『夢みるかかとにご飯つぶ』でエッセイストデビューした清繭子の、どちらかといえば〈ご飯つぶ〉寄りな日々。
時々会いたくなる家族
39度の熱が出て、子どもたちにはレンチンのエビグラタンと納豆とヨーグルトというありあわせにもほどがあるご飯を出し、自分は一階の寝室でマスクをして伏せっていた。
下の子が階段をどんぐりが転がるように駆け下りて来て、「もうおなかいっぱいだから、さきによーぐるとたべていーい?」と聞きに来た。
どのくらい食べたの? と聞くと、「ぐらたんをたべたよ、なっとうたべないの。くちがべたべたになるから」と言う。
じゃあいいよ。もう今日は栄養とかどうでもいいや。
しばらくすると、またどんぐりの音がして、下の子が駆け込んでくる。一応自主隔離のつもりなんだけどな……。
「もっとおやつたべたいきぶんなの。たべていーい?」
グラタンは全部食べたんだよね?
「たべてない。ちょっとのこってる」
全部食べなきゃダメ。
「はぁーい」
しばらくすると、またどんぐりがやってきて、
「たべたよ。おやつなにがある?」
いつもの引き出しにグミがあるよ。
「グミあるって~!」
その後2人でキャッキャ言い合っている声が上から聞こえてきた。
上の子は全然降りてこないんだなあ、もう小学生だもんなあ。
と、ちょっと寂しく思っていたら、
どどどどっと大太鼓と小太鼓が転がり落ちる音がして、二人してやってきて布団の上で相撲を取りだしたので、前言撤回。ガラガラ声で叱って追い出した。
同じ家の中でも時々会いたくなるのが家族だな。時々でいいけどさ。
夢みるかかとにご飯つぶ
好書好日連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」が話題の清繭子さん、初エッセイ『夢みるかかとにご飯つぶ』刊行記念の特設ページです。
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