インフレ、円安、国際競争力の低下……。『投資のプロが明かす 私が50歳なら、こう増やす!』の著者で、SBIグローバルアセットマネジメント社長の朝倉智也さんは、日本が置かれている状況を考えると、資産運用は「やらないと損」というより「やらなくてはいけない状況」だと警鐘を鳴らします。「新NISA」がスタートする今、私たちが知っておくべきこと、やるべきことを教えていただきました。
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もっと「人間学」をしっかり学びたい
── 朝倉さんは、ふだんどんな本を読まれているのですか?
今までは経済の本や、自分の仕事に直接関わる内容の本が多かったですね。でも、私も年を重ねてきて、もっと「人間学」をしっかり学ばないといけないと思うようになりました。
私たちのグループのトップをつとめる北尾吉孝が、まさに「人間学」に通じた人物なんです。日頃のミーティングでも、『論語』といった中国古典の話がたびたび出てきます。わからないと少し恥ずかしいので、あとから自分で調べたりすることもありますね。
ですから最近は、私も中国古典を読んだり、日本人では安岡正篤さん、森信三さんといった人たちの本を読んだりしています。
── 経済のジャンルは海外のものが多いので、翻訳本をよく読まれるのかと想像していました。
海外のものについては、『ウォール・ストリート・ジャーナル』とか、『ブルームバーグ』とか、『ロイター』とか、そういったメディアに目を通すことが多いですね。もちろん日本語版もありますが、どうしてもワンテンポ遅くなるし、翻訳されない記事も多いので、原文で読むようにしています。
もちろん、端から端まですべて読むことはできません。ざっと目を通して、気になるコンテンツはしっかりと読むという感じですね。
情報収集という意味では、実際に会って話をすることも大切にしています。そうでないと見えてこないこともたくさんあるからです。
たとえば、米国の景気の動向にしても、東海岸の人と西海岸の人とでは、言うことが違うんです。東海岸のニューヨークの人は、みんな口をそろえて景気はすごくいいと言います。でも、西海岸のロサンゼルスとかサンフランシスコの人は、景気がすごく厳しいと言うんです。
今、サンフランシスコの真ん中にあるユニオンスクエアのまわりなどは、ほとんどのラグジュアリーショップがクローズして、商業用不動産が大きく値下がりしているそうです。
── つまり、金融業界は調子がよくて、テック系がまずいということがわかるわけですね。
そういうことですね。あと先日、ヨーロッパから来た方がおっしゃっていたのは、10年くらい前まではパナソニックとか、ソニーとか、日立とか、日本のメーカーの商品がたくさんあったのに、今ではほとんど見なくなったということでした。
自動車もせいぜいトヨタがあるくらい。日産やホンダはほとんど見かけないそうです。それだけ日本の競争力は落ちているということです。
今回の本にも書きましたが、インフレや円安もしばらく続いていくでしょう。日本が今、危機的な状況にあるということをよく考えて、積極的に行動していく必要があると思います。
お金も知識も時間もなくていい
── この本は、投資初心者にもわかりやすく書かれているので、ぜひ多くの人に読んでもらいたいですね。
まだまだ日本人は、資産運用をする人が多くありません。でも、日本人はキャッチアップするのが得意ですから、少し背中を押してあげれば変わっていくと思うんです。高邁な理念ですが、自分はそのお手伝いができればと思っています。
一人でも多くの人に、最適な資産運用、資産形成ができるようになってもらいたい。そういう社会貢献をしたいなと思いますね。
── 制度改革や手数料の引き下げなど、ここまで有利な環境になったのですから、やらないと損だと思うんです。
昨今のインフレを見ていると、やらないと損というより「やらなくてはいけない状況」になってしまいましたね。お金を無理に増やそうと考える必要はありません。でも、モノやサービスの値段が上がったり、円の価値が下がったりすれば、黙っていても資産価値は下がっていくんです。
ですから、考え方を少し変えて、自分のお金を守る、資産を減らさないという心がまえで資産運用を勉強していくことが大事だと思います。
── 最後に、読者のみなさんへメッセージをお願いします。
この本をきっかけに、ぜひ一歩踏み出していただきたいなと思います。お金がないから、知識がないから、時間がないからといって、一歩踏み出せない方もいらっしゃいます。でも、お金は1万円からでも始められますし、知識はこの本を読んでもらえれば十分身につくと思います。
時間は逆に、ないほうがいいんです。時間があると、ここで買ったほうがいいとか、売ったほうがいいとか、よけいなことを考えてしまいますから。忙しくて考える時間がないくらいのほうが、実はいいんです。
私がよく申し上げるのは、資産運用を「主」として考えるのではなく、あくまで「従」として考えてもらいたいということです。みなさんはデイトレーダーではありませんし、それぞれのキャリアをディベロップメントされているわけですから。
「主」は仕事であり、生活であるべきです。資産運用のせいで、毎日を一喜一憂して過ごすことのないようにしてもらいたいですね。資産運用はあくまで手段ですから、肩肘張らずに取り組んでもらえればと思います。
※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【後編】朝倉智也と語る「『投資のプロが明かす 私が50歳なら、こう増やす!』から学ぶ投資と日本の現状」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。
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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書
AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。
『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。
幻冬舎新書新刊の著者をゲストにお招きし、内容をダイジェストでご紹介するとともに、とっておきの執筆秘話や、著者の勉強法・読書法などについてお話しいただきます。
この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。
番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』
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