけないと、ずるずるとオンオフの境い目がなくなってしまうから、というのも理由の一つだが、それだけじゃない。
私がメールを返すことによって、相手の人も土日に仕事のことを考えないといけなくなる。だから金曜の夜更けに来たメールをあえてスルーするとき、脳内では「みんなの土日は私が守る! こいつ即レスしないな、って思われてもいいから、みんな私が仕事を堰き止めてる間に休日を楽しんでっ!」ってヒーロー気分でいる。
という話を担当Kさんにしたら、「清さん、えらいですね~。たしかに、別に返事は週明けでいい件でも、こっちがボールを持った状態でいたくないあまりにメールすることありますもん」と褒めてくれた。
みんなで守ろう、みんなの時間!
夢みるかかとにご飯つぶ
好書好日連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」が話題の清繭子さん、初エッセイ『夢みるかかとにご飯つぶ』刊行記念の特設ページです。
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