
みなさん、こんにちは。積水ハウス住生活研究をはじめとする住まいの専門家 河﨑由美子です。今年の夏は、日中の外出をためらうほどの異常な暑さが続きましたね。近年の気候変動により、異常気象や自然災害が増加しているように感じています。「備えあれば憂いなし」というように、もしもの時に身を守る準備や日常の意識をもっと高めたいところ。
さて、9月は防災月間です。今年は関東大震災から100年という節目でもあります。この防災月間をきっかけに、自然災害への防災意識や対策を見直してみませんか。今回は、災害時に自宅の倒壊や浸水などの危険性がない場合にそのまま自宅で生活を送る「在宅避難」についても掘り下げていきます。もしもの時もなるべく普段に近い暮らしを過ごすために、必要なことをご紹介していきます。
最も不安な自然災害は地震。自宅で十分な対策ができているのは1割ほど。
全国の20~60代既婚男女を対象に防災に関する調査を実施したところ、自然災害の中で最も不安という回答が多かったのが地震で、約9割でした。全世界で起きるM6以上の地震の約2割*が日本列島付近で起こっているように、大きな地震を多くの人が経験しているからこそ不安も大きいのでしょう。また暴風(台風)や大雨・洪水も、それぞれ半数近くが回答しており、近年の異常気象に対する不安が高まっていることも読み取れます。
データ参照元:気象庁より
次に、不安を感じている人が一番多かった地震について日用品・食料や飲料の備蓄、安全の確保、ライフライン・通信障害等の対策が自宅で十分に行えているかを聞いたところ、「そう思う」と回答した人はどの項目も1割未満の結果に。「ややそう思う」と回答した人を含めても3割程度でした。地震への不安を感じながらも、日常の暮らしの中で、ついつい防災対策が後回しになってしまう、もしくは防災対策の方法がわからず手付かずといった理由もあるのではないでしょうか。
8割以上が在宅避難を希望。災害時もわが家で安心して過ごすために必要なことは?
“在宅避難”という言葉をご存知ですか。災害時において自宅の倒壊や浸水などの危険性がない場合に、そのまま自宅で生活を送ることです。コロナ禍で集団での避難所生活への抵抗感が高まり、“在宅避難” が選択肢のひとつとして考えられるようになりました。災害時に “在宅避難”を選びたい人は84.4%で、その理由は「プライバシーが保たれる」が最も多く6割近くでした。近年では住民の声を避難所の開所・運営に取り入れる自治体が増えてきており、プライバシー保護の工夫がされているようですが、それでもやはり自宅が一番安心して過ごせますよね。
その他、“在宅避難”を選ぶ理由として、「自分の家が快適」、「普段と同じ暮らしがしたい」「家族と過ごしたい」と続き、災害時の不安なときこそ、なるべく家族と一緒に普段に近い形で生活したいことが分かります。
また安心して“在宅避難”をするために必要だと思うことは、上位が備蓄関連(飲料水・食料品・日用品)で、そのあとインフラ関連(懐中電灯・生活用水・通信)が続きました。
一方で同様の項目で実施したことを尋ねると大きくポイントが下がる項目があります。特に通信の確保、生活用水の確保、耐震性の高い住宅は差が大きくなりました。
災害に備える暮らしとは? “もしも”を想定して、いつもの暮らしを見直そう
多くの人が地震をはじめとした自然災害への不安を感じている一方で、自宅での対策が十分と感じていない現状が分かりました。普段から防災意識を高く持ち続けることは難しいかもしれません。でも、地震はいつ起こるかわかりません。もしもの時に安心して“在宅避難”ができる準備を始めてみませんか。
最近では防災グッズや非常用備蓄品なども販売されているので、一般的にも防災意識は定着しているともいえるでしょう。ご自宅の対策は万全ですか。
万が一のときに備えて、次の項目を確認してみましょう。
わが家の安全確認
在宅避難において最も重要なのは、自宅が安全であること。まずは、自分が暮らす場所のハザードマップを確認しましょう。土砂崩れや津波、洪水の可能性がどれくらいあるのかを把握しておくことも大切です。また、住まいの耐震性や構造を把握し、築年数が経過している場合は修繕履歴などをチェックしておきましょう。集合住宅の場合は、非常口や避難ルートなど、共用の備蓄倉庫や防災機能についてもおさえておくと安心ですね。
災害時の行動で、自分の身の守り方や地震の揺れが収まった後の行動などについて確認しておきましょう。
家の中の安全確認
家の中について、地震の際に、物の落下や家具の転倒によるケガや事故を防ぐ観点で確認しましょう。家の中を整理して転倒物や落下物を少なくすることが大切。不要な物を減らすことも立派な地震対策になります。他にも手軽にできることは、家具やテレビなどの家電を固定することや、食器などの収納扉には耐震ラッチを取り付けること。倒れにくい背の低い家具を選んだり、倒れてきたときもぶつかったり脱出動線を塞いだりしない配置にしましょう。防火仕様のカーテンやガラス不使用の壊れにくい鏡といったアイテムもあるので、取り入れてみてもいいですね。
また、これから住まいづくりをする人は、造り付けのタイプの収納タンスや本棚などを設け、置き家具の少ないすっきりした空間を検討してみてはいかがでしょう。


備蓄品の内容と保管場所の確認
期限切れの食品や薬がないかを確認し、直射日光や高温多湿を避けて保管しましょう。非常食の備えについては、普段から多めに保存用の加工食品を購入しておき、使ったら使った分だけ補充していくローリングストックを取り入れるのも良いですね。
ガスや水道がストップした時のためにも、カセットコンロや飲料水の買い置きなど、非常用備品を備えておくことも大切です。生活用水の備蓄には、雨水タンクがおすすめ。災害時にはお手洗いなどで大量の水が必要になるので、しっかりと水を蓄えて置けると安心です。普段は庭木の水やりなどにも利用ができますよ。
ペットのためにも備えを
大きな地震が発生したら、危険な目にあるのは人間ばかりではありません。家族の一員として暮らすペットたちも同じように危険に遭遇することになります。もしもの時のために家族と同様に、ペットのための備えも考えておきたいもの ですね。食べなれたペットフードや使い慣れたトイレシート、専用のタオル類などを備えておくほか、リードや首輪、飼い主登録の艦札や予防接種の証明書なども用意しておけるとよいでしょう。
防災について考えるとき、自然災害への不安を漠然と捉えるのではなく、「もし、3日間断水したら、どうしたら在宅避難ができるのか」と具体的なケースに落とし込んで手段を考えてみてはいかがでしょうか。キャンプグッズのバーナーやランタンのように、自宅にある日常使いや趣味のアイテムの中にも、防災時に役立つものがあるかもしれません。もしもの時も、いつもの暮らしが続けられるように、ぜひ防災月間を機にご自宅の防災対策を見直してみましょう。
数字から考える幸せわが家

幸せのかたちは、家族やライフスタイルの多様な変化に合わせて変わっていくもの。ほんの少しの知恵や工夫で、わが家がもっと好きになる。積水ハウスの住生活研究所から“住めば住むほど幸せ住まい”研究に基づく、暮らしのヒントやエッセンスをご紹介していきます。研究データや意識調査、リアルな実例をもとに「ちょっとやってみようかな」と思ってもらえるコラムを更新しています。