このたび2周年を迎えた、Amazonオーディブル『武器になる教養30min. by 幻冬舎新書』。「変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な『教養』を30分で身につけられる」をコンセプトに、幻冬舎新書の著者のみなさんからさまざまなお話をうかがってきました。
記念すべき今回は、特別企画として人文ライターの斎藤哲也さんをお招きし、「新書・人文書の楽しみ方」についてうかがいました。斎藤さんの選ぶ、オススメ新書3冊とは……?
* * *
「新書」ってそもそもどんな本?
── そもそも新書とは、どういった本なのでしょうか。
まず、サイズ的な区分があると思います。縦17センチ、横11センチくらいで、文庫本より縦長のサイズの本が、一般的に新書と呼ばれています。
日本で最初の新書は、1938年に岩波書店が創刊した岩波新書でした。かつての新書は、その時代の知識人や言論人が書き下ろしでコンパクトな教養を届ける、入門書的なものが多かったように思います。最近はもう少し、雑誌色が強くなった気がしますね。
── 私が大学生のころは、岩波新書、中公新書、講談社現代新書が「新書御三家」と呼ばれていました。
僕の時代も、「御三家」が中心でした。それと、カッパ・ブックスを始めとしたいわゆる「ブックス」ですね。多湖輝さんの『頭の体操』(カッパ・ブックス)とか、五島勉さんの『ノストラダムスの大予言』(ノン・ブック)とか。僕らの世代にとっては新書のひとつです。
各社がいっせいに新書を出し始めたのは、90年代後半から2000年代前半にかけてのころでした。94年にちくま新書、96年にPHP新書、06年に幻冬舎新書が創刊されました。
── レーベルが増えるにつれ、ジャンルも広がっていきました。中でも転換点になったのは、新潮新書の創刊ラインナップの一冊として03年に刊行された、養老孟司さんの『バカの壁』だと思います。
『バカの壁』は養老さんご自身が書いたものではなく、編集者の方が聞き書きの形でうまくまとめたものなんですよね。それが大ヒットした。本のつくり方が変わったという意味でも、転換点になっていると思います。
── 新書ビギナーに向けて、斎藤さん流の新書の楽しみ方を教えていただけますか。
まずは、書店の新書コーナーに行ってみるといいと思います。学問的な入門書もあれば、ビジネス書的なものもある。ハウツーもあるし、最近のニュース解説的なものもある。買わなくても、毎月の新刊を眺めているだけで、今の世の中の流れだったり、論点だったりがなんとなく見えてくると思います。
今や新書は、「なんでも入る器」になっています。その中から自分のアンテナに引っかかった本を手にとって、読んでみるといいのではないでしょうか。
書店の中でも、新書のようなコーナーって珍しいですよね。とくに大型書店では分野ごとに棚がつくられてしまうので、あんなにオールジャンルの本がひとつの空間に並んでいる光景は他にないと思います。
そういう意味では、偶然の出会いも多くありそうなコーナーだと思います。和田秀樹さんの『80歳の壁』(幻冬舎新書)を買いにきた人が、隣にたまたま世界史の本が並んでいるのを見て、面白そうだと一緒に買うこともあるでしょう。新書コーナーには、そういう面白さがあると思います。
私がオススメする「3冊の新書」
── ここで、斎藤さんがオススメする新書を3冊紹介していただこうと思います。
1冊目は、御子柴善之さんの『自分で考える勇気 カント哲学入門』(岩波ジュニア新書)です。
岩波ジュニア新書は、基本的には中高生を対象としたレーベルですが、哲学の中でもとりわけ難しいとされるカントを、頑張れば中高生でも読める水準で解説している。しかも、イヤなわかりやすさではなく、歯ごたえのあるわかりやすさなんです。
これは研究者でないと書けない本だし、一般の読者に伝える力も大変なものだと思い、選びました。
── 岩波ジュニア新書って、大人が勉強し直すのにいい本がたくさんありますよね。
2冊目は、赤瀬川原平さんの『赤瀬川原平の名画読本』(カッパ・ブックス)。のちに知恵の森文庫に収録されました。現在はどちらも絶版のようですが、中古で手に入ります。
僕は美術方面があまり得意ではないんですが、この本はすごく面白くて。たとえば、名画だと言われているから、「これは素晴らしい絵だ」と思ってしまう傾向ってありますよね。この本では、「自分の目でちゃんと見なさい」ということを説いています。
そのためには、ポイントが2つあるというんです。1つは、「早足で絵を見ること」。解説などは読まないで、次から次へと見ていく。その中で、「これはいい」と思ったものがあったら足を止めてじっくりと見る。自分の直感を信じることが大切なんですね。
もう1つは、「自分がお金を出して買うつもりで見ること」。自分の部屋にどの絵を飾りたいか、お金を出す価値はあるのか。そうやって見ると、見方が変わるというんです。文章も非常にフレンドリーだし、おすすめの一冊です。
── 3冊目はどんな本ですか?
岡本亮輔さんの『宗教と日本人 葬式仏教からスピリチュアル文化まで』(中公新書)です。日本人の多くは、深い信仰を持っているわけではないけれど、正月には初詣に行ったり、お葬式は仏教で挙げたりしますよね。決して宗教とは無縁ではないわけです。
こうした日本人の宗教観を考えるにあたって、僕がいちばん納得した議論を展開しているのがこの本です。新しいものの見方を獲得できるという点で、自分にとって身近な問題として考えられるし、新書の面白さが凝縮されている本だと思いました。
※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【前編】「斎藤哲也と語る『新書・人文書の楽しみ方』」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。
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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書
AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。
『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。
幻冬舎新書新刊の著者をゲストにお招きし、内容をダイジェストでご紹介するとともに、とっておきの執筆秘話や、著者の勉強法・読書法などについてお話しいただきます。
この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。
番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』
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