あの橘玲さんも推薦する話題の新刊、『金融地獄を生き抜け 世界一簡単なお金リテラシーこれだけ』。この本の著者で元・金融庁官僚の我妻佳祐さんは、マネックスライフセトルメント株式会社代表取締役として「生命保険の買い取り」という聞き慣れないビジネスを手がけています。欧米ではすでに普及しているというこのサービスについて、ご本人にくわしくうかがいました。
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欧米ではすでに普及しているビジネス
──今年春、マネックスグループのマネックスライフセトルメント株式会社の代表取締役に就任されましたが、どのような会社なのでしょうか。
生命保険の解約を考えていらっしゃる方から、保険契約を買い取るというビジネスをしている会社です。
欧米ではすでに普及しているビジネスモデルで、米国のデータでは解約するよりも平均で5倍くらい高い金額で買い取られています。保険契約者さんにとっては、非常にありがたいサービスではないかと思っています。
当社の場合、今はがん患者さんに対してだけの限定的なサービスですが、軌道に乗れば、さまざまな保険契約を買い取ることができるようになっていくでしょう。日本にもこの保険の買い取りをしっかり普及させて、保険契約者さんが有利に財産を活用できるような環境をつくっていきたいと思っています。
──欧米にはあるのに、どうしてこれまで日本にはなかったのですか?
欧米ではそれこそ19世紀ぐらいから、アンダーグラウンドな商売の人が保険証券を安値で買い叩くようなことをやっていたようで、保険を売り買いすることにそれほど違和感がないと言われています。
一方、アジア圏にはそういった感覚がないと言われており、「契約を売るってどういうことなの?」と、直感的に理解されにくいところがあるようです。
──がんの生命保険を解約しようと考えるのは、どういった方なのでしょうか。
人によってさまざまですが、がんにかかると仕事ができなくなったり、セーブせざるをえなくなったりして、経済面で困っている方が少なからずいらっしゃいます。そこで生命保険を解約して、治療費や生活費にあてようと考える方が多いのかなと思います。
あくまでこれは、生命保険を解約しようとしている方に対するサービスなんです。たとえば車を手放すときと一緒で、ふつうはただ廃車にすることはしませんよね。中古屋さんへ査定に出してみて、これくらいの値段で売れるんだったら売ろうという発想になると思います。
保険の買い取りも一緒です。保険をやめようとするときにただ解約するのではなく、一度査定に出してみようという発想なんです。
ですから、保険の買い取りによって保険契約者さんが損をすることはありません。当社が査定した金額よりも解約返戻金のほうが高かったら、当社には売らずに解約すればいいだけですから。その意味でも、保険契約者さんにとってはいいサービスではないかと思っています。
「日本初」の生命保険商品を開発中
──我妻さんの生命保険に対するその使命感は、どこから来るのでしょうか?
大学院のときの先生の影響がきわめて大きいですね。おそらくみなさんも思われているように、生命保険なんかに研究するところがあるのかと、私も最初は疑問を持っていました。でも、研究すればするほどひどい業界だということがわかってきたんです。
そして、このことに気づいているのは、日本中を探しても私くらいしかいないかもしれないと思ったときに、これを何とかするのが私の天命なのかなと思ったんです。
たとえば生命保険業界では、「これってちょっと法令違反なんじゃないの?」という商品が何となくスルーされて流通している状況がある。もう少し、適正化していく必要があるのではないかと考えています。
しかも、生命保険は9割方の世帯が加入している商品ですから、生命保険業界を適正化していくことは、そのまま国民生活の改善にもつながります。
正直、保険行政は金融庁内では人気がないのですが、私としては非常にやりがいがあると思って、金融庁でも保険をやりたいと言ってきました。これからも何らかの形で保険にかかわって、よりよい保険の適用のために努力していきたいと思っているところです。
──我妻さんから何かお知らせすることはありますか。
このインタビューが出るころにリリースされているかわからないのですが、今、いろんな意味で斬新な、日本初といえる生命保険商品を開発しています。「正しい生命保険とはどういうものなのだろう?」というコンセプトで開発をしていて、リリースされたら世の中の生命保険会社が歯ぎしりして悔しがるのではないかと思っています。
もしこれが売れないと、「役人上がりの評論家がつくる商品なんて、しょせん机上の空論でしかないよね」と業界からバカにされてしまいますので(笑)、これを読まれた方はぜひチェックしていただいて、よろしければ新規契約、もしくは既存の契約からの乗り換えを検討してもらえると嬉しいです。
──最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
このインタビューを読んでいらっしゃる方は、必ずしも金融にくわしいわけではないでしょう。ぜひ、この本で金融教育のエッセンスを覚えてもらえたらと思います。
どうしてそういうことが言えるのか、ということもくわしく書いていますので、知的好奇心が刺激される、面白い本になっていると思います。数式などは一切出てきません。中学生くらいから十分読めると思いますので、ぜひ手にとっていただけると嬉しいです。
※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【後編】我妻佳祐と語る『「金融地獄を生き抜け」から学ぶ投資との関わり方の基本』〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。
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この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。
番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』
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