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あぁ、だから一人はいやなんだ。

2023.11.15 公開 ツイート

第212回 体調不良 いとうあさこ

久しぶりに体調を崩した。本当に久しぶり。いつだったか知人から「C1000を毎日飲んだら風邪ひかない」と聞きまして。ちなみにこの“C1000”、正式名称は“ビタミンレモン”。私はこれをほぼ毎日1本飲むようになってかれこれ10年近く経ちますが、本当に風邪知らず。そりゃあ「ダルいなぁ」レベルだったらほぼ毎日、と言っても過言ではないほど“お疲れボディ”ではありますが。過去に「ちょっと風邪っぽいな」くらい

 

はありましたが、その時はスーパーで「豚肉」「ニラ」を買って味噌鍋を作る。それ食べて一晩寝たら、翌日には元気になっておりました。それがとうとうちゃんと熱も出て、鼻も止まらず、顔をしかめるほどしんどくなってしまった。そんな状態の時ってやっぱり変なこと、いろいろあります。

“寒いのか暑いのかわからない”事件。熱もあるのでかなりの厚着で寝ようとしたんです。でもなんか暑い感じがして、夏の“冷感”の薄がけ布団にくるまってみた。一瞬「快適!」と思ったのですがそのすぐ後で「寒い」と。フラフラ起き上がって今度は羽毛布団を出すことに。こういう時に限って、ですよね。夏前にクリーニングに出して戻ってきた状態のまんま。袋に入って、更に紐でグルグル巻きになっていた。袋からなんとか布団を引きずり出して、その中に潜りこんだ。これまた「快適!」と思ったのもつかの間。またすぐに「暑い。」結局その日は寒いんだか暑いんだか自分でもわからず、“ヒンヤリ薄がけ”と“あったか羽毛布団”をグチャグチャに絡ませて身体にかけ、部分的に冷やし部分的に温める、という謎の状態に。ほとんど眠れず一晩を過ごした。

あと“トイレから変なニオイが”事件。うちのマンション、時々洗濯機やお風呂の排水溝から下水っぽい、イヤなニオイがすることがありまして。それが今回初めて、トイレに入った時にそのニオイがした。クンクンしてみると、どうやらトイレ内の洗面台の中から。ならばあの排水溝のお掃除用の液体洗剤を流し込めばOK! なのでしょうが、実は問題が。以前水回りの点検があった後、トイレの洗面台の水が出なくなった。調べたらよくあることらしく、係の方が点検の為に元栓をしめて、そのまま開けるのを忘れて帰っちゃうパターン。まあ元々手は洗面所で洗っていたので「ま、いっか」と放っておいたのです。今回フラフラな身体で何年かぶりに洗面台の下の扉を開け、おそらく“弁”と思われる部分をマイナスドライバーでまわそうとしてみるけれど、力も入らないからかビクともしない。格闘すること15分。私は気づきました。「これ、水は出ないけど別にパイプが詰まっているわけじゃないから、何かしらで水流せればいいんじゃない?」ここからは早かった。まずパイプの中に消臭の液剤を投入して放置。奥にしまってまったく出番のなかったバケツを引っ張り出し、熱めのお湯をはる。一人で台所とトイレを何往復もしながら、どんどんお湯を流してみる。まるでパイプが「久しぶりに水を流してくれたね。気持ちいいよ。ありがとう」と言っているかのようにゴゴゴゴゴと音を立てる。10往復したところで洗面台のニオイを嗅いでみた。パイプからはもう洗剤のニオイしかしない。成功だ。ただ……さっきのイヤなニオイが今度は右側からしてくるぞ。そこにはルームフレグランスの瓶。恐る恐るそのニオイを嗅いでみる。犯人、発見。いやいやいやいや。ちょっと待って。この香りは“シトラス”。大好きなさわやかな香りよ。それが“あの”ニオイなんて。そこで私は気づきました。変なニオイがしているのではない。私の鼻が、変なのだ。風邪で鼻がおかしくなって、変なニオイに感じちゃっただけなのだ。バケツをしまって、私はまたベッドで横になった。

ラストは“フン”事件。ある日仕事が終わって、局の駐車場へ。車に乗り込む時、なんか違和感を覚えて一度車を降りた。するとボンネットのところに直径10センチ以上にもなる大きな鳥のフンが。え? いつ? 駐車場は地下。じゃあ移動中? だとしてもさっき車降りる時に気づくでしょう? その日、移動がバタバタしてたから気づかなかったのかな? 帰りながらこういう場合はどうするのか、調べてみた。一番最初に出てきたのは“絶対に放置しないように”。フンの成分で塗料が変色してしまう事があるらしい。しかも“慌ててゴシゴシ拭くのが一番NG”と。フンの中に小石などが含まれている事が多く、ゴシゴシすると車体に傷をつけてしまう、と。“ウェットティッシュなどで5分以上ふやかしてからそっと拭き取る”が正解とのこと。ヤバい。道中、そんな5分も停めて作業する場所はなく、家に帰るしかない。ただ夕方で道は渋滞中。お願い、進んで。私のボンネットにまーるいシミが出来ちゃう。そんな想像で変な汗かきながら、なんとか自宅到着。すぐさま車を停めカバンをあさると前日に新幹線でもらったおしぼり発見。これだ。おしぼりを開けながら車から外へ飛び出す。外はめちゃくちゃ風が強い日。でも負けない。風邪っぴきあさこ、おしぼりが吹き飛ばされないよう、強風にあおられながらおしぼりをフンの上で押さえる。通りすがりの人はそんな私を見ないようにしてくれた。5分後、フンはキレイに落ち、心配していた変色もなし。一見落着。……と思っていたら、続きが。その翌日にスタイリストのマリちゃんにこの話をすると「そのフン、1週間以上前からありましたよ。」え? そんなバカな。あんな大きなフンがついてたら、さすがに気づくって。しかもすぐ拭き取りで取れたってことは固まってなかったって事だよね? 変色もしてなかったよ? でもマリちゃん。「先週、あさこさんの車に衣装入れに行った時、『あ、フンだ』って。あさこさんこういうの、すぐお掃除しそうなのに、って思ってました。」そこまで思ったなら間違いない。ま、体調悪かったから仕方ないか。ん? 違う。もし1週間前なら、風邪、ひいてない。元気な時だ。そっか、もう風邪関係なく、各所弱ってるんだ。ああ、そっか。

病院でいただいた薬を飲んで、今はすっかり元気です。何はともあれ元気が一番。今日もまたC1000飲んで頑張ります。

 

【本日の乾杯】あん肝です。冬です。でも日本酒はロックです。最高です。

関連書籍

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。3』

海への恐怖を感じた、初めての遠泳。4人で襷を繋いだ「24時間駅伝」。お見合い旅inマカオ。“初”キスシーンに、“初”サウナ。ドラクエウォークで初めての高尾山。接続できずに大騒ぎのリモート飲み会。拍子抜けだった大腸検査。ブームに乗って、のんびり「おばキャン」、のつもりが……。いくつになってもあさこの毎日は初めてだらけ。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。2』

セブ旅行で買った、ワガママボディにぴったりのビキニ。いとこ12人が数十年(?)ぶりに全員集合して飲み倒した「いとこ会」。47歳、6年ぶりの引っ越しの、譲れない条件。気づいたら号泣していた「ボヘミアン・ラプソディ」の“胸アツ応援上映”。人間ドックの検査結果の◯◯という一言。ただただ一生懸命生きる“あちこち衰えあさこ”の毎日。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

ぎっくり腰で一人倒れていた寒くて痛い夜。いつの間にか母と同じ飲み方をしてる「日本酒ロック」。緊張の海外ロケでの一人トランジット。22歳から10年住んだアパートの大家さんを訪問。20年ぶりに新調した喪服で出席したお葬式。正直者で、我が強くて、気が弱い。そんなあさこの“寂しい”だか“楽しい”だかよくわからないけど、一生懸命な毎日。

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