今日の#不幸短歌 は、やせ我慢の歌。
* * *
【盗まれる確率低くするためにボロい自転車に乗ってるんです】
あれは僕が高校生の頃。
自転車通学だった僕は、その日も友だち何人かと自転車で下校していました。
信号待ちのとき、1人の友だちが僕に聞いてきます。
「岡本、いつまでその自転車乗るの?」
僕は当時、なかなか年季の入った自転車に乗っていました。
ところどころ錆びているところもあり、友だちの自転車と比べても明らかに古いのは自分でもわかっていました。
ただ、僕の家は裕福ではなく、「自転車を買って」と言える雰囲気ではありません。
今思えば、自分でバイトでもして買えばいいのですが、当時の僕にその発想はなく、仕方なく年季の入った自転車に乗っていました。
しかし、そのことをそのまま友だちに伝えるのは恥ずかしくて言えませんでした。
僕はとっさに「ボロイほうがさ、盗まれにくいじゃん」。そう答えていました。
「ボロかったらさ、盗む人もこれやめとこうって思うじゃん。だから」
僕の答えに、納得したのかしていないのか。そもそもそこまで興味がなかったのか。友だちは「へー」と言い、青信号に変わった交差点を渡っていきます。
僕もボロい自転車でそれを追いかけました。
* * *
この連載の書籍化第2弾『センチメンタルに効くクスリ トホホは短歌で成仏させるの』発売中!
僕の不幸を短歌にしてみました(エッセイつき)の記事をもっと読む
僕の不幸を短歌にしてみました(エッセイつき)
著者は、主に”不幸短歌”を詠む「日本にただ1人(たぶん)の歌人芸人」。
よく失敗する、言いたいことが言えない、反論したくても返せない、なぜ自分だけこんな目に合うのかといつも思う、自分には劇的なことが起こってくれないと嘆いて生きている……。
そんな著者から見える”世界”を、フリースタイルな短歌(&ときどきエッセイ)にしてお届け。
もしあなたが自分のことを「不幸だ」と思っているなら、「もっと不幸な男」がここにいると思ってください。
- バックナンバー
-
- 岡本さんが、お墓参りに集中できなかった理...
- 俵万智さんから帯のコメントを、加藤千恵さ...
- 「どれもささやかに情けなくて、ささやかに...
- ライブ前の楽屋から聞こえてきた、不穏な声...
- ずっと「楽しいね」と言ってる目の前の女性...
- 方向音痴だと言う女の子が「マップ見ないで...
- 抗議デモに並ぶ年配女性2人が、ひそひそ何...
- 神社の参拝にて…神様に願いを届ける力が、...
- 「芸人でしょ?おもしろいことやって」と言...
- 後輩芸人の活躍が眩しすぎて…僕がやった小...
- 大喜利!?「二階から目薬」より、もっとピ...
- 裁判員裁判の傍聴に行ったのに、全く裁判の...
- ラジオ局のブースで、僕の心に起きた謎…
- 今回はトホホではありません。カワイイ恋の...
- 舞台よりも見て欲しい!?舞台裏のピン芸人...
- 波平さんに、双子の兄がいるのを知ってます...
- 髭剃りが無いけど、急いで髭を剃らないとい...
- おじさん2人が仲良しの風景に、ちょっとト...
- 高速バスの長時間ラクな座り方、あなたは、...
- スマホにメモしたネタは、いつか全部、成仏...
- もっと見る